手下たちが車からばらばらと飛び出てきた。
後部座席から現れる人物が雨に濡れないように傘を広げ、ドアを開ける。
現れた男の身長はそれほど高くはない。しかし、体躯の横幅が異常というほど広くがっしりとしている。身にまとう和服は内から膨張する筋肉を押さえられない。
眼光するどい眼差しが周囲をうかがっている。サンシローは男の腕のなかにいた。
一行は建物のなかに消えていく。
看板には「篠田動物病院」と書かれている。
ミツオは山岡誠一に見つかりそうな気がして思わず、ダッシュボードの陰に隠れるように首をすくめる。エリーも同じ動きをしている。
「動物病院ね」
「あそこは、ただの動物病院じゃあない」
ミツオの口元には笑みが浮かんでいる。
「何か知っているの」
「ああ。なんだか、きな臭いにおいがしてきたな」
ミツオは鼻をひくつかせながら、山岡達の後ろ姿を見送った。
ミツオが五本目のタバコを消した時、病院の扉が開いた。
山岡を見送る白衣の男がおそらく篠田医院長だろう。ひょろ長い背丈。老人といってもいい見かけの男が、山岡と談笑している。山岡は握手をしながら紙幣の束を医院長に渡している。
「ずいぶん、必死にお願いするものね」
「どうやらただの猫ではないらしい」
ミツオはのんきに言いながら大事なことに気がついた。
「エリー、猫がいないぞ」
山岡の腕の中に猫の姿はない。
「今夜は動物病院にお泊まりするらしい。病院にはあらためて道明寺に連れて行ってもらうことしよう」
「まさか……」
「そう、今夜サンシローをこの病院から奪還する」
ミツオはエリーにそう告げた。
後部座席から現れる人物が雨に濡れないように傘を広げ、ドアを開ける。
現れた男の身長はそれほど高くはない。しかし、体躯の横幅が異常というほど広くがっしりとしている。身にまとう和服は内から膨張する筋肉を押さえられない。
眼光するどい眼差しが周囲をうかがっている。サンシローは男の腕のなかにいた。
一行は建物のなかに消えていく。
看板には「篠田動物病院」と書かれている。
ミツオは山岡誠一に見つかりそうな気がして思わず、ダッシュボードの陰に隠れるように首をすくめる。エリーも同じ動きをしている。
「動物病院ね」
「あそこは、ただの動物病院じゃあない」
ミツオの口元には笑みが浮かんでいる。
「何か知っているの」
「ああ。なんだか、きな臭いにおいがしてきたな」
ミツオは鼻をひくつかせながら、山岡達の後ろ姿を見送った。
ミツオが五本目のタバコを消した時、病院の扉が開いた。
山岡を見送る白衣の男がおそらく篠田医院長だろう。ひょろ長い背丈。老人といってもいい見かけの男が、山岡と談笑している。山岡は握手をしながら紙幣の束を医院長に渡している。
「ずいぶん、必死にお願いするものね」
「どうやらただの猫ではないらしい」
ミツオはのんきに言いながら大事なことに気がついた。
「エリー、猫がいないぞ」
山岡の腕の中に猫の姿はない。
「今夜は動物病院にお泊まりするらしい。病院にはあらためて道明寺に連れて行ってもらうことしよう」
「まさか……」
「そう、今夜サンシローをこの病院から奪還する」
ミツオはエリーにそう告げた。