夢のデバイス
トモオは目覚まし時計の音で目覚めた。
寝汗をびっしょりかいていた。
いやな夢だった。
反りの合わない上司を風呂釜でゆでダコにした。
上司の残像を振り払うように首を二、三度ふる。
トモオは朝食をトーストとコーヒーと決めている。
憂鬱な気分を変えようと、コーンフレークが食べたいと思った。
トモオは寝床からよろよろと起き上がり、キッチンに行った。
テーブルにはコーンフレークがある。
自動調理ロボが用意したものだ。
トモオは自ら購入した機械「エッジ」に驚くばかりだった。
一週間前に発売されたばかりの機械「エッジ」
それは、世界中が待ち望んだ機械だった。
自分が思うだけ。
それだけで、すべての機械が動く。
例えば、テレビのチャンネル。
例えば、部屋の電気。
例えば、車の自動運転。
自動運転は、すべての車に搭載されてもうずいぶん時間が経つ。
考えるだけで目的地に連れて行ってくれる。
例えば、帰宅前にエヤコンのスイッチを入れておく。
ありとあらゆるものが、考えただけで実行された。
トモオは身支度を整え、車に乗りこむ。
(会社)
トモオは心の中で指示した。
かすかな振動をともなって、ガレージから車がでる。
(ニュース)
車内のモニターに、沈痛な面持の女性キャスターが原稿を読み上げる画面がうつる。
「昨夜、エジン・カンパニーに勤める会社員ヤマモト・コージさんが死亡しました」
「まさか」
トモオはせまい車内で思わず中腰に立ち上がる。
ヤマモト・コージは上司の名だった。
キャスターは続ける。
「原因と思わしきものが複数あり、奇妙な状況となっております。まず、ガス漏れが発生しており、ガス中毒の可能性があります。そして、持病薬の服用する量を誤った形跡もあります。風呂で意識を失ったかもしれません。その後、風呂釜の温度が異常に上昇したことによるのか……そして最も奇妙なことは、複数の無人自動運転の車がつっこんでいます。警察は事件と事故の両方で捜査を開始するとの発表をいたしました」
すとんと腰砕けたトモオは座席に腰をおろす。
「夢ではなかったのか……まさか俺か?」
同時刻、「エッジ」を購入したトモオの同僚たちも絶望を感じていた。
同僚たちもまた、すくなからず上司の振る舞いに悩んでいた。
そんな中、昨夜、悪夢をみた。
あるものは上司のキッチンの自動調理器にガスの元栓を開けさせる夢を見ていた。
また、あるものは自動ピルケースに収まっている上司の薬の量を変更した夢を見た。
また、あるものは、複数の車の自動運転の目的地に上司の住所を入力した夢を見ていた。
一ヶ月後、「エッジ」の致命的欠陥が発覚した。
「エッジ」発売中止及び回収となった。
ヤマモト・コージさんの件はまだ捜査中である。
トモオは目覚まし時計の音で目覚めた。
寝汗をびっしょりかいていた。
いやな夢だった。
反りの合わない上司を風呂釜でゆでダコにした。
上司の残像を振り払うように首を二、三度ふる。
トモオは朝食をトーストとコーヒーと決めている。
憂鬱な気分を変えようと、コーンフレークが食べたいと思った。
トモオは寝床からよろよろと起き上がり、キッチンに行った。
テーブルにはコーンフレークがある。
自動調理ロボが用意したものだ。
トモオは自ら購入した機械「エッジ」に驚くばかりだった。
一週間前に発売されたばかりの機械「エッジ」
それは、世界中が待ち望んだ機械だった。
自分が思うだけ。
それだけで、すべての機械が動く。
例えば、テレビのチャンネル。
例えば、部屋の電気。
例えば、車の自動運転。
自動運転は、すべての車に搭載されてもうずいぶん時間が経つ。
考えるだけで目的地に連れて行ってくれる。
例えば、帰宅前にエヤコンのスイッチを入れておく。
ありとあらゆるものが、考えただけで実行された。
トモオは身支度を整え、車に乗りこむ。
(会社)
トモオは心の中で指示した。
かすかな振動をともなって、ガレージから車がでる。
(ニュース)
車内のモニターに、沈痛な面持の女性キャスターが原稿を読み上げる画面がうつる。
「昨夜、エジン・カンパニーに勤める会社員ヤマモト・コージさんが死亡しました」
「まさか」
トモオはせまい車内で思わず中腰に立ち上がる。
ヤマモト・コージは上司の名だった。
キャスターは続ける。
「原因と思わしきものが複数あり、奇妙な状況となっております。まず、ガス漏れが発生しており、ガス中毒の可能性があります。そして、持病薬の服用する量を誤った形跡もあります。風呂で意識を失ったかもしれません。その後、風呂釜の温度が異常に上昇したことによるのか……そして最も奇妙なことは、複数の無人自動運転の車がつっこんでいます。警察は事件と事故の両方で捜査を開始するとの発表をいたしました」
すとんと腰砕けたトモオは座席に腰をおろす。
「夢ではなかったのか……まさか俺か?」
同時刻、「エッジ」を購入したトモオの同僚たちも絶望を感じていた。
同僚たちもまた、すくなからず上司の振る舞いに悩んでいた。
そんな中、昨夜、悪夢をみた。
あるものは上司のキッチンの自動調理器にガスの元栓を開けさせる夢を見ていた。
また、あるものは自動ピルケースに収まっている上司の薬の量を変更した夢を見た。
また、あるものは、複数の車の自動運転の目的地に上司の住所を入力した夢を見ていた。
一ヶ月後、「エッジ」の致命的欠陥が発覚した。
「エッジ」発売中止及び回収となった。
ヤマモト・コージさんの件はまだ捜査中である。