先端技術とその周辺

ITなどの先端技術サーベイとそれを支える諸問題について思う事をつづっています。

欧州宇宙開発機構のアルマ赤外線望遠鏡がまた新たな謎を発見

2018年04月14日 15時32分53秒 | 日記

ワイ金までの星の誕生は 

 

最近までの星の誕生は、全ての銀河には巨大なホールがあって、ブラックホールがj電離したガス流を噴出し、電離ガス流から星や分子が生成されるというものであった。ところが日本と台湾の研究者が、ブラックホールの中心に一酸化炭素からの光を発見したという。まずは、現在の研究をサーベイしてみよう。

銀河と超巨大ブラックホールの共進化

宇宙の基本的な構成要素である銀河が、いつ・どのように形成され、成長していったのかを解明することは、現代天文学における最重要テーマの一つで、最近の研究から、ほぼ全ての銀河の中心部には太陽の数十万倍から数億倍もの質量を持つ「超巨大ブラックホール」が潜んでいること、しかもその質量は銀河の質量と強い正の相関を示すことが分かってきた。これは、銀河とその中心に潜む超巨大ブラックホールがお互いに影響を及ぼし合いながら成長してきたこと (「共進化」と呼びます)を示唆しているという。銀河進化の全貌を正しく理解するためには、超巨大ブラックホールがどのような物理過程を経て銀河全体に影響を及ぼし、共進化するのかの解明が必要になっている。。

超巨大ブラックホールからの放射が銀河に及ぼす影響

銀河と超巨大ブラックホールの共進化の鍵を担う現象の一つとして、近年、超巨大ブラックホールからのガス流がある。これは、超巨大ブラックホールが存在する銀河中心部からの強力な放射によって周囲のガスが電離化されて吹き飛ばされる現象。このガス流が、星の材料となる周囲の分子ガスを圧縮して星形成活動を促進したり、逆に分子ガスを拡散させて星形成活動を抑制したりする。

塵に覆われた銀河 (Dust-obscured Galaxy: DOG)

塵に覆われた銀河(Dust-obscured galaxy: DOG) をみると、この天体は可視光では極めて暗いにも関わらず、赤外線で明るいという特徴がある。そして、これらの銀河の中心には非常に活動的な超巨大ブラックホールがそんざいしている。特にWISE1029+0501(以下WISE1029) と呼ばれるDOGは、超巨大ブラックホール近傍からの強力な光によって周囲のガスが電離されるだけでなく、毎秒約1500キロメートルというもの凄いスピードで銀河から流れ出す電離ガスが確認されています。電離ガス流が確認された他の銀河でもその速度は毎秒数百キロメートル以下ですので、このDOGで確認された電離ガス流は非常に激しいことが分かります。従って、WISE1029は超巨大ブラックホール起源の電離ガス流が周囲の分子ガスにどのような影響を及ぼすのかを調べるための最適な天体と言えます。しかし、この天体は50億光年彼方にあるため、分子ガスが放射する微弱な電波を検出し、分子ガスの運動の様子などその詳細を調べることは従来の電波望遠鏡では非常に困難でした。

アルマ望遠鏡で明らかになった分子ガスの様子

日本と台湾の研究チームは、アルマ望遠鏡を用いてこの銀河WISE1029 の一酸化炭素分子と低温の塵とが放つ電波の観測。その結果、わずか1時間ほどの観測にも関わらず、一酸化炭素および低温の塵が放つ電波を捉えた。さらに分子ガスの激しい運動は見つからず、星形成活動の促進の様子も抑制の様子も確認できないという事が分かったという。このことは、WISE1029に潜む超巨大ブラックホール起源の強力な電離ガス流が周囲に特別な影響を及ぼしていないことを示唆しています。

WISE1029-alma-2018

アルマ望遠鏡によって検出されたWISE1029中に存在する一酸化炭素からの電波(左図)と塵からの電波 (右図)。各画像の視野は約3秒角。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Toba et al.

研究チームは、このような状況を生み出す可能性の一つとして、電離ガスの流出方向が分子ガスの存在領域と大きく異なっていることを挙げています。分子ガスは銀河の円盤部に存在すると考えられるため、例えば電離ガスが円盤とほぼ垂直方向に吹き出していれば今回の結果は説明できます。
 

WISE1029-ArtistsImpression

今回の観測をもとに描いた銀河WISE1029の想像図。銀河中心部から電離ガス流が激しく噴き出しているが、銀河円盤と垂直の方向に流れ出しているため、円盤内の分子ガスに影響を与えていない様子を表現しています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

 

これまで、超巨大ブラックホール起源の電離ガス流が周囲の分子ガスにも大きな影響を与えている報告は多数ありましたが、今回のように激しい電離ガス流と分子ガスがお互いに影響を及ぼし合っていない様子が捉えられたのは非常に珍しいことです。これまでの研究では、超巨大ブラックホールからのガス流が周囲の分子ガスや銀河の星形成活動に何らかの影響を与えていることが当然のように考えられていましたが、その例外を発見したという今回の結果により、超巨大ブラックホールと銀河の共進化の謎がより一層深まったと言えます。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿