MSが2017年にリリースされたTeamsは、チームでさまざまなコンテンツを共有しながら、チャットや音声、映像を駆使した会話ができる環境を提供するコラボレーションツール。同様なことはSlacksとかあるいはSkype などでも出来るが、Office製品を持つMSの強みで、Teamsが市場を占有し始めた。
Teamsとは ? 同じMSのYammerやLinkedInとの使い分けは?
Slackなど他社のチャットツールとどう違うのかというと、Office 365をはじめ、連携可能なサードパーティー製アプリの情報をTeamsの画面を通して呼び出す「ポータルサイト」のような活用ができる。実際にTeamsは、「Microsoft 365」や「Office 365」を導入している企業がその恩恵を受けやすい。
Microsoftが提供するその他のコミュニケーションツールとはどうすみ分けるのか。同社はTeamsの他にも「Yammer」や「LinkedIn」などのツールを提供しているが、それぞれ適したシーンが異なる。これは、ナデラ氏が社内および社外と、どのツールを使ってコミュニケーションをしているかを見ればイメージが湧きやすい。
MSは、10人単位の経営陣との詳細なやりとりは電子メールを活用し、全社に向けて方針などをメッセージアウトする際はYammerを用いる。さらに、社外に対しては、LinkedInを使ってメッセージを発信するというように使い分けている。
一方、Teamsは、部や課といったチーム単位、複数のメンバーが関わるプロジェクト単位でのコラボレーション&コミュニケーションに適しており、直接業務のやりとりが発生する経営陣間および、役員・管理職レベルの200人の従業員、社長室の従業員とのコミュニケーションで活用される。個別の詳細なやりとりをするのではなく、必要な情報にチームが簡単にアクセスできる状態、いわゆる情報に透明性を持たせたい場合に、Teamsを用いるようだ。
Teamsでは何ができるのか?
Teamsはチーム単位およびプロジェクト単位でチャネルと呼ばれるコミュニケーションスペースを作り、チャットや音声電話、各種ファイルの共有を通じて作業を進める。このチャネルがいわゆる「ポータルサイト」の役割を担い、前述したように「Office 365の機能とそこに格納された情報」も自由に呼び出せる。
メリットは、従来であれば、案件ごとにチームサイト、必要な業務アプリ、メール、電話、各ファイルといった必要なリソースにアクセスしなければならず、コミュニケーションが煩雑になる。一方Teamsは、A社案件、B社案件、社内関係者プロジェクトなど、プロジェクト単位のポータル的なUIが立ち上がり、そこから必要なアプリの機能やファイルにアクセスして統合的に利用できる。
例えば、「お花見」を開催するためのプロジェクトに基づいて、チャネルを作成したとする。メンバーは、1対Nまたは1対1のチャットで相談を進めつつ、Teamsの画面で当日のアジェンダを記したExcelファイルを共有し、チーム全員にその情報を周知できる。もちろん、Teamsの画面でリアルタイムにファイルの共同編集をすることも可能だ。
チームメンバーの予定を押さえたい場合は、Teamsから「Microsoft Outlook」のスケジュール表を呼び出し、日付から参加者をアサインして予定を周知すればよい。他にも、お花見当日までの「場所取り」「食料調達」といった役割分担と、各担当者が「いつまでに何をやるか」のTo Doリストを設定すれば、タスクの進捗を皆が把握できるようになる。このときバックグラウンドで機能しているのは、タスク管理ツールの「Microsoft Planner」だ。
上記した「会話」や「Excel」「スケジュール表」「タスク」などの機能は、チャネル画面にタブメニューを作成することで、クリックしてすぐ呼び出せるようになる。タブの追加や名称の変更は必要に応じてカスタマイズすればよい。
なお、「お花見」プロジェクトで紹介した機能は基本的なものだが、春日井氏はTeamsで利用できるアプリとして“社内版YouTube”のような「Microsoft Stream」や統合開発環境「Visual Studio」といったMicrosoftのツールを紹介した。サードパーティー製のアプリケーションも連携可能で、エンジニアを中心に普及している「GitHub」や、Adobe Systems製品はその一例として挙げられた。その他連携アプリを確認したい場合はこちらのWebサイトに表示されている。
画像認識技術が生きるTeamsのビデオ会議
MicrosoftがTeamsの機能の中でも力を入れている分野がビデオ会議だ。取材当日は、日本マイクロソフトの品川オフィスから、テレワーク先で勤務しているインタビュイーとビデオ会議を行いながら、その特徴を聞いた。
特筆すべきスペックとして紹介されたのが、背景ぼかし機能。画像認識技術を用いて顔以外の背景を自動的にぼかす機能で、在宅ワークであれば部屋の様子などプライベートな部分を見せないようにしたり、社内外でのミーティング時に機密情報が見えないようにしたりできる。今後は、背景をぼかすだけでなく、南の島など好きな景色を設定したり、会社のロゴや製品を表示させたりといった使い方も予定している。
ビデオ会議を進めながら画面共有機能を使えば、ファイルの共同編集も可能だ。手書きの良さが生きるホワイトボード機能も用意されており、相互にアイデアやイラストを書き込んでブレストできる。一般的なビデオ会議システムにおいては、リモート参加者は会議室のホワイトボードを見るだけになり、孤立を感じることも少なくないため、作られた機能だという。
今回、テレワーク先のインタビュイーは日本マイクロソフトの方だったが、Teamsのアカウントを所有していない社外の人物と会議をする場合も、無償アカウントを作ってチャネルに招待できる。Teamsには専用のクライアントアプリがあるが、Webブラウザでも利用できるため、わざわざアプリのインストールをしたくない場合も便利だ。スマートフォンやタブレットでの利用を想定し、iOSやAndroid専用のアプリを用意しているので、出先で気軽にTeamsを使いたいというニーズにも応える。
Teamsを取り巻く動向
Microsoftは日々Teamsのアップデート情報を発表している。例えば、2019年4月には大規模グループ向けのメッセージングサービス「Microsoft Kaizala」をTeamsに統合すると発表した。Kaizalaは、電話番号だけで気軽に認証できるサービスで、モバイル端末での利用を想定している。主要ターゲットはファーストラインワーカー(店舗、流通、建設、製造、病院などの現場の最前線で活躍する従業員)で、統合が実現すればTeamsのターゲットを広げるきっかけになるだろう。
さらに先日は、日本マイクロソフトとソフトバンクが戦略的パートナーシップを結ぶことが明らかになり、8月1日付でソフトバンクがTeams向けに音声通話サービス「UniTalk」の提供を開始すると発表された。
UniTalkは、1人当たり月額800円(税別)で、Teamsから固定電話番号(0AB-J番号)を使って発着信できるサービスだ。ユーザーはオフィスでも外出先でもPCやタブレット、スマートフォンを使って、「03」「06」などの市外局番から始まる電話番号を使えるため、「顧客対応には常に固定電話番号を使いたい」というニーズにも応えられる。また、オフィスにおける固定電話機の設置や電話回線の引き込み、宅内工事が不要で、設備の運用や管理負担を大幅に改善できるとしているため、Office 365のエンタープライズ向けアカウントを調達するという条件をクリアできれば、小規模事業者の利用も考えられる。
Teamsに移行する際のコツ、方法は?
Teamsは、容量や管理監査機能などに制限が付いた無料版を利用できる他、従業員規模300人以下を対象としたOffice 365のBusinessプランのうち上位プラン2つ、または大企業向けプランのうちOffice 365 E1以上のEnterpriseプランを契約すれば、活用可能だ。
冒頭で述べた通り、現在MicrosoftはSkype for Businessを500ユーザー未満で利用する企業に自動アップグレードを提供している。現時点では、500ユーザー以上の大規模テナントや、Skype for Business Online単体サービスを利用するテナントは対象外だ。自社が対象かどうかは、Microsoft Teams 管理センターダッシュボードで確認できる。今後、状況によって対象条件が変化しないとも言い切れないため、Skype for Businessを利用している企業は前もって切り替え準備を行うことも視野に入れたい。
また、現在Skype for Businessを利用している場合も、他社のコミュニケーションツールを利用している場合も、Teamsに移行して「チームにおけるコラボレーション」の効果を得るためには、従業員にツールを定着させる必要がある。春日井氏によれば、導入を成功させている企業は、営業やマーケティング部門など一部の部門で利用を開始して、戦略的に利用範囲を広げているという。まずはスモールスタートでTeamsを活用し、「この機能が便利」などとアドバイスできるような“インフルエンサー”が生まれると、組織全体にTeamsが浸透しやすい。
コミュニケーションツールを導入する多くの企業では、「従業員のリテラシーや理解に差があり、ツールが定着しない」「全員が使わないことで、ツールが乱立し、一定の効果を得られない」といった声が挙がるため、こうした悩みを抱える場合は「インフルエンサー戦略」を心に留めておくのもよいかもしれない。
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