国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

リビア攻撃を巡る欧州・NATO内部の対立

2011年03月22日 | 中近東地域
リビアへのNATO諸国の軍事介入が始まった。その一方で、NATO・欧州諸国内部で介入に対する意見の対立が目立っている。特に重要なのはドイツ・ロシア・トルコの反対である。この反対の理由について分析してみる。 ドイツ以外の主要欧州諸国はいずれも軍事介入に賛成している。具体的にはイギリス・フランス・イタリア・スペインである。残る大国であるポーランドの意向はよく分からないが、ポーランドはリビアまで軍事力を派遣する能力が欠けている可能性が高い。 イギリス・フランス・イタリア・スペインはいずれも経済的に弱体である。かつての植民地時代のように、アフリカを半植民地化して支配しその収益(具体的には石油資源など)で繁栄することを狙っているのだと思われる。一方のドイツは経済的に繁栄しており、植民地を必要としていない。この違いが対リビア政策に現れたのではないかと考えている。 トルコの反対はもっともである。イスラム諸国が次々と半植民地に転落するという事態はトルコの国益に合致しないからだ。また、ロシアは既に十分な半植民地をシベリアや中央アジアに領有しており、今後英仏伊などがこれらの地域の資源を狙って軍事介入してくることを恐れているのだと思われる。 やはり一番重要なのはドイツの反対とフランスの賛成である。強固な独仏連合はこれまでEUの中核となってきたが、独仏両国の経済的格差がリビア問題での重大な意見の相違に繋がっている。近い将来に独仏連合は解体し、新たな植民地を必要としないドイツ・ロシアを中心とする東EU諸国と、植民地からの収奪なしには繁栄を維持できない弱体国家からなる英仏伊などの西EU諸国にEUは分裂していくのではないかと私は想像している。その過程で、オランダ・オーストリア・ベルギー北部などの広義ドイツ語圏は統合されていくことになるだろう。 . . . 本文を読む
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