田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

撃退/吸血鬼ハンター美少女彩音 麻屋与志夫

2008-07-29 09:03:04 | Weblog
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 美穂の悲鳴に彩音は戦慄した。
 襲われている。 
 美穂の命が危ない。 
 彩音は声をたよりに走りだした。
 薄暗い空間を走る。広場にでる。
 墓地をぬける。
 くらいトンネルにまたはいる。
 複雑にいりくんでいる。
 彩音は走る。
 美穂、美穂、どこなの? 
 美穂……。
 恐怖がない、といったらウソになる。
 彩音は親友の美穂を助けたい。
 どんなことがあっても助けたい。
 彩音を走らせているのは友情だった。
 どんなことがあっても美穂を助けたい。
 そして、怒りだった。
 怒りが彩音の恐怖に打ち勝った。
 怒りが彩音を走らせていた。
 故郷鹿沼を蹂躙する吸血鬼集団にたいするはげしい怒りだった。
 親友美穂を餌食にしょうとする人狼集団にたいする怒りだ。
「美穂」

 
 病院では。
 シュシュシュと威嚇音をあげながら吸血鬼が後退する。
 倒された仲間をみすててホールをぬけ、フロントをでて夜の町にきえていった。
 残された吸血鬼はもえつきた。
 あとには悪臭だけがのこった。
 いやな臭い。
 くさった魚でもやいたような臭い。
 見せ場をつくってもらえなかった麻屋がぽつんと、それでも生徒たちのみごとなはたらきに満面笑みをうがべている。

 携帯の緊急連絡網で50名をこす献血者が待ち合いロビーに集合してきた。
 こんなときの携帯の連絡機能ってすさまじい。
 ぴちぴちの中学生。それも女生徒ばかりだ。
 献血。血液型を記されたそれぞれの胸の名札だってすごく役にたつ。
 血を提供するぴちぴちギヤルの群れをみたら、どこかにいる吸血鬼さんは、血のなみだこぼしてくやしがるだろう。

 慶子のママが婦長のカンロクをみせた。
 医師、看護婦をふくめて輸血の必要ある患者がともかく十名以上はいる。
 これからも、ふえるだろう。ベットの下で、血をすわれたものがうめいているかもしれないのだ。
 病院の中をくまなくさがさなければ。
 みじめなのは警察官。
 鑑識は埃をかきあつめている。
 これらすべてを、みたものを信じられない彼らは、SFX、特撮の撮影現場に巻き込まれたのではないか。
 ドッキリカメラの再現ではないか。
 どこかにカメラがあるはずだ。
 気にしながら、悲しい捜査に血道をあげている。
 あせりで、目が赤くひかりだす。
 というのは、いいすぎだ。
 慶子ははたらく母をはじめてみた。うれしかった。
 どこかにいる父にみせたかった。
 こんなすばらしい妻と、どうして別れたの。ね、ね、どうして。
 彩音と美穂がいないことに慶子が気付いた。

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