日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日の空想劇場「隠しフタ」

2014年11月05日 | ◎これまでの「OM君」
この車に乗って40年になる。
18歳で免許を取って直ぐに中古でこの車を買った。
買った時点ですでに10年落ちの車だった。
まず直列6気筒のうちの2気筒が死んだ。
プラグヘッドが死んでいた。
交換部品を2本にするか6本にするかで悩んだが、とりあえず2本だけでやりすごした。
オーバーヒート気味でよく路肩に止めてボンネットを開けてエンジンが冷えるのを待った。
ある夏の日にっちもさっちもいかなくなって、ラジエター及び、サーモスタッドを交換した。
足まわり、電気系統とにかく一通りの修理は行った。
最初の5年はそんな感じだった。
さっさと買い換えれば良かったのだが、なんとなく気に入って修理に付き合った。
もう今となってはこの車以外の車に乗る気がしない。

ある休日の夜、車をガレージに止めた。
エンジンを止めてキーを抜いた。
カチャ
おっと、キーを運転席の足下に落としてしまった。
座ったままではよく見えなかったので、車から降りてライトで照らしながらキーを拾った。
おや…
ちょうどハンドルのしたあたりにフタ状のものが見えた。
あんな所に何のフタだろう。
ライトで照らし5cm×5cmくらいのふたをはずす。
その奥にはイヤホンジャックが隠されていた。
エンジンに火を入れた。
携帯電話用のハンズフリーイヤホンマイクをジャックに差し込む。
「コンディション・オールクリア コンディションオールクリア」
女性の声で繰り返し聞こえた。
(そんな、この時代の車にコンピュータなんて搭載されていないはず。
なんてことだ。
まさか中古で買ったから前のオーナーが乗せたのか。
それにしてもウインドウズもOSも無い時代の車なのに…
しばらくの沈黙の後、また車が話し出した。
「サプライズ・ユー
大事に乗ってくれたあなたへ私の秘密をお教えします。
私のフロントグリルの材質はプラチナです。
どうぞ売り払ってください。
その資金を元にあなたにお願いがあります。
ホワイトボディを手に入れてください。
そして数キロにわたる電気系統をやりなおしてください。
私の頭脳にはまだあなたの懐を潤す情報とテクノロジーを持っています。
どうですか、ご主人様」
私はとんでもなくラッキーな中古車を手に入れていたらしい。
コメント
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