田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

手燭台

2007-09-07 18:54:32 | Weblog
9月7日 金曜日 雨、曇り、晴れ
●珍しいものが食卓に出ていた。手燭台だ。ローソクを立てた燭台を手にもち移動できる。現代風にいえば、懐中電灯だ。いや、このことばもすでに死語。ハンドライト。あるいはフラッシュライト。というのだろうか。

●河田町の「備後屋」で買ったものだ。手で握る所に、わたしが野州麻を細く撚り合わせた縄を巻きつけた。麻縄を握りに巻きつけたことによって他に類のない民芸品となった。と、まあ本人は自画自賛。

●カミサンにはコレクター的な性癖がある。なにか一つのものに凝ると、もういけない。無性にその品を集める。かわいそうに貧乏書生の妻だ。あまり値のはるものは収集出来ない。ある時は、ピエロ人形でありまたある時は器であったりした。器は「広永窯」の土平さんのものが好きで神楽坂の「釉」さんにはずいぶんと通った。

●西早稲田に長いこと住んでいた。あの近辺には知り合いが多い。椿山荘で友だちと会食した時のことをよく話題にする。「こんどは、パパといきたいわ」いつになっても、子供を育てていた頃についた口癖で、このGGをパパという。「パパ」などと澄んだ艶のある声でスーパーの店内などでよびかけられると、珍事が起きる。わたしとカミサンを見比べて「このふたりどういう関係なの」と疑惑の目が集中する。カミサンは自称52歳。声だけ聞けば娘のようだ。のろけているうちに、手燭台から話題が遠ざかってしまった。

●台風で停電でもあったらと、カミサンが心積もりで準備した手燭台。思い出のある品だ。人は物にとりかこまれて生きている。物には記憶がついてまわる。そうなるとわたしたちの体の一部のようなものだ。


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