田舎街で。
学習塾の英語教師としての。
平穏な生活をのぞんで、生きてきた。
……わたしをリタイアに追いこんだ。
その死の臭いの源としての吸血鬼を。
いま目の前にしている……。
「なによ、あんたら。あたし知らないの。鹿沼中学スケバン、サンタマリヤのタカコよ」
タカコには普通の若者としか見えていないらしい。
妖気がみなぎっている。
こいつら、まちがいなく吸血鬼。
だが、タカコのタンカにかれは顔の肌を剥きとることでこたえた。
「やっぱ、これくらいではおどろかないんだな」
マスクだった。
よくできすぎている。
よくできすぎたマスク。
青黒い肌。
乱杭歯。
尖った耳。
吸血鬼の顔には。
牙が光っている。
毎晩塾の授業がある。
夜の街には出ていない。
遊びもかわった。
年だな、と麻屋はおもい知らされた。
自分の早とちりが笑えてくる。
「なにカギまわっている」
裏口につれだされた。
「カギまわられて、ヤベェことしてるんかよ。あんたら、みかけねえツラしてるけど、どこの族なのよ。おしえていただけます」
「きいてるのは、こっちなんだよ」
ビューとタカコが口に指をいれて合図した。
指笛が狭い路地にひびいた。
『マリア』と腕章のついた族の制服姿が路地にはいってきた。
ギャング。
女の子だけ。
Gガールズが群れる。
「わたしがひとりできてると思ったの」
「キザムぞ」
マスクを外した男がナイフを取り出した。
バタフライ・ナイフだ。
すう年前、この宇都宮からさほど離れていない。
黒磯の女教師を中学生が刺殺した。
マスコミをさわがせたナイフだ。
チャカチャカと音をたてる。
光る凶器が迫る。
威嚇してくる。
「あんたら、三人ともバカじゃない。あたしたちが、そんなトイザラスでうってるようなナイフでおどろくとおもうの。ナメンジャネエヨ」
「よしなよ。メグミ。そんなモノ出すのはやすぎるよ」
メグミの手には。
圧倒的な存在感のある……。
クロコダイルダンデイでつかわれたような。
特大のソリューション・ナイフがにぎられていた。
大刃のナイフ。
みねが鋸になったアレだ。
ひるまず、つっかけてきた男のナイフをそれが弾いた。
みねのぎざついた部分でかみあった。
おとこのナイフが手からはなれた。
メグミの刃が男のふとももを切り裂いた。
浅く長く。
この子たちは、慣れている。
こんなことをいつもやっているのだろう。
そのスリル。
その快感。
その興奮のはてにやってくるカタルシス。
そうしたことをもとめて夜の街をさまよっているのだ。
「やめないか。もういい」
麻屋がとめにはいった。
それがGガールズを刺激してしまった。
「フクロにしちゃいな」
「そいつのマスクもとってみな。ツラおぼえとくからね」
2人目の男のマスクにメグミが手をのばした。
「よせ」
不気味な妖気がその男からただよってくる。
妖気の発現点だ。
並の妖気ではない。
精神に狂いを生じさせるほどの悪意が噴き出している。
「やめろ。にげるんだ」
なにこのオジンセンセイはビビツテルの。
そんな顔でメグミはマスクにかけた指先に力をいれた。
あれっといった顔になった。
あれ、これおかしいよ。
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学習塾の英語教師としての。
平穏な生活をのぞんで、生きてきた。
……わたしをリタイアに追いこんだ。
その死の臭いの源としての吸血鬼を。
いま目の前にしている……。
「なによ、あんたら。あたし知らないの。鹿沼中学スケバン、サンタマリヤのタカコよ」
タカコには普通の若者としか見えていないらしい。
妖気がみなぎっている。
こいつら、まちがいなく吸血鬼。
だが、タカコのタンカにかれは顔の肌を剥きとることでこたえた。
「やっぱ、これくらいではおどろかないんだな」
マスクだった。
よくできすぎている。
よくできすぎたマスク。
青黒い肌。
乱杭歯。
尖った耳。
吸血鬼の顔には。
牙が光っている。
毎晩塾の授業がある。
夜の街には出ていない。
遊びもかわった。
年だな、と麻屋はおもい知らされた。
自分の早とちりが笑えてくる。
「なにカギまわっている」
裏口につれだされた。
「カギまわられて、ヤベェことしてるんかよ。あんたら、みかけねえツラしてるけど、どこの族なのよ。おしえていただけます」
「きいてるのは、こっちなんだよ」
ビューとタカコが口に指をいれて合図した。
指笛が狭い路地にひびいた。
『マリア』と腕章のついた族の制服姿が路地にはいってきた。
ギャング。
女の子だけ。
Gガールズが群れる。
「わたしがひとりできてると思ったの」
「キザムぞ」
マスクを外した男がナイフを取り出した。
バタフライ・ナイフだ。
すう年前、この宇都宮からさほど離れていない。
黒磯の女教師を中学生が刺殺した。
マスコミをさわがせたナイフだ。
チャカチャカと音をたてる。
光る凶器が迫る。
威嚇してくる。
「あんたら、三人ともバカじゃない。あたしたちが、そんなトイザラスでうってるようなナイフでおどろくとおもうの。ナメンジャネエヨ」
「よしなよ。メグミ。そんなモノ出すのはやすぎるよ」
メグミの手には。
圧倒的な存在感のある……。
クロコダイルダンデイでつかわれたような。
特大のソリューション・ナイフがにぎられていた。
大刃のナイフ。
みねが鋸になったアレだ。
ひるまず、つっかけてきた男のナイフをそれが弾いた。
みねのぎざついた部分でかみあった。
おとこのナイフが手からはなれた。
メグミの刃が男のふとももを切り裂いた。
浅く長く。
この子たちは、慣れている。
こんなことをいつもやっているのだろう。
そのスリル。
その快感。
その興奮のはてにやってくるカタルシス。
そうしたことをもとめて夜の街をさまよっているのだ。
「やめないか。もういい」
麻屋がとめにはいった。
それがGガールズを刺激してしまった。
「フクロにしちゃいな」
「そいつのマスクもとってみな。ツラおぼえとくからね」
2人目の男のマスクにメグミが手をのばした。
「よせ」
不気味な妖気がその男からただよってくる。
妖気の発現点だ。
並の妖気ではない。
精神に狂いを生じさせるほどの悪意が噴き出している。
「やめろ。にげるんだ」
なにこのオジンセンセイはビビツテルの。
そんな顔でメグミはマスクにかけた指先に力をいれた。
あれっといった顔になった。
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