詩人PIKKIのひとこと日記&詩

すっかりブログを放任中だった。
詩と辛らつ日記を・・

初夏

2006年04月16日 | Weblog
十数年間の
母の介護の思い出に浸っていると突然
吹いてゆく風のそのなか
ぼくを呼ぶ母の声がしたような気がした
立ち止まるばかりだった季節の
みどりしたたる
ぐるりの山並みの真ん中で

それから
だまし討ちみたいに
ボーナス直前に告げられて
会社をクビになった秋が
駆け足で木の葉を散らせ
最愛のきみの死の知らせが
吹雪といっしょにやってきた

ついにはぼくも
立ち尽くすしか能がない
一本の折れやすい棒切れになってしまう
季節外れのトンボにさえ
首を傾げられながら

気がつくと
この世界はいつの間にか
棒のような影と
影のような言葉が行き交う
まるでみたこともないような
硬直した多面体