田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

クノイチ/吸血鬼ハンター美少女彩音

2008-07-30 11:36:57 | Weblog
40

 男は吸血鬼だったのだ。
 おそらく、この後で、純平はすすんで吸血鬼に噛まれたのだ。
 澄江の敵、憎い上沢寮監を打つために吸血鬼となって、剣の修行に励んだのだ。 麻屋はそう思った。
 過去に起きたことが……。
 吸血鬼の侵攻が……。
 100年たったいま……。
 またはじまっているのだ。

「先生。勉強してる場合じゃないよ。彩音と美穂がいないの」
「いつからいないことに気づいたのだ、慶子? むろんさがしてはみたんだろうな」
「携帯もうったよ。でもつながらないよ」と静か。
「あっあれみて」
 慶子がつけっぱなしになっている待合室のテレビをさした。

 彩音は美穂の声を頼りに奥に駆け込んだ。
 美穂が倒れている。
 彩音は夢中で美穂をだきおこす。
「そのまま走れ」
 さきほど、闇の中から話しかけてきた声がした。
 彩音は美穂の腕を肩にかえて走りだす。
 美穂を引きずっている感じだ。
 とてつもない害意が追いすがってくる。
 バッと行く手が白く発光する。
 かまわず飛び込む。
 ぬける。
 発光する空間を抜け出すと夜間照明されたイベント会場だった。
「美穂ここでまっていて。助けを呼んでくるからね」
 美穂を植え込みの奥に横たえる。
 彩音はさらに走りつづけた。

「先生たいへんだよ。彩音がテレビに映っている」
 慶子が目をまるくして叫ぶ。
 クノイチ「さすけ」の北関東予選の会場だ。
 予選参加者が大勢おしかけたのだろう。
 夜更けの会場。
 茂呂山の鹿沼花木センターで今夜おこなわれている催しだ。
 でもこの病院からでは一キロちかく離れている。
 いままで一緒に吸血鬼と戦っていた彩音がどうして、あんな遠くにいるのかと疑 問がわいた。

 彩音は『倒連板』に跳ね上がった。
 軽々と渡っていく。
 それは最盛期のニジンスキーが舞台のはしからはしまで飛んでいるようだったと いわれる跳躍に似ていた。
 ただしバレーではない。
 彩音の所作は日本舞踊のそれだ。
 鹿沼流の舞い手の優雅な動きだ。
 Gを感じさせない素早い歩行で進む。
「いかん。彩音は追われている。だれか車をだしてくれ」
 麻屋には彩音を遠巻きにした人狼の影が見えている。
「あたしが、バイクでいく」
「わたしも彼氏のバイクできてる」
 数人のともだちが病院のフロントから走りでる。

     ご訪問ありがとうございます。
     応援のクリックよろしく。
        ↓
       にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ






最新の画像もっと見る

コメントを投稿