20才「ピアノソナタの年」を締め括る傑作 ヴァイオリンソナタ イ長調D574
シューベルト20才の1817年は、D537, D557(2稿),D566(2稿以上ある), D567(5稿あるが、D575前は2稿), D459A, D664, D571, D575 と8曲のピアノソナタを作曲した。その前の3曲 D157(2稿), D279(2稿), D459 と違い、楽章構成も多種多様。シューベルティアーデの仲間の前で、披露されながら作曲された。
D575 のお披露目の後で、前年(1816年)に作曲された ヴァイオリンソナタ3曲(D384, D385, D408)と同じ構成の曲の要望が「シューベルティアーデ」から持ち上がったのだろうか? 突如、1曲だけ ヴァイオリンソナタ が作曲された。前3曲よりも大きな構成を持つことは従前から広く知られており、「大二重奏曲」の名前も有名。だが次の重要な事実を指摘した文書は目にしたことが無い。
ヴァイオリンソナタ イ長調D574 のデュナーミクは ppp←→ffz であり、これは ピアノソナタ イ短調D537 が初めて到達した巾広いデュナーミクであり、シューベルト史上2回目!
シューベルトの ffz は、「fffよりは小さく、ffよりは大きい」である。シューベルトが初めて fff に到達するのは 1822年の「さすらい人幻想曲」作品15D760 なので、当分先となる。それまでのピアノソナタに於いて ffz は出現しない。ヴァイオリンソナタ に至っては、この D574 が最後の作品となる!