十数年間の
母の介護の思い出に浸っていると突然
吹いてゆく風のそのなか
ぼくを呼ぶ母の声がしたような気がした
立ち止まるばかりだった季節の
みどりしたたる
ぐるりの山並みの真ん中で
それから
だまし討ちみたいに
ボーナス直前に告げられて
会社をクビになった秋が
駆け足で木の葉を散らせ
最愛のきみの死の知らせが
吹雪といっしょにやってきた
ついにはぼくも
立ち尽くすしか能がない
一本の折れやすい棒切れになってしまう
季節外れのトンボにさえ
首を傾げられながら
気がつくと
この世界はいつの間にか
棒のような影と
影のような言葉が行き交う
まるでみたこともないような
硬直した多面体
母の介護の思い出に浸っていると突然
吹いてゆく風のそのなか
ぼくを呼ぶ母の声がしたような気がした
立ち止まるばかりだった季節の
みどりしたたる
ぐるりの山並みの真ん中で
それから
だまし討ちみたいに
ボーナス直前に告げられて
会社をクビになった秋が
駆け足で木の葉を散らせ
最愛のきみの死の知らせが
吹雪といっしょにやってきた
ついにはぼくも
立ち尽くすしか能がない
一本の折れやすい棒切れになってしまう
季節外れのトンボにさえ
首を傾げられながら
気がつくと
この世界はいつの間にか
棒のような影と
影のような言葉が行き交う
まるでみたこともないような
硬直した多面体