国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

イラクとアフガンでの戦争:戦争の目的は何か?

2010年05月26日 | 中近東地域
2001年9月11日の米国同時多発テロ事件に引き続くアフガニスタンとイラクでの戦争は開始されてから数年が経過しているにも関わらず、解決の目処は立っていない。この戦争の目的は何だろうか?それを示す重要な論文がgerman-foreign-policy.comに5月20日付けで掲載されている。この記事では、ウェストファリア条約的な「国家主権の不可侵」の時代は終わっており、「人道主義」の明目で途上国に軍事介入することが許されるとしている。そして、西洋諸国でも国家形成時には常に長い時間と多くの犠牲者が必要であったことを指摘して、軍事介入による民間人の死者を正当化している。これはネオコン的な「民主化のための軍事介入」を正当化する主張であり、2003年にニアル=ファーガソンが著した「Empire: How Britain Made the Modern World」の流れを汲むものである。同様の研究がイラク開戦に批判的であったドイツから上がってきたことが注目される。今後、日本でもかつての朝鮮・台湾・満州・ミクロネシアにおける植民地経営や中国・東南アジアでの軍政を公式に正当化し、その教訓に学び、そして必要に応じてこれらの地域に軍事介入すべきであるという声が上がってくるであろう。 無論、西洋諸国によるこのような軍事介入は西洋諸国の国益が目的であり、人道主義というのはそれを正当化するための題目に過ぎない。イラク開戦では公式に反対に廻った独仏露も含めて、西洋諸国全体の合意を経て911とそれに引き続く一連の戦争が計画され、実行されたのだと思われる。小泉政権の樹立は、イラク開戦を実行するために行われたのだと私は想像している。20世紀が第一次世界大戦から冷戦までと定義するならば、21世紀は第一次大戦前の19世紀を繰り返すような時代になるのだと思われる。 . . . 本文を読む
コメント (6)