久しぶりに、釘を打つ作業をした。
物を掛けるのに、一、二本打ってくれと頼まれた。
以前は、釘を刺されることもあった。
出かける前だ。「調子に乗ってあまり飲まないでよ。」
「いい気になって、べらべらと余計なおしゃべりや、駄洒落言わないでよ」
ミダイが、刺してくる釘だ。
あらかじめ、念を押しておくのが「釘をさす」だ。
もう二〇年も前のことだ。
同窓会に出かけるとき、道具箱から五寸釘を一本持って会場に向かった。
同級生の友達や、元の先生が集まり盛り上がっていた。
各自近況を話すことになり、自分の番になって、いつも面白いネタで話すので期待と、拍手で壇に立った。
頭を下げ、あいさつの後、十数秒押し黙って、おもむろにポケットから、件の五寸釘を出した。
釘に注目が集まったところで、「今日は、女房から、いつものように下らない話は、しないようにと、釘を刺されて出てきましたので・・」
大いに受けた。
先生は、以後会うと「おい 釘 元気か」と尋ねられてきた。
その先生も、昨年亡くなり、今年は新盆だ。