Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

俣野修子ピアノリサイタル「シューベルト」2014.10.18 批評(No.2397)

2014-10-18 23:48:06 | 批評

シューベルトの「歌」心を極めて強調した 俣野修子


  D915, D780, D960 のプログラミング。このプログラムで ピアノソナタ変ロ長調D960 の第2楽章とアンコール シューベルト/リスト 「美しき水車小屋の娘」第19番「粉屋と小川」D795/19 に拠るトランスクリプションS565/2 に最も重きを置いたプログラムとは、想像だに付かなかった。
 俣野修子自筆のプログラムノートには『ピアノ曲でありながら室内楽的書法が随所に見られるシューベルトの内省的なピアノ作品に、この5年間で得られた室内楽的観点を添えてお届けしたい』と明記されているが、

俣野修子は『偉大なテノール歌手 + 忠実な伴奏ピアニスト の共演』スタイルを貫く


  主旋律はいつも朗々と歌われ、伴奏ピアノは決して出しゃばらない。冒頭のアレグレットD915 から最後の最後までこのスタイルは一貫していて、統一感は極めて強い。曲内、楽章内 のテンポは基本的に大きく揺れず、唐突感は全く無い。ソナタ形式の曲では第1主題と第2主題、3部形式の曲では主部と中間部は「対比」よりも「協調」が優先されるので、極めて繋がりが良い。反面、スケールの大きさは求めない。そして、D780/5 や D960/3 のような Allegro vivace の曲(楽章)までも主旋律が歌い上げることの出来るテンポまで落とす。そして D960/4 コーダの「Presto」もほんの少々テンポを上げただけだったので、「切り替え」はほとんど生じない。
 基本路線は「歌い尽くす」であり、趣味の良さがプログラム全体を覆うので、耳に心地良い。但し、シューベルトのもう1つの魅力 = リズム感が前面に出る = 特に 弦楽四重奏曲などで顕著 は内に篭って表面に出て来ないので、D960/1 の第1主題が確保される時に伴奏音型が3連符に刻まれて高揚して行くフレーズなどは隠して演奏され、第1楽章は「第2楽章の長い前奏曲」のように聴こえたことが印象的だった。

 尚、自筆プログラムノート には、楽興の時【作品780】と明記されているが、780 はドイチュ番号であり、作品番号は94。正確に記載してほしいモノである。
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