田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夜のパトロール 2 /奥様はvampire 麻屋与志夫

2009-06-30 17:00:03 | Weblog
奥様はvampire 14

○「夜のパトロール」にでかけます。閉じられた薔薇図鑑の上に付箋がはりつけて

あった。いままでも、こういうことはあった。カミサンはふいに消える。なんの予

告もなく夜ふいに消える。

でも今夜はなにかしらいつもと違っているようだ。カミサンが玲加ちゃんを伴って

消えたこことには異次元からの働きかけがあった、と推察して慄いた。わたしはカ

ミサンがまだ恋人であったころから小説をかきづけている。すでに小説と取り組ん

でいたわたしは周りの劣悪な環境と刺激のない田舎暮らし中で勘だけをたよりに書

いてきた。直感能力には自信がある。

わたしは、あわてて窓辺によった。夜の庭がみえる。網戸越しにばらの芳香がただ

よってくる。ふたりの姿は見あたらない。緊急の場合なのに、わたしは庭からたち

のぼってくるここちよいばらの香りにみをゆだねている。こういうときだからそ、

冷静にならなければ……。しかし体は部屋の中を移動して、武装のための準備

をしている。今宵は満月。予期せぬトラブルにまきこまれるような予感がする。

カミサンは来る日も来る日も、ばらの話を際限なくわたしの耳もとでささやきつづ

けた。いまではおかげで庭のばらの品種はほとんどそらんじている。

庭に出る。ばら園を横切ることのできるとはいまのところわたしとカミサンだけ

だ。迷路のような植え込みなので知らないひとがはいりこむとばらの棘に阻まれて

一歩もすすめなくなる。棘でバリアをはってあるようなものだ。

わたしは妻の残り香を追いかけた。まるで臭跡をたどる犬のようだ。いまのところ

臭いには異常はない。事態が急変すれば匂いもかわる。ふたりの匂いは黒川べり貝

島のほうにむいていた。貝島橋をわたって犬飼地区にはいるのは危険だ。人狼神社

のある方角だ。

「小説を書いているようだったから」

足もとを流れる川風をほほにうけてふたりは欄干にもたれていた。くつろいだよう

な雰囲気だがなにかおかしい。パトロールにでかけると書き残したことだっていつ

ものパターンではない。だいいち玲加がひどく緊張している。中州に人影があっ

た。

「捕食中なの。間にあわなかった」

この気配を感知してカミサンは飛びだしたのだ。ひどく残念そうだ。

「風向きがかわった。わたしたちに気づいたわ。くるわよ。玲加」



●カミサンの薔薇ブログ「猫と亭主とわたし」もご愛読ください。vampireには薔

薇がよく似合いますよね。薔薇のピクチャはすべてカミサンの提供です。

リルケの薔薇…バラをこよなく愛した詩人ライナア・マリア・リルケ。     この赤いバラは名前がわからなかったのでリルケにわたしたちが捧げたバラです。
       

       

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