今夜も仕事だ。
無駄に走り回るか、駅前でひたすら待つかのどちらかであることが多い。
今夜も、無駄に客を捜して走り回っている。
タクシードライバー。
これがおいらの職業だ。
デニーロの様にはなれない。
粛々と月のノルマを達成するまで走り回るしかない。
赤字であろうと、ノルマ最下位であろうと関係ない。
最低限の給料さえもらえれば、上司の嫌味は関係なし。
人生は割り切りだ。
多くを望まなければそれなりに生きていける。
しかし、今日は最低だ。
初乗りばかり。
頼みの駅前での待ちの末、捕まえた客は初乗り。
がっかりした。
ヘッドフォンをつけたままの若者。
お気楽に降りて行きやがった。
若者はタクシーを利用するな。
殺意を感じる。
次に乗せた客も変な奴だった。
目的地に到着し、降りながらそいつは言った。
「あんた、今日はついてない日だ。俺、分かるんだよね。「水」に気をつけな。ま、気をつけようもないがね」
「はあ、どうも」
そう返事はしたが、心底気持ち悪かった。
何を言ってやがる。
で、今にいたるってわけだ。
お!前方にお客だ。
手を挙げている。
サラリーマン風のくたびれたおやじ。
ハザードを出し、車を止める。
深夜、繁華街のそばとはいえ、ここは墓地の前。
このおやじはこんなとこで何をしているんだ。
「3丁目わかる?」
「ええ、わかりますよ」
「じゃあ、やってくれ」
そういうとおやじは目をとじた。
顔色は悪い。
(いやだよ幽霊なんて…)
そう思いながらも、おやじの下半身を確認する。
どうやら足はついているようだ。
ほっとする。
目的地に到着した。
「お客さんつきましたよ」
「ん、ありがとう」
相変わらず顔色は悪い。
「つりはとってくれ。悪かったな」
そう言っておやじは降りていった。
降車後、おやじの姿は一瞬で闇に消えた。
その時、なま暖かい風を首筋に感じた。
背筋に寒気が走った。
おそるおそる後ろを振り返る。
後部シートがぐっしょり濡れている。
げっ、出たよ。
とうとう出ちゃったよ。
幽霊だよ。
と思ったが、鼻をつーんと刺激臭を襲う。
このシートの濡れ…
これは…
おしっこ。
背筋がまたもや寒くなる。
無駄に走り回るか、駅前でひたすら待つかのどちらかであることが多い。
今夜も、無駄に客を捜して走り回っている。
タクシードライバー。
これがおいらの職業だ。
デニーロの様にはなれない。
粛々と月のノルマを達成するまで走り回るしかない。
赤字であろうと、ノルマ最下位であろうと関係ない。
最低限の給料さえもらえれば、上司の嫌味は関係なし。
人生は割り切りだ。
多くを望まなければそれなりに生きていける。
しかし、今日は最低だ。
初乗りばかり。
頼みの駅前での待ちの末、捕まえた客は初乗り。
がっかりした。
ヘッドフォンをつけたままの若者。
お気楽に降りて行きやがった。
若者はタクシーを利用するな。
殺意を感じる。
次に乗せた客も変な奴だった。
目的地に到着し、降りながらそいつは言った。
「あんた、今日はついてない日だ。俺、分かるんだよね。「水」に気をつけな。ま、気をつけようもないがね」
「はあ、どうも」
そう返事はしたが、心底気持ち悪かった。
何を言ってやがる。
で、今にいたるってわけだ。
お!前方にお客だ。
手を挙げている。
サラリーマン風のくたびれたおやじ。
ハザードを出し、車を止める。
深夜、繁華街のそばとはいえ、ここは墓地の前。
このおやじはこんなとこで何をしているんだ。
「3丁目わかる?」
「ええ、わかりますよ」
「じゃあ、やってくれ」
そういうとおやじは目をとじた。
顔色は悪い。
(いやだよ幽霊なんて…)
そう思いながらも、おやじの下半身を確認する。
どうやら足はついているようだ。
ほっとする。
目的地に到着した。
「お客さんつきましたよ」
「ん、ありがとう」
相変わらず顔色は悪い。
「つりはとってくれ。悪かったな」
そう言っておやじは降りていった。
降車後、おやじの姿は一瞬で闇に消えた。
その時、なま暖かい風を首筋に感じた。
背筋に寒気が走った。
おそるおそる後ろを振り返る。
後部シートがぐっしょり濡れている。
げっ、出たよ。
とうとう出ちゃったよ。
幽霊だよ。
と思ったが、鼻をつーんと刺激臭を襲う。
このシートの濡れ…
これは…
おしっこ。
背筋がまたもや寒くなる。