つぼみな日々

いろんな花の蕾をもっていたい。たくさんの花を咲かせたい。
言葉を紡ぎたい私のブログです。

ザ・テキサスズ

2013-11-12 01:56:31 | 日記
内田勘太郎 with 甲本ヒロト 横浜THUMBS UP
何か月か前、友人が見つけたこのライブ。
チケットを取るのに、会場であるサムズアップに2人で100回くらいコールした。
友人の方がようやく繋がってチケットを手に入れた。

内田勘太郎さんは、調べてみると元憂歌団の人で、木村充揮さんとは同級生らしい。
いくら勘太郎さん主催のライブとは言え、ヒロトをゲストで呼んだら、ヒロトファンで埋め尽くされることくらい分かる。
失礼だけれども、勘太郎さんを知らずに、ブルースが好きでなかったりなんかしても、チケットは当たり前のようにSOLD OUTだし、ライブ中の目線だってほとんどヒロトに持って行かれるだろうことだって分かっていたと思う。
そういう私も間違いなく、そういう一人だ。

ライブハウスでレストランで、アメリカンな感じがするハンバーガーのお店。
これについての夢は見なかったけれど、想像通り、薄暗くて湿気た感じのテーブルとイスを、今日のためにでき得る限り詰め込みましたといった満席具合。

私たちは、ライブが始まる前に、気を持って行かれても食べれそうなもの、という観点でフライドポテトとピザを注文する。
あとは定番になったハイネケンを、グラス持ってきてくれたにも関わらず瓶のまま。

いつものクロマニヨンズのライブも近い時はあと何メートルかという感じだけれど、やはり視界はものすごく限られているし、ステージを見上げている。
それが今日はあと2メートルという距離で、ほんの30センチほどの段差があるだけのステージ。

ヒロトは謙虚な笑顔で出てきた。
勘太郎さんや憂歌団のブルースの曲をたくさんやる。
勘太郎さんのソウルフルなアコースティックギターと、ヒロトの力強い歌とちょっぴり切ないブルースハープ。

アコースティックギターってこんなに強い音が出るのか。
ヒロトってこんなに歌上手だったのか。

生演奏を見ると、齧るだけでもギターをやって良かったと心から思う。
そういえば、私はヒロトが歌が上手いとかそうでないとかいう観点で曲を聴いたことが今までに一度もなかった。

ライブ中は飲み物も飲まず、食べ物を食べず。
大方ヒロト、時々勘太郎さんに目をやる。

勘太郎さんの作るブルースは、男子感に溢れていて、物事を斜めから見ているような、それでいて今行くのさという熱さもあって。
スライドバーを使いながら弾く強めのギターは、ヒロトの声とよく合っていた。

後半、いきなり始まった「ラブレター」
河ちゃんのコーラスが印象的なあのブルーハーツの曲。
あまりに唐突にそれが始まって、心臓がバクバクした。
自分の胸を自分でつかみながら、ぼろぼろと涙が出た。
泣いているという認識はあまりなくて、次から次へと涙だけが溢れ出た。
なぜかわからない、曲はたぶんどれでも良かった、ただブルーハーツ時代にヒロトが作った歌を、ヒロトが歌った、それだけで良かった。

すごい瞬間だった。

今日ヒロトはいつもに増して“はだか”を見せることがなかった。
一度も、こんなに近い客席のお客さんと目を合わせることがなかった。
別にどんなでもいいけれど、道化師みたいなヒロトを凝視するのは、申し訳ないような切ないような気分になる。
道化するのは、きっといつかから自分の意図しないところまで祭り上げられてしまった自分の存在を、何とか正常に保つために得た方法なのだろうなとか思う。

「ブルースはみんな同じ曲。それを作曲なんて言っちゃって」と勘太郎さんは言う。
それでも大量にブルースの曲を作る、演奏する。
いいじゃないか、それで。

勘太郎さんの奥様が寝ている子供を胸に抱いてCDを売っていた。
今日やった曲が入っているCDを1枚買って、心がぱんぱんのまま電車に乗る。
受けたことがあまりに大きすぎて、特に「うれしいうれしいうれしいうれしい」みたいな状況ということでは全然ない。
全然言葉にならない、ただ心がぱんぱん。
こんなふうになったのはいつぶりだろう。
クロマニヨンズのライブでもこんなふうにはならないのだ。

友人は4時か5時起きという早番の仕事の日で、帰りの電車で寝そうだった。
私は今日からフリーターで、11時に起きたものだからなんだか自分が悪いことをしているような気分になった。

2人とも、あまりにお腹いっぱいで消化不良を起こしていたのでいつもよりもスローペースで時々ヒロトを思い出して浮いてしまう脳を少し押さえつけながら喋っていた。
いつも横浜は遠い、と思いながら電車に乗っているのだけれど、行きはそうだったけれど、帰りはすぐだった。
最後にしていた話が面白すぎて、日付が変わろうとする頃、私たちは地下道で大笑いしながら歩いていた。
行く先を堂々と間違えながら。

ほっといてくれ、好きなんだから。
と、すっかり冬の匂いのする風の中を、ストールを手繰って自転車で帰る。