田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

超短編小説 60年後の街角で  麻屋与志夫

2018-02-10 08:36:06 | 超短編小説
2月10日 Sat.
60年後の街角で

●チサンホテルのレストラン「だいだい」で和食をたべた。ひさしぶりの外食なのでふたりともなんとなくギコチナイ。
「初めてあったとき、こうして向い合って話すの……恥ずかしかった」
「映画の話をした」
「そうよ。相似形モンタージュで画面を繋ぐ技法について語っていたわね」
「麻布霞町にあった「シナリオ研究所」に通っていたから」
 映画の話となるとふたりとも饒舌になる。気がつくと食事はすんでいた。
 レストランの入り口から街にでる。彼女と熱く語りあった映画の一こまのような風景、知らない街にいるような錯覚にとらわれた。
「パパ」
 ふいにだいぶ離れたところから呼びかけられた。パパはないだろう、こんなオイボレGGにパパ――。
 ホテルの正面入り口で妻が手をふっている。ドキッとした。
「レジがフロントのほうだったの」
 ドギマギしているわたしに妻がいう。
 若い彼女に呼びかけられたような、驚き顔のわたしに妻がケゲンナ顔でいう。
なに考えていたのかしら。
顔を傾げる彼女のしぐさはあの頃とすこしも変わっていない。
なにを考えていたの。


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