夕暮れて散水ホースとぐろまき
妻とみしいつもの桜咲きたるか
桜咲き椿もさいて散る木蓮
桜咲く白き木蓮散りしあと
このあたり熟れた杏のかさなりて
かがみいる妻の背に寄る蜘蛛の糸
母履きし下駄おば妻が履いており
猫の爪切る音ありて春の朝
野仏や丸石首に春朧
野仏や丸石肩に朧月
「野仏や首欠けてなお背に野分」の句を昔作ったことがあった。その二尺に満たない野仏のある蝉が淵稲荷。ふと見ると、丸い石が肩にのせてあった。心優しきことをするひとがいるものだ。時あたかも、桜吹雪。川面に桜の老木が張り出していた。蝉の合唱が聞けるまでにはまだまだ時が流れなくてはならない。
川面まで腰を曲げたる桜の木
水浅く鳴るととなりぬ花筏
水浅く渦を巻いてる花筏
水浅く花の筏は渦を巻く
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桜咲く白き木蓮散りしあと
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母履きし下駄おば妻が履いており
猫の爪切る音ありて春の朝
野仏や丸石首に春朧
野仏や丸石肩に朧月
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川面まで腰を曲げたる桜の木
水浅く鳴るととなりぬ花筏
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