とある寿司屋にて
小腹の空いた私は、本日のランチを考える。ラーメンはどうだろう。豚骨、味噌、醤油、つけ麺。どれも捨てがたい。しかし、この辺りのラーメン屋は人気店ばかりで大抵のお店では行列が出来ている。列に並ぶのも億劫な気分だった。
私は自分の中の欲望と、現状の妥協点を探る。そのとき、路地の奥に見慣れない店が出来ている事に気づいた。私は誘われるようにその店へと歩を進める。
「回転寿司ギャラリー」
のれんにはそう書かれていた。寿司も悪くない。しかし「ギャラリー」というのは変わった名前だ。そう思いながら店内に入る。
「いらっしゃい。こちらにどうぞ」白髪まじりの短髪の大将が威勢のいい声で私をカウンター席に促す。不思議なことに寿司の流れるレールが店内に存在しない。私はカウンター席に座りながら寿司職人に聞いた。
「回転寿司では無いのですか?」
「いえ、回転寿司で間違いありません」
「寿司がレールに乗って流れてくるのが回転寿司ですよね」
「うちは、そっちの回転寿司じゃあ無いんですよね。注文をお聞きしてから寿司を回転させます」
「はあ、そうですか」
「何を握りやしょう」
「じゃあイカください」
「イカいただきました」
職人が寿司桶に手を入れて、手際よく寿司を握り、私の前のカウンターに透き通るイカ二貫が置かれる。
「ではご賞味ください」
職人がぱんぱんと手を二度打つと、店内が暗くなり、ディスコミュージックが流れる。ストロボフラッシュがたかれる。
「大将、これはいったい」
「しっ!お静かに願います。どうぞ、お静かに賞味ください」
イカ二貫が静かにその場で回転を始める。どうやらカウンターの一部がターンテーブルになっているようだ。数回転、イカの寿司が回るのを黙って私は見た。これ以上の展開は無いと思って聞く。
「もう食べてもいいですか」
「だめです。回転寿司ギャラリーは名前の通り、ギャラリーとなっております。目で愛でる。これぞ寿司ラブ」
「食べないの」
「食べない。美術館に飾られている絵画は絶対に食べないでしょう。それと同じです」
小腹の空いた私は、本日のランチを考える。ラーメンはどうだろう。豚骨、味噌、醤油、つけ麺。どれも捨てがたい。しかし、この辺りのラーメン屋は人気店ばかりで大抵のお店では行列が出来ている。列に並ぶのも億劫な気分だった。
私は自分の中の欲望と、現状の妥協点を探る。そのとき、路地の奥に見慣れない店が出来ている事に気づいた。私は誘われるようにその店へと歩を進める。
「回転寿司ギャラリー」
のれんにはそう書かれていた。寿司も悪くない。しかし「ギャラリー」というのは変わった名前だ。そう思いながら店内に入る。
「いらっしゃい。こちらにどうぞ」白髪まじりの短髪の大将が威勢のいい声で私をカウンター席に促す。不思議なことに寿司の流れるレールが店内に存在しない。私はカウンター席に座りながら寿司職人に聞いた。
「回転寿司では無いのですか?」
「いえ、回転寿司で間違いありません」
「寿司がレールに乗って流れてくるのが回転寿司ですよね」
「うちは、そっちの回転寿司じゃあ無いんですよね。注文をお聞きしてから寿司を回転させます」
「はあ、そうですか」
「何を握りやしょう」
「じゃあイカください」
「イカいただきました」
職人が寿司桶に手を入れて、手際よく寿司を握り、私の前のカウンターに透き通るイカ二貫が置かれる。
「ではご賞味ください」
職人がぱんぱんと手を二度打つと、店内が暗くなり、ディスコミュージックが流れる。ストロボフラッシュがたかれる。
「大将、これはいったい」
「しっ!お静かに願います。どうぞ、お静かに賞味ください」
イカ二貫が静かにその場で回転を始める。どうやらカウンターの一部がターンテーブルになっているようだ。数回転、イカの寿司が回るのを黙って私は見た。これ以上の展開は無いと思って聞く。
「もう食べてもいいですか」
「だめです。回転寿司ギャラリーは名前の通り、ギャラリーとなっております。目で愛でる。これぞ寿司ラブ」
「食べないの」
「食べない。美術館に飾られている絵画は絶対に食べないでしょう。それと同じです」