田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼浜辺の少女外伝/魔闘学園

2008-08-31 06:25:48 | Weblog
 田舎街で。
 学習塾の英語教師としての。
 平穏な生活をのぞんで、生きてきた。       
 
 ……わたしをリタイアに追いこんだ。
 その死の臭いの源としての吸血鬼を。
 いま目の前にしている……。

「なによ、あんたら。あたし知らないの。鹿沼中学スケバン、サンタマリヤのタカコよ」
 タカコには普通の若者としか見えていないらしい。
 妖気がみなぎっている。
 こいつら、まちがいなく吸血鬼。
 だが、タカコのタンカにかれは顔の肌を剥きとることでこたえた。
「やっぱ、これくらいではおどろかないんだな」
 マスクだった。
 よくできすぎている。  
 よくできすぎたマスク。 
 青黒い肌。
 乱杭歯。
 尖った耳。
 吸血鬼の顔には。
 牙が光っている。

 毎晩塾の授業がある。         
 夜の街には出ていない。        
 遊びもかわった。           
 年だな、と麻屋はおもい知らされた。
 自分の早とちりが笑えてくる。
「なにカギまわっている」
 裏口につれだされた。
「カギまわられて、ヤベェことしてるんかよ。あんたら、みかけねえツラしてるけど、どこの族なのよ。おしえていただけます」
「きいてるのは、こっちなんだよ」
 ビューとタカコが口に指をいれて合図した。
 指笛が狭い路地にひびいた。
『マリア』と腕章のついた族の制服姿が路地にはいってきた。
 ギャング。
 女の子だけ。
 Gガールズが群れる。
「わたしがひとりできてると思ったの」

「キザムぞ」

 マスクを外した男がナイフを取り出した。

 バタフライ・ナイフだ。
 すう年前、この宇都宮からさほど離れていない。
 黒磯の女教師を中学生が刺殺した。
 マスコミをさわがせたナイフだ。

 チャカチャカと音をたてる。
 光る凶器が迫る。
 威嚇してくる。

「あんたら、三人ともバカじゃない。あたしたちが、そんなトイザラスでうってるようなナイフでおどろくとおもうの。ナメンジャネエヨ」
「よしなよ。メグミ。そんなモノ出すのはやすぎるよ」
 メグミの手には。
 圧倒的な存在感のある……。
 クロコダイルダンデイでつかわれたような。
 特大のソリューション・ナイフがにぎられていた。

 大刃のナイフ。
 みねが鋸になったアレだ。

 ひるまず、つっかけてきた男のナイフをそれが弾いた。
 みねのぎざついた部分でかみあった。
 おとこのナイフが手からはなれた。
 
 メグミの刃が男のふとももを切り裂いた。
 浅く長く。
 
 この子たちは、慣れている。
 こんなことをいつもやっているのだろう。
 そのスリル。
 その快感。
 その興奮のはてにやってくるカタルシス。
 そうしたことをもとめて夜の街をさまよっているのだ。
「やめないか。もういい」
 麻屋がとめにはいった。
 それがGガールズを刺激してしまった。
「フクロにしちゃいな」
「そいつのマスクもとってみな。ツラおぼえとくからね」
 2人目の男のマスクにメグミが手をのばした。
「よせ」
 不気味な妖気がその男からただよってくる。
 妖気の発現点だ。
 並の妖気ではない。
 精神に狂いを生じさせるほどの悪意が噴き出している。
「やめろ。にげるんだ」
 なにこのオジンセンセイはビビツテルの。
 そんな顔でメグミはマスクにかけた指先に力をいれた。
 あれっといった顔になった。      
 あれ、これおかしいよ。

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