TDY、Temporary Duty。アメリカの軍隊用語で出張を意味する。世界の僻地の出張記録!TDYの次は日常の雑感

現役時代の出張記録。人との出会いと感動。TDY編を終え、写真を交えた日常の雑感を綴る。

TDY, Temporary Duty マダガスカル編 33

2014年08月18日 | 旅行
 ラフィック・アリマモッド氏とはレ・ユニオンの空港のトランジット・ラウンジで知り合ったモーリシャス人である。私がタバコに火を付けようとしていると、その手元をじっと見ていた。いかにも吸いたそうにしていたので、「如何ですか?」と勧めると、最初は遠慮したが、直ぐに嬉しそうに一本を抜きとった。モーリシャスの空港で別れた。香港行きの便を待つべくトランジット・ラウンジに行くと、そこは人であふれていた。季節外れのサイクロンに依る影響で強風と豪雨のため、空港は閉鎖状態になっているそうだ。私が乗ってきた便は豪雨と強風の中での着陸であったようだ。全く知らなかった。レ・ユニオンからの便を最後に空港は完全に閉鎖された。空港が再開されるのは明日か、明後日か不明なので、仮の出国許可を出すとのアナウンスがあった。日本人はモーリシャスへの入国ビザは必要ないが、必要とする国からの旅行客もいるのだ。ご存じの方も多いと思うが、トランジットとトランスファーの違いをご説明したい。直訳では「通過」と「転送」である。トランジットは乗り継ぎのため、次の飛行機を待つ間、当該国に入国せずに、その国から先の便に搭乗するまで決められた場所で待つのである。トランスファーは、次の便に乗るまで当該国に一旦入国してから、その先に行く飛行機に乗ることを云う。また、第一ターミナルに到着し、第二ターミナルから出発する場合でも、一旦空港の外に出なければならないとしたら、これもトランスファーである。トランスファーの場合はチケットにそのように明記されている。トランジットの場合は空港の外に出ないので、そのような表示はない。而し、例外はある。到着便が最終便であり、翌日までその先の便がない場合とか、今回のようにサイクロンのために空港が閉鎖されるような場合は特別に入国許可が下りる。日本人である私はパスポートに「トランジット」或いは「入国」の判を押されるだけだが、ビザを必要とする国の旅行客は宿泊予定のホテルを申告しなければならない。この場合、ホテルからの確認も取るのが通常である。このような場合、日本のパスポートは実にありがたい。いくつか例外的な国はあるが、殆どの国にビザなしで入国出来る。

 一泊しなければならないので、順番を待ってスーツケースを受け取り、税関を抜けた。タクシーの運転手が大勢寄ってきた。その中から人のよさそうな運転手を指名した。「オテル?」(ホテル?)と聞かれたので、「ウィ」(イエス)と答えると、私からスーツケースを取ると、直ぐにトランクルームに入れた。希望のホテルを云おうとしたが、何を云っても「ジュ・ネ・パル・パ・アングㇾィ」(私は英語を話せません)と云うだけだった。とにかくホテルに向っているのだろうから、相手に任せることにした。海岸地帯から離れ、内陸部に向かっていた。着いたホテルはさびれていたが、ホテルはホテルだと考え、チェックインをした。フロントの話だと、高級ホテルから客が埋まっていったらしい。まぁ、まぁの部屋だったが困ったことに空港からのニュースが直接入る設備がなかった。
 貰った名刺にあったラフィック・アリマモッド氏に電話をした。彼も心配してくれ、時々空港に電話をし、変化があったら私に連絡してくれると約束してくれた。食事をし、シャワーを浴び、あとは果報を待って寝るだけだった。

 朝食を済ませ、チェックアウトをすると、料金はシャンドラニ・ホテルの1/3にも満たなかった。呼んで貰ったタクシーで取敢えず空港に行ってみた。空港のロビーには昨夜から動けずにいた旅行客が大勢いた。空港施設は全て閉鎖されていたので、旅行客は何も食べていないようだった。一人のご婦人が「何か食べ物をお持ちではないでしょうか?」と云ってきたが、応じられなかった。ラフィック・アリマモッドに連絡すると、「私の家に来て下さい」と云われた。タクシーの運転手に直接道順を聞いて貰い、彼のお宅に向った。ウィークデーだったが、個人で仕事をしているので時間は自由になるらしい。

 ラフィック・アリマモッドとお昼を食べに行った。私がタバコを勧めると、彼はとんでもないと、タバコのパックを振り払うようにして断った。そして「私にタバコを勧めないで下さい」、と小さい声で云った。「レ・ユニオンでは吸ったじゃないか?」と云うと、「私はモスリム(イスラム教徒)です。タバコとお酒はアラーから禁じられています。レ・ユニオンは海外です。ですから、特別に認められていました」。何とも都合のいい教えだと呆れた。


 モーリシャス空港まで私を見送りに来てくれたラフィック・アリマモッド氏一家。双子のお嬢さんと奥さん。私も双子の娘を持っているので、彼の一家とは妙に気が合った。

 成田空港に着いて、リムジンで新宿に向かう。毎度のことであった。その度に車窓から見る日本はなんと綺麗だろうかと感じる。風景には派手な色はなく、落ち着いた色ばかりが見える。そして、何と云っても清潔感が強い印象を私に与える。云い古された事柄だが、ゴミが落ちていない。私だけではなく、外国から戻られた方々は、何方もこのように見えるのではなかろうか。

 以下のホテルは、前回のマダガスカルからの帰りにサイクロンの影響でモーリシャスで足止めされた際、空港からラフィック・アリマモッド氏宅まで送ってもらったタクシーの運転手から紹介を受けた。「モーリシャスに着いたら、夜中だろうと何だろうと、電話を下さい。必ず15分以内に空港に迎えに行きます」と紙に電話番号を書いてくれた。彼は約束を守り、迎えに来てくれ、下の写真にあるようなすばらしいホテルに案内してくれた。シャンドラニ・ホテルは空港から左の方向にあり、下の写真のホテルは右の方向にある。料金はシャンドラニ・ホテルの半分以下だった。残念なことに、ホテルの名前を忘れてしまった。ご容赦願いたい。





 ホテルにチェックインしたときは、朝を迎えようとしていた。だが、例え一時間でも二時間でも寝なければならない。寝不足のままアンタナナリブには着きたくなかった。


 朝食のサービスが終了する直前まで寝てしまった。美味しい朝食だった。シャンドラニ・ホテルのように豪華ではなかったが、心のこもった朝食であった。新鮮な果物と各種のジュースがどれも美味しかった。余計なことかもしれないが、果汁が100%のものだけをジュースと云う。それ以外のものは単なるドリンクとかベバレージと云うのが正しい。日本の「果汁30%ジュース」などの表現は詐欺みたいなものだ。南国に来てうれしいのは新鮮で美味しい果物が食べられ、いつでも絞りたてのジュースが飲めることである。






 午後のアンタナナリブ行のフライトに間に合うように、例のタクシーが迎えに来てくれる。それまでのんびり過ごすことにした。

 「今回は全てのフリッチをアンタナナリブに運んであります」と迎えに来てくれていたジルス・ベド社長がニコニコしながら云った。
 コルベール・ホテルでは私のお気に入りの3階の部屋を用意していてくれた。このホテルのフロントのマネジャーは痩せていて背が非常に高い。どうしたわけか、初めて会った時から私に非常な好意を寄せてくれている。










 ラチラカ元大統領の私邸の庭に大量のフリッチが集められていた。当時のラチラカ元大統領はフランスに滞在しており、この邸宅には留守を預かる使用人だけしか住んでいなかった。


 この庭に生えていた果物の木。何と云う果物か知らないが、実に旨そうに見えた。手の届きそうなところに熟した実がなっていた。一つもいで食べたかったが、我慢した。「あの日本人は意地汚い奴だ」との評判が立つのを恐れたからだ。この「我慢」には非常な努力を要した。元来私は食べ物には意地汚いのである。




 C社長との時もそうであったが、彼等は単純作業であっても実に楽しそうに働く。誰も見ていなくとも手を抜いたりサボったりしない。働きたくない時は堂々と休む。



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4 コメント

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パリに住む元大統領 (Jamco)
2014-08-18 13:48:05
M/Mさん、コメントを感謝します。
作業場がラチラカ元大統領の私邸の庭だと聞いたときは、私も驚きました。而し、庭と云っても日本やイギリスの庭園などと違い、ただの広場でした。それにしても経済が苦しいマダガスカルを離れ、のんびりパリで過ごすなど、考えられません。・
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サイクロンの被害 (Jamco)
2014-08-18 13:42:56
旅好きさん、いつもコメントをありがとうございます。
この時のサイクロンの被害は私が想像していたより大きく、次にマダガスカルに行ったときに、その脅威を目の当たりにしました。被害は東海岸に集中しており、海岸沿いの北に向かう道路は大きく崩れ落ちていました。
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大統領の庭 (M/M)
2014-08-18 10:58:35
ラチラカ元大統領の私邸の庭を作業場に使えるとは驚きです。BIEという会社の実力がうかがえます。
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イスラム教 (旅好き)
2014-08-18 10:44:13
サイクロンですが、噂通りの脅威ですね。
イスラム教もアリマモッドさんほどに緩やかなだと紛争もなくていいです。あの宗教を気に入りました。
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