田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

金剛桜

2007-11-19 19:45:00 | Weblog
11月19日 月曜日 晴れ
●携帯の歩行機能がブラックアウトしてしまった。何も表示されない。散歩をしても、歩行数がわからないと、なにかはりあいがない。些細ないことかもしれないが、毎日の歩行数がわかるということを、こんなにも楽しんでいたのかと思った。

●世をあげて健康ブームだ。健康食、サプリメント、アスレチック、健康器具。わたしは散歩をたのしんでいる。田舎町にもどってきたときには、日光のあまり知られていない滝や古刹巡り。都会にいるときは、迷子になるのが趣味だ。散歩にでて、知らない街に迷い込み好き勝手に歩きまわる。その挙句、昔、歩いた記憶の街にでることがある。          
たのしいものだ。

●なにをするにも、このたのしいということが心にはいい薬になるようだ。早く、携帯を直してもらわなければ、たのしみのひとつが奪われたままだ。

●先週の金曜日に日光を訪れた際、帰路、三仏堂によった。改修中だった。でもわたしの見たかったのはあの桜だった。樹齢五百年をこえる『金剛桜』だ。

●国の特別天然記念物になっている。ヤマサヅクラの老木で根回り約5、7mもある。

●わたしがこの金剛桜と出会ったのは60年も前のことだ。英語の会話の勉強をしていた。テレビもテープレコーダーない。そうだ、日光にいこう。天啓といってよかった。戦勝国のアメリカ兵や外人が日光の観光にやってきていた。観光という意味すら分からないまま、わたしは必至で外人に英語で話しかけた。お金を払うというのを、英語で話せてすごくいい勉強をさせてもらったのだからいらない。たどたどしい英語でこたえていたのをいまでも思い出す。でも、話しかけられるようになるまでが、苦労だった。

●「大きなオニギリをね、大勢の人に見られる所でたべてごらん。それになれれば、もうなにも恥ずかしいことなんか、なくなるはずだから」
母のこの提案に素直にしたがった。わたしが選んだのは、輪王寺三仏堂前の金剛桜の根元だった。金剛桜の傍らでの自己鍛練のおかげで、顔がひきつり、眼がひくひくする対面恐怖症に似た怖れから解放された。

●樹齢五百年の桜から見れば、わが人生の74年などいかほどのものだろう。金剛桜を見上げて感慨無量だった。

●「来年は、花の季節に来るからな。また会おう」

       

       

       


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