田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

歴女歴史を変える/奥様はバンパイァ 麻屋与志夫

2009-10-24 18:30:12 | Weblog
10月24日 土曜日
奥様はバンパイァ 57

○「愛しています。わたしぃ……武と交際してみる。交際させてください」

武がゆっくりと息をはきだした。

玲加は目を開いた。

「わたし武のこと好きみたい」

玲加を見下ろしていたGGとMがほほえんでいる。

「わたしどうなっているの」

「武さんが助けてくれなかったら、人狼の過激派に喉笛くいちぎられていた」

そうだ。武がふいに現れてわたしをつきとばした。

わたしはそれでたすかったのだ。

武は、腕から血を流していた。

「ありがとう。武。でも、どうして??? 助けてくれたの」

「わからない。玲加がかみ殺されそうなので。助けなければと思ったら体が動いて

いた。夢中で体が動いていた」

「ありがとう」

犬飼の過激派は武の兄章夫に先導されて、奈良に向かったらしい。

奈良の地になにがあるというのだ。

奈良の地でなにをしようとしているのだ。

「ぼくにも、わからない」


玲加と武はバラ園を歩いていた。

遥、はるかむかし、わたしたちは天使だった。

天国の神の庭園でバラの世話をしていた。

まだ人狼とバンパイァというように枝分かれしていなかった。

ある日バラの棘で指を傷つけられたわたしたちの始祖が、うっとりと血を啜ってい

るのを神に見咎められた。

天国を追われて、堕天使となった。

「それいらいの歴史を変えてみないか。ぼくらが愛し合えばなにか変るかもしれな

い。人狼と吸血鬼のあいだの争いに終止符をうつことになるかもしれない」

玲加は武の腕をとって顔をすりよせた。

それが玲加の応えだった。

歴女が歴史を変えたからといって、だれも批判することはないだろう。

「武のこと好きだよ」



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