自動車雑誌VAGUE(ヴァーグ)によると、『世界4位の自動車グループ「ステランティス」始動! 販売台数で語る時代は終わった!?』という。』自動車業界、業態が変わりつつあり、EV 製造では異業種参入で、思いもよらない車が誕生し、市場を一変する可能性がある。
FCAとグループPSAが合併して、世界4位の自動車グループが誕生した。両社の合併により、保有するブランドは、イタリア・米国・フランス・ドイツ・英国の5か国にも及ぶことになった。この合併による狙いをモータージャーナリスト山崎元裕氏が考察する。
世界4位の自動車グループが誕生
「ステランティス」という自動車メーカーの名前を聞いても、まだほとんどの人は馴染みがないだろう。ステランティスは、2021年1月16日に合併手続きを完了して発足したもので、欧州とアメリカにまたがるFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)とグループPSAが統合して誕生した自動車グループである。
両グループが合併の方針を公表したのは2019年10月のことであるので、実に1年以上の時間を投じて、この合併へのプロセスは進んだことになる。
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PSAグループとFCAが対等合併して、世界4位の自動車グループ、ステランティスが誕生。それぞれのロゴは残すという。
それでは新たに誕生するステランティスは、どれほどの規模の自動車メーカーになるのだろうか。ステランティスは、VWグループ、トヨタ自動車、そしてルノー・日産・三菱アライアンスに続く、世界で第4位の規模となった(※注:2019年の統計による)。
ステランティスのCEOを担うことになるカルロス・タバレス氏は、今後の最重要課題は生産能力の適正化、つまり現在過剰となっている生産能力を絞ることと、中国市場の立て直しにあると考えているようだ。
しかしその一方で、工場閉鎖を伴わない合併を実現することも主張しており、コストダウンは年間37億ユーロ(邦貨換算約4640億円)を可能にすると見込んでいる。
生産台数を適正な台数にまで絞り込み、経営の立て直しを狙う策は、ルノーもまた同様である。すでに生産台数が自動車メーカーの価値を決める時代は終わりを迎えているのかもしれない。
●生産台数の多さで語る時代は終わった
これからの自動車産業は、いかに強力なアライアンスを構築し、プラットフォームやエンジンなどの共通化などを効率的に図ることで、コスト重視の経営をおこなっていくことが重要になるようだ。ステランティスはまさにその象徴的な存在となるだろう。
この大きな傘の下に、どれだけのブランドが存在するのかを考えれば、これからさらに各々のブランドがともに成長を遂げていく姿も十分に想像できる。FCAは、イタリアの「フィアット」「アルファ ロメオ」「アバルト」「マセラティ」「ランチア」と、アメリカの「クライスラー」「ジープ」「ラム」「ダッジ」のブランドを有しており、グループPSAは、フランスの「プジョー」「シトロエン」「DS」のほか、ドイツの「オペル」と英国の「ボクスホール」を有している。
ステランティスは1月18日にイタリア証券取引所、およびユーロネクスト・パリで普通株式の売買がおこなわれ、1月19日にはニューヨーク証券取引所に上場した。
19日にはタバレスCEOとジョン・エルカン会長が、証券取引所で鐘を鳴らす恒例のセレモニーに参加。ちなみに、合併完了後は、グループPSAの株主はPSA1株当たりステランティスの1.74株、FCAの株主はFCA1株当たりステランティスの1株を受け取ることになった。
ステランティスの名の由来は、ラテン語で「星の光で輝く」ことを意味する「ステロ」とのこと。その成功を大いに期待したいところだ。
更に東洋経済紙によると、
●経営統合のPSAとFCA「中国事業」の立て直し急務(2020年の中国販売台数は両社とも大幅に減少)
欧米の自動車大手のグループPSAとフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は1月5日、前日に開催された双方の臨時株主総会で両社の経営統合が正式に承認されたと発表した。
PSAとFCAは2019年10月に経営統合計画を打ち出し、準備を進めてきた。双方の対等出資で設立される新会社の名称は「ステランティス」。経営トップは会長職にFCAの現会長のジョン・エルカン氏が、CEO(最高経営責任者)職にPSAの現CEOのカルロス・タバレス氏が就任する。
経営統合後のステランティスは、傘下にプジョー、シトロエン、オペル、クライスラー、ジープ、フィアット、アルファロメオ、マセラティなど14ブランドを擁する多国籍自動車メーカーとなる。統合による規模拡大をテコに経営効率を高めるとともに、自動車の電動化や自動運転技術の開発を加速する計画だ。
だが新型コロナウイルスの世界的大流行により、ステランティスは多難な船出を迫られている。PSAとFCAはどちらも欧州市場への依存度が高く、防疫対策のロックダウン(都市封鎖)の影響などで販売が大きな打撃を受けているためだ。PSAの2020年1~9月のグローバル販売台数は前年同期比37%減少。FCAの販売台数も前年比3割落ち込んでいる。
新会社の規模は世界第6位に後退も
2019年に経営統合計画を発表した時点では、PSAとFCAはフォルクスワーゲン(VW)、トヨタ自動車、ルノー・日産自動車・三菱自動車の連合に続く世界第4位の多国籍自動車グループの形成を目指していた。だが2020年1~9月の販売実績で比較すると、統合完了後のステランティスの規模は世界第6位に後退する可能性がある。
そんなステランティスにとって急務といえるのが、世界最大の自動車市場である中国での事業立て直しだ。FCAと広州汽車集団の合弁会社である広汽フィアット・クライスラーの2020年1~11月の販売台数はわずか3万5300台で、前年同期比44.65%も減少した。
PSAと東風汽車集団の合弁会社である神龍汽車の状況はさらに悲惨だ。同社はピークの2015年には70万台余りを販売したが、その後は凋落に歯止めがかからなくなっている。東風汽車集団が2021年1月5日に公表した速報値によれば、神龍汽車の2020年の販売台数は前年比55.7%減の5万台にとどまった。
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