かぁちゃんが言葉を失ってから10年以上が過ぎた。
あざみの歌も、もう歌えない。
かぁちゃんが歌わなくなってから、私も歌う回数が随分減ってしまった。
一年ほど前だろうか、かぁちゃんが珍しく大きな声でくしゃみをした。
くしゃみだけじゃなく、くしゃみの前に「ふぇ〜〜〜っ!!」っとびっくりするくらい大きな声で叫んだ時だった。
いつもは、起きているんだか眠っているんだか分からないくらいの、ほっそ〜い目をしているのに
自分の声にびっくりしたのか、ばちーっとまん丸な目になっていたのだ。
その様子があんまり可笑しくて、つい爆笑してしまったのだが
……あれ?……
もしかしたら、かぁちゃん!大きな声ならちゃんと聞こえてる?
と言うか、耳が遠くなってる??
ひゃぁ😅
何でそんな事に気付かなかったのか?
わくわくしながら、耳元でハッキリと、少し大きな声で話しかけてみる。
「もしもし〜〜。きっこえてますかぁ?」
したら、かぁちゃん、じーっとこっちを見たではないかいな!😳
続けて、試しに耳元で歌ってみる。
勿論、あざみの歌だ!!
したら、かぁちゃん、二番に差し掛かる頃に
「はぁぁ……あぁぁぁぁ……」🎶
と、小さな小さな声で、でもはっきり自分の意思で声を出した!
いや、歌った!!
小さな小さな声だけど、小さな小さな出来事だけど、
出来なかった事が本当は出来ていたのに気付いた嬉しさったらない。
それから、なるべく耳元でゆっくり話す事を心がけている。
もう、何週間経ったのか……
京都のあの悲惨な事件のニュースを見ながら
かぁちゃんの口にご飯を運びながら、悲しくて、悔しくて、やり切れなくて、ベソベソ泣いていたら
かぁちゃん、私の顔をじーっと見つめてた。
かぁちゃん……いつの世も、想像もしない悲しい事が
何の前触れもなく起こるものなんだねぇ。
かぁちゃんの顔を見ながら、小さな声で一言「難儀なこっちゃなぁ……。」と呟いたら
かぁちゃんは、首をかくんと下げて、下を向いて、
まばたきを一つ、二つ、三つ……
なんだか全部分かっていてお話ししているみたいだね☺️
随分と暑い夏になっております。
皆さまどうぞ、御自愛くださいませ。