NationalGeographyがアメリカは現在の白人主流社会から、ヒスパニック社会になると報じていた。
米国の国勢調査局の予測では、2044年までに非ヒスパニック系白人が人口に占める割合は50%を割る。米国の人種間の関係と白人の地位が変わるのはほぼ確実だ。
米国では長年、人種について考えることは白人以外の人々の地位や苦境に目を向けることを意味していた。米国社会は基本的に白人社会であり、ほかの人種・民族グループは社会の周辺に押しやられた人々で、人種問題は彼らが直面する問題だと考えられていたのだ。ところがオバマ前大統領からトランプ現大統領の時代にかけての最近10年ほどで状況が変わり、白人の立場の問題が注目されるようになってきた。
「数で負けている」
米国ペンシルベニア州東部のヘイズルトンは、斜陽の町だった。炭鉱が相次いで閉鎖され、工場の雇用がなくなり、人口は減る一方。しかし、町の経済が落ち込んでも、毎年秋に行われる恒例の祭りでは、目抜き通りに住民たちが繰り出していた。
祭りのパレードに長年欠かさず参加していたという53歳のサリー・イエールが、祭りの話に目を輝かせた。町を出たかつての住民たちも戻ってきて沿道を埋め、パレードに喝采を送る。「それに食べ物」とイエールはうっとりした表情を見せた。イタリア・シチリア島の伝統菓子カンノーリや東欧料理のピエロギ、ソーセージ。かつてこの地に移り住んだヨーロッパの人々が持ち込んだ味だ。
しかし、祭りは一変した。イエールに言わせれば、今の祭りは怖くて、とても参加する気になれない。ぶしつけな言い方をすれば、褐色の肌をした人たちの祭りになったという。「公共のイベントに行くと、数で負けていることを痛感させられるわ。それでも行く気になる?」
イエールの場合、答えはノーだ。
数で負けている――この町の白人住民と話していると、何度も耳にする表現だ。病院の待合室はヒスパニック(中南米系の人々)が大多数。スーパーマーケットに買い物に行けば、レジ係がスペイン語で陽気におしゃべりしている。
「笑い事じゃないんです」
傾いていた町を活気づけたのはヒスパニックの流入だった。2000年にはヘイズルトンの人口2万3399人の95%が非ヒスパニック系白人で、ヒスパニックは5%足らずだったが、2016年までにはヒスパニックが人口の52%を占める多数派になり、白人の割合は44%に減った。
「冗談めかして『今やこっちがマイノリティー(少数派)だね』と言っていますよ」と話すのはバーテンダーのボブ・サッコだ。彼が働くバー「A&Lラウンジ」がある通りには、ヒスパニックが経営する店舗が軒を連ねる。「彼らが町を乗っ取ってしまった。私らは冗談にして笑っていますが、本当は笑い事じゃないんです」
ヘイズルトンで起きていることは、白人が多数派の地位を失う将来の米国の縮図なのである。
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