田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

受験の駆け込み塾/麻屋与志夫

2012-01-13 07:06:13 | ブログ
1月13日 金曜日
ブログです。
受験のかけみ塾
●「わるいですね。気落ちしないで、頑張ってください」 
カミサンが悲しそうな顔で受話器を置いた。

●わたしは、だまってうなづいていた。
「話のようすは、わかった。しょうがないだろうな」

●カミサンに話しかけながら、わたしはじぶんを納得させるためにしきりとうなづいていた。――かわいそうだが、手の打ちようがないだろうな。

●私立の入試に失敗してしまった。
いまからでも、塾に入りたい、というのだ。
ここで解説が必要なのだが、この県では県立高校が第一志望校で、
私立の受験をすべり止めという。
東京などとまったく逆の発想です。

●そのすべり止めのSの入試に失敗したということは、
かなり成績が悪い、
ということだ。
なんとか県立高校には合格したい、いまからでも入塾できますか。

●どこの塾でも同じだろう。
一教科は月6時間だ。
時間数からいっても、成績の向上はのぞめない。
それこそ、文字どうり時間切れだ。

●最後の一手はある。
学校を早退してきて、
わが「アサヤ塾」の家庭教師コースで毎日三時間くらい勉強するということだ。
でもこのハードスケジュールをわたしのほうが、いまでこコナセナイダロウ。
とカミサンが判断した。
毎晩6時間教壇にたっている。
これ以上授業時間をふやすのはたしかにむりがある。

●しかし、どこで聞いたのか、電話は隣町の今市からだった。
遠方だ。
だれかの紹介だったのだろうか。

●ガックリとしている母親の姿が思い浮かび、なんとも釈然としない。
気の毒だなぁ。
どうして今まで放っておいたのだろう。

●このまえも書いた。
情報弱者が増え続けている。
私立校の受験に不合格というシグナルは、もう小学生のときからでていたはずだ。
それほどその高校の入試は難しくない。
試験問題のレベルは高いのだが、合格圏の点数はひくい。
それなのに可哀そうだが不合格ということは、教師にはわかっていたはずだ。
でも、学校の先生には立場上、どこも受からないぞ、などとはいえない。

●わたしの教えている生徒には、
中学1年生でも、この成績だと、合格するのはOOの高校だよ。
と教えている。
さらに一段上を目指そうよ!! と励ます。

●情報にウトイ。ということは、怖いことだ。

●この電話の数時間前。
N君がお母さんと来てくれた。
いま話題にしている私立校に合格したという報告だ。
お母さんも、N君もうれしそうだった。
「こんどは、県立高校です。よろしくおねがいします」
11月に入塾したN君だ。
ぎりぎりで間に合った。
こんどは第一志望校合格をめざして――ガンバロウ。

●N君にドーナツをもらった。
おいしかった。
ゆっくりと味をかみしめながら食べた。

●そのあとだけに、不合格の子どもの母親の顔が脳裏に浮かび悲しかった。
どうして、もっと早くじぶん子どもの能力に気づいてあげなかったのだろう。
ことここにいたっては、
いくら「アサヤ塾」が「駆け込み塾」と評判をとっていても、力になれない。
ほんとうに残念だ。
もういわけない。
悲しいことだ。


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