日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日のお話「プロの奢られ屋」

2016年01月11日 | ◎これまでの「OM君」
「さあ、今夜もラジオの前の皆様とご一緒に勉強いたしましょう。アシスタントを勤めさせていただきます石井静香です。どうぞよろしく。
そして本日もいつものように国家資格発足当初よりの第一人者であられます上川先生にお越しいただいております。
「どうぞよろしく」

「では早速、今夜はファミレスにおいての注意点です。先生、どういった事がポイントとなるでしょうか?」
「そうですね、日常生活において状況としてはありがちな場面ですが、ちょっとしたコツでスムーズにこなすことができます。そのコツは来店時の入店順番です」
「入店順番ですか?」
「そうです、順番です。何番目が正解だと思われますか?
実は…2番目に入店するの事が望ましいです。
1番目に入店いたしますと、どうしても店員の対応が発生します。何名様ですか?や、禁煙席か、喫煙席なのか?
イキがって仕切ってしまうと支払いの時に微妙な間がテーブル上に発生してしまいます。
どうしても支払いを回避した最終目的達成時、何かいやらしいものが醸し出されてしまいます」
「なるほど」
「かといって入店時、一番最後に入ってしまうと、おのずとテーブルの一番端に座ることになります。これは一番のタブーです。支払いレシートは通常テーブルの端に置かれるからです。目の前に支払いレシートがあるのはあまり好ましい状況ではありません。ですからファミレスでのセオリーとしては2番目の入店がベストです。
そして肝心の支払い時の注意点ですが、もうそろそろ帰ろうかというタイミングが訪れた時、決して自ら動かないということです。支払いレシートを誰かが手に取るまでは視線を斜め下、うつむき気味に固定する。そして成り行きに身を任せる。これも鉄則です。ここを自然に乗り切ればわざわざ許可証を提示して奢られる資格があることを納得させる手間も減ります」」
「そうですね。提示なしの奢られ行為を推奨するのが近年のトレンドとなりつつあります。
プロの奢られ屋たるものそれくらいの身のこなしは常に心得たいものです。
入店順番に関する出題は過去のセンター共通奢られ試験では必ず出題される傾向にあります」
「奢られ一級資格発足当初には無かった形態のもの、例えばネット接続料金なども奢られ範囲内になっておりますので、この資格が近年見直されております。私も今年で奢られ資格取得40年を迎えます。こんなものも奢っていただけるのかと毎日が感謝と発見の日々です。
そして受験勉強はつらかったけれども取得しておいて本当に良かったなと痛感しております。
まあ、しかし資格を持ったものだけが奢られる権利があるようになった事は結果的には良かったと思います。
それまでは奢られる側の怠慢が世に横行しておりました。奢られて当然的な無礼な行動などです。」
「なるほど!実はアシスタントを勤めております私も今年受験をしようと思って準備しているんです」
一瞬、先生の顔色が曇った。そしてしぼりだすように言った。
「ほう~…とうとう決心されましたか。いやいやつらいかとは思いますが正念場です。がんばってください」
「はい、ありがとうございます。しかし、受験料金300万円。これは正直つらいです」
「はは…そうですな」
先生は苦悶の表情をうかべている。
「なので…」
アシスタントの静香は懐に手を入れる。
「まさか!待て、早まるな!」
そう言いながら上川はイスを蹴倒し立ち上がった。
懐から抜かれた静香の手には38口径のリボルバーが握られていた。
撃鉄が銃内部に入れ込まれたコンシールド仕様の銃は衣服のどこにも引っかからずするりと取り出されていた。
まっすぐに上川の眉間に銃身は向けられている。
静香は言った。
「奢られ許可証を奪うことに決めました。」
引き金にかかった指に力がこもる。


この許可証が及ぼす影響を考慮して世に流通する許可証の枚数は決まっている。
今年は保有者の返納などで空きが発生し、試験が実施される運びとなったのだ。
ほぼ受験しても落ちる。
それぐらいの合格率なのだ。
世の不満をそらすため、政府は特例として生死を問わない許可証の譲り合いも認めており、どうしたいのか全く分からない政策とも批判を受けている。
コメント
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