東洋経済が、評論家野口悠紀夫さんの、『中国発コロナで世界が未曽有の危機に』解説を載せていたが、まさしく、中国発信の新型コロナ災禍で中国がさまざまな意味において、世界を大きく撹乱しています。
2019年12月に中国武漢で発生した新型コロナウイルスが、その後瞬く間に世界各国に広がりました。
各国は、外出規制や外出禁止措置など、いままでなかった対応を取らざるをえなくなり、経済活動が急激に縮小しました。
現在のところ、ワクチンも治療薬も開発されていないため、この状態がいつまで続くのか、どのように収束するのか、まったく見通しがつかない状態です。
世界は、第二次世界大戦以降初めての、大きな危機に直面しています。
コロナウイルスの感染拡大とその後の経緯に関連して、中国という国家の特異性が浮かび上がりました。
感染の初期の段階で、中国当局は、疫病の発生という都合の悪い情報を抑え込もうとしました。勇気ある医師の告発も、デマであるとして処分の対象とされ、葬られてしまったのです。
このようにして、中国は初期段階での感染封じ込めに失敗しました。
こうなったのは、中国の中央政府・共産党の力が強すぎて、武漢市という地方政府が自らの判断で情報を発信したり対処したりすることができなかったからです。
事態を真剣に把握し、早期に移動の禁止等の立場を取っていれば、感染はこれほど拡大しなかったと考えざるをえません。これは、中国の強すぎる中央集権的権力体制の負の側面を示しています。
しかし、その後の対応ぶりには、中国の強い権力体制があったからこそ可能になったと考えられる側面が見られます。
強権国家ゆえにできたこと
人口1000万人以上の大都市を即座に封鎖したり、わずか10日間で病院を建設したり、人々の移動を強制的に停止したりするなどの措置が取られました。
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さらには、AIとビッグデータを用いて、感染状況をスマートフォンで個別に判断できるアプリも開発され、多くの人々に使われました。
このような強権的な対策の結果、3月下旬には中国における感染状態が抑えられたようです。4月上旬には、武漢およびその周辺地域の封鎖が解除され、経済活動が再開されました。
ところが、アメリカやヨーロッパなどの自由主義国では、新型コロナの爆発的な感染拡大が起こり、イタリアやスペインでは医療崩壊の状況に陥っています。
こうした状況を見ていると、「疫病を抑えるためには、中国に見られるように人権を無視した強権的な政策が必要ではないのか?」という考えを否定できなくなってきます。
「自由か、それとも強権による管理か?」という古くからある問題に対して、極めて深刻な新しい事実が突きつけられていることになります。
自由か、強権による管理かという問題は、コロナ以前から、中国において顕在化していたものです。それは、 AIやビッグデータとの関連において、問われてきました。
例えば、電子マネーの使用実績から個人の信用度を測定する信用スコアリングが、数年前から中国で実用化されています。また、顔認証の技術も発達しており、店舗の無人化などが可能になっています。
こうした技術によって、これまではできなかった経済取引ができるようになっていることは事実です。これは、明らかに望ましい動きです。
しかし、公権力がこうした技術を用いることの危険もあります。警察や公安が、顔認証の技術を用いて犯人の検挙を行っていると言われます。また、信用スコアリングが、本来の目的である融資の審査以外にも用いられるようになっています。
これらの技術は、悪用されれば、権力が国民の生活を思うままにコントロールする道具になってしまうのです。中国ではこの数年、こうしたことが進展しつつありました。
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