国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

フセイン死刑執行は、イラク内戦激化の後、ネオコンの目指す「中東の民主化」と中東の長期的平和をもたらす

2007年01月03日 | 中近東地域
2006年12月30日にフセイン元大統領が処刑された。仮に処刑されたのが影武者であったとしても、イラク政府が公式に処刑を行ったという事実により政治的生命は途絶えた事になる。公開された処刑時の写真では、処刑に関与するイラク政府職員が顔を隠し、フセイン氏は顔を隠していない。政府職員が顔を隠すのは、フセイン支持派からの報復を恐れているからであろう。この処刑は明らかにフセイン元大統領をアラブ世界全体で殉教者=アラブの英雄に祭り上げる意図があると思われる。そして、現在のイラク政府を支配するシーア派に対するスンニ派の怒りを増幅させる効果もあると思われる。死刑画像流出も故意に行われた可能性がある。 私は、フセインの処刑は米国政府が「サウジとイランの勢力均衡による平和の実現による中東からの撤退」という戦略目標達成のために実行させたのではないかと考えている。当然、イランとサウジもフセイン処刑に裏では賛成していると思われる。「緊迫する中東情勢の将来は、サウジとイランの勢力均衡による平和か?」と題する上記の私の記事のシナリオ1が選ばれたのではないか? イラク内部でのシーア派とスンニ派の対立激化は、近い将来にシーア派国家とスンニ派国家にイラクが分裂して多数の移住者が出る事態を想像させる。更に、シーア派とスンニ派の血みどろの戦争の情報が周辺国に流れることで、戦争はこりごりだという感情がイランとサウジの両国に生まれると想像される。イラクの内戦はイランとサウジの代理戦争であり、世界に破滅的打撃を与えるイランとサウジの直接対決を避けるために必要とされているのだろう。 対立する民族や宗教の人々が混住する地域では、民主主義導入が対立を煽ることになり、民主化が不可能である。民主主義が全て正しい訳ではないが、民主主義が不可能であり王政・貴族政以外の選択枝のない国家は不安定になりやすい。そのような観点から考えると、ネオコンの「民主主義は正義であるから、民主主義を中東全体に広める!」との主張は実に正しいとも言える。そして、近い将来にイラク内戦の激化という回り道を経て、安定した民主主義の中東が出現することであろう。フセイン元大統領(又はその影武者?)は自らの殉教者としての死により、長期的な中東地域全体の平和をもたらすことになると予想する。 . . . 本文を読む
コメント