田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

いつか老いると……。  麻屋与志夫

2017-03-11 18:32:19 | ブログ
3月11日 Sat.

●なんとしたことだ、動悸が激しくなった。
口の中が乾いて、舌が思うように動かない。
いやこれは病気である訳がない。
ただ、ふいに言葉がでてこなくなったのだ。
それがショックで狼狽しているのだ。

●「カップですか」店員がいった。
「そう。カップです。カップをください」
浅草駅の地下の酒店で菊水の200㏄金缶を買った。
帰りの電車の中で飲みながら鹿沼まで帰ってくるのが長い間の習慣だった。
いままで、すらっと口をついてでた「かっぷ」という言葉が思い浮かばなかった。

●言葉がすらっと出なかった、初めての体験だった。
歳だな。
と意識した初めての経験だった。

●これは大変なことだ。
小説を書いていて、言葉が出てこなかったら、どうしょう。
どうしょう。
そんな不安をいだきながら飲んだ酒で悪酔いした。

●鹿沼に着いてから乗ったバスのなかで大声で妻に話しかけた。
妻を困らせた。

●物忘れがはげしくなったら、もっとはげしくなったら、どうしょう。

●早く、書きたいことは書いておかなければ。
と、思った。

●異変はおもわぬところから、不意におそいかかって来るものだ。

●ようし、老いに負けずに、老いた駄馬である自分に、鞭打ち走りぬけるぞ、と覚悟したヒトこまでした。
いつか、老いると、こんなことがあなたにも起きますよ。



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