田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-05-11 14:10:31 | Weblog
5月11日 日曜日
吸血鬼/浜辺の少女 35 (小説)
「われらが鹿沼を守るんだ。吸血鬼に対抗できるのは死可沼流の剣士のみだ」
じぶんたちの土地はじぶんたちで守る。
古代からひきつがれた古流剣法の教えだ。剣士たちの使命だ。
愛する郷土を守る。加藤の顔が矢を射るたびに大人びてくる。戦いの中で精神的にも成長している。そんな仲間を福田が見ている。荒川が見ている。
雷鳴がとどろく。稲妻が光る。コウモリの群れがいっせいに道場めがけて降下してくる。
「先生。討つって出ますか」と久野。
「いや、闇の中にでては相手に有利になるだけだ」
「道場で迎撃します」
「どうした。おそってきませんよ」と福田が柔道着の襟を両手でぴんと引き締めながら久野に聞く。
「いやもう来てる」
幻無斎がわかい中学生の三人組をやさしい顔で見ながらいう。
「やっと現れた!!  待っていたぞ」
血気にはやる荒川がふいに扉を開けて入ってきた鬼島に斬りつける。
とても中学生の太刀筋ではない。それも、初めての真剣だ。ビュという太刀の風を切る音を聞いた。鬼島は天井までとぶ。
「油断するな。上からの攻撃がヤッラの得意技だ」
幻無斎がみんなの心に叫びかける。
床に着地した鬼島の腕を福田が取る。一本背負いで投げ飛ばした。壁に激突しても平気で鬼島立ち上がる。
道場のいすたるところでたたかいが開始された。
吸血鬼のほうが数からいっても優利だ。ヤッラは倒してもすぐ新手が立ち現れる。際限なく湧き出る感じだ。剣士のおおくは鉤づめで腕や胴を引き裂かれている。
「血をすわれるな」
このとき隼人たちが血路を開き道場に駆けこんできた。
「よくかけつけてくれた」
「どうやら、おじいちゃん間に合ったようですね」
隼人が近づくRFを後ろ手に斬り捨てる。
「わたしたちも共に戦います。なつかしい生まれた家で吸血鬼を迎え撃つのも運命です」
「争いの原因をつくったのはわたしですから」と夏子も母のことばに続けていう。
鹿未来は細川の太刀を幻無斎から渡される。
鹿未来は万感の想いをこめて幻無斎に目礼し、道場を見回す。
鹿未来のなつかしさには、どれだけの時間が封じ込められているというのか。
鹿未来。
夏子。
雨野。
隼人。
四人が毅然と道場に立っている。
「さすがと夏子さまほめておきましょう。よくこちらの道場をおそうとわかりましたね」鬼島が余裕のある声でいう。となりに田村も並んでいる。
ふたりともナイフを光らせている。
シャカシャカと音で威しながら迫ってくる。
はじめから夏子をねらっている。
隼人が魔倒剣をかまえて夏子の前に出る。
危機をしらせてくれた鍔鳴りは止んでいる。
刀身が白く光っている。
武者窓がコウモリの激突でひびわれた。無数のう鋭い歯で分厚い板壁に穴が開いた。
穴はみるまに広がり黒い邪気がふきこんできた。コウモリの大群がなだれこんできた。
ギイという絶叫。肉をしゃぶるような咀嚼音。波状攻撃がつづく。とめどもなく無数のコウモリが空間にみちる。
めげずに、隼人は敵の群れに踏みこむ。
毎日、踏みなれた道場の床だ。過酷な修行をつづけてきた場所だ。
「いくぞ」
セツナ、剣は田村と鬼島のフタリの胴をないだ。空を斬った。ビユンと弓がなった。加藤が天井に飛び退いたフタリを連射した。みごとに田村の足と鬼島の腕を射ぬいた。
「すごいぞ。加藤」と隼人。
ビユンと弓の弦がなる。10連射のきく諸葛弩が威力をはっきする。吸血鬼の喉に矢が吸いこまれていく。
「円陣をつくれ」
床には緑の粘液が流れている。