Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルトの繰り返しについて 2(No.1649)

2009-05-21 21:41:48 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
楽譜印刷にはミスは付きものである(爆
過去にプロデュースした他の作曲家の実例を挙げてみよう。

  1. 2度で書いた2つの音符を「1ヶ」に見間違われて1音抜けた(← 伊福部昭「日本組曲」第4曲。伊福部昭先生本人からはっきり聞きました!)

  2. 5線よりも上の音を「1本本数を誤って少なく書いた」(← モーツァルト)

  3. 「64分音符」を書いている内に、「32分音符」と勘違いされた(← リスト)


などなど。基本的に「印刷屋の視点で見た時に、自筆譜が綺麗でない」ことに起因することが多い。モーツァルトの自筆譜は(ベートーヴェンほどではないが)乱雑なことがある。今も「自筆譜の解釈」で演奏家が全く異なる演奏をすることがある。シューベルトは自筆譜は綺麗に書く方であり、「縦の線」が合っていることは他の作曲家に比べて極めて正確である。それでも「印刷屋の視点で見た時に、自筆譜が綺麗でない」だったようだ(爆

 その他の原因として1つだけ追記しておけば

多発する印刷ミスの1つ = ト音記号とヘ音記号 の書き漏れ


もここに指摘しておこう。新シューベルト全集にもいくつもある。ニ長調ソナタ D850 作品53 にも存在しており、佐伯周子 が「ここが変なのだから、きちんと調べておいてほしい!」と私高本に断固抗議されたモノだ。


 シューベルトにもこの類の「印刷ミス」はある。しかし、シューベルトにとって(出版社とのトラブルではなく)印刷技術者とのトラブルは「繰り返し」の問題であった。
 「印刷技術者の眼」から見ると

シューベルトの曲はあまりにも「繰り返し」が多く、集中力が途切れる


が原因だろう。ピアノソロ曲の大曲3曲は全て被害に遭っている!(爆

  1. 「さすらい人」幻想曲 作品15 D760 : 第244小節2拍目の左手D音のナチュラルを印刷されなかった(印刷屋の目では「同じような黒々としただけの箇所」)

  2. イ短調ソナタ 作品42 D845 : 第2楽章で「第45小節後半~第49小節前半」がカットされた!(← 本当の話。確かに繰り返しばかりのところだ)

  3. ニ長調ソナタ 作品53 D850 : 第1楽章第57小節を「初版では繰り返し」で印刷、第4楽章201小節を「旧シューベルト全集では繰り返し」で印刷、と2度に亘り被害に遭う


が実績。う~ん、私高本自身は「シューベルト寄り」の姿勢だから、印刷屋を非難したいのだが、老眼も進行した現在「私高本が印刷したら正確無比な印刷ができるか?」と問い糾されると、確信を持って返答できないくらい「繰り返しが多い」箇所ばかりで問題が発生している。

他の大作曲家ではこの手の「小節数問題」は、ほとんど発生していない


ことからも「シューベルトの繰り返し好き」は裏側から実証されるのである。演奏家サイドから見ると「演奏ミスが発生し易い作曲家 = シューベルト」である。印刷屋がミスし易い箇所 = 演奏家がミスし易い箇所 ですから。
 佐伯周子 は、「難しい繰り返しの箇所」は難無く弾くのが1つの演奏の特徴。「簡単な曲の簡単な箇所」の方がむしろミスが出る。D894、D850、D840 での名演は素晴らしい。「楽興の時」も「全曲演奏」の時は集中力が高まるのかも知れない!
コメント
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