国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

日本の核武装はどこまで中国の核兵器に対抗できるか

2006年09月14日 | 中国
●大勲位風見鶏が本領発揮

中曽根元首相については「風見鶏」という立派な芸名、いや、あだ名があって、もっとも今では大勲位というのが有名なんだが、とにかく節操がないので有名だった。その時の風の間に間にふらふらと定見なくさまよう人なんだが、アメリカの影響力が弱まったのをいち早く感じてまたぞろ核武装の検討とか言い始めたようだ。もっとも田中宇氏のブログによれば 「日本にとっては核武装は有効ではない」という見方もある。というのも、日本は国土が狭いので、東京と大阪に二発打ち込まれただけで国家としての機能が麻痺してしまう。一発だったら静岡県の由比あたりでもいい。国道一号線と新幹線と東海道線と東名高速道路が由比近郊で一カ所に集まっているので、これだけで東西の交通が遮断できる。あまり公表されてないのだが、この東西流通の問題は、日本が抱える最大のウイークポイントだ。少なくとも第二東名が出来るまでは、この問題は解決しない。ところが中国とかアメリカ、ロシアとかはやたら国が広いので、いっぱい核爆弾が必要だ。それに、たとえば中国に原爆を100発ほど打ち込んでみよう。どうなるか。風は西から東に流れるので、死の灰はもれなく日本に運ばれてくる。国が広いというのは、それだけでも核戦争には有利なのだ。イスラエルが200発の核を持っていても切り札にできないというのは、自国の狭さとアラブ世界の広さとが背景にある。

日本には、すでに世界中のどこへでも何トンもの「物体」を配達できる優秀な自国産ロケットもあるし、何百発でも核爆弾を作れるプルトニウムもある。戦争なんて突然はじまるものじゃないんで、これだけで充分な気もするんだけどね。それより由比の問題を早く片づけてくれや。あすこにゴジラが上陸したらひとたまりもないぞw
http://my.shadow-city.jp/?eid=226691



●多極化と日本(1)
▼核抑止力の本質

 戦後の日本が核武装しなかったのは、一般には、アメリカが日本の軍事的な再台頭を恐れて核武装させなかったからだとか、広島と長崎の被爆体験を持つ日本人が核兵器を嫌ったからだとか考えられているが、もっと別の軍事的な解釈もできる。

 日本が核武装するとしたら、その場合の仮想敵は、中国やロシアであるが、いずれも国土が日本よりはるかに広大である。中国と日本が核戦争して互いに5発ずつの核ミサイルを相手に撃ち込んだ場合、中国は、首都圏に3発、関西に2発を落とせば、日本を国家として機能停止させられるが、日本が北京や上海などの主要都市に5発を落としても、無傷の大都市がいくつも残り、中国は国家として生き延びられる。

 ロシアとの核戦争の場合、1981年の自衛隊の研究によると、日本では2500万人が死ぬが、ロシアは人口の希薄な極東で100万人が死ぬだけである。国土が狭い日本は、広大な中国やロシアと核戦争しても不利になる。核兵器を持つことが戦争を防ぐことにつながるという「核の抑止力」の考え方は、アメリカとロシアなど、国土の広い国どうしが対峙している時にのみ有効である。だから、日本は自前の核兵器を持つより、アメリカという強くて広大な国の核の傘の下に入っていた方が有効なのだ、という分析が最近、アジアタイムスに出ていた。
http://tanakanews.com/g0912japan.htm



【私のコメント】
 野次馬氏が紹介している田中宇氏の「日本にとっては核武装は有効ではない」という意見は部分的には正しく、部分的には正しくないと言えるだろう。

 欧州で核武装している英仏両国は国土の狭さ、首都への国家機能の集中度などの点で日本に比較的近い。英仏両国の核武装はかつてのソ連や今のロシアの核兵器には対抗できない点で有効でないが、核攻撃を受けた場合に一矢報いる能力という点ではある程度有効である。英仏が対抗できない面積と人口を持つ超大国は、核攻撃力の有無を除いて考えると、現状では米国・ロシア・中国・インド・ブラジルの五カ国だけだろう。それ以外の国に対しては英仏両国の核兵器は十分有効である。

 この点は日本についても同様のことが言える。つまり、日本は米国・ロシア・中国・インド・ブラジルの五カ国には核兵器だけでは対抗できないので、核兵器以外の方法で対処していく必要があるということだ。

 もう一つ、野次馬氏が紹介しているイスラエルの核兵器の例は非常に興味深い。イスラエルは国土が狭く人口も少なく、更にそれが一部の都市に集中しており、核兵器の攻撃に非常に脆弱である。一方、周辺の中東国家はいずれも人口が多く面積が広く、更に農村人口も多いことから人口が広い範囲に分散しており、核兵器の攻撃によるダメージがかなり小さい。従って、イスラエルが核兵器で自国を守るには、イスラエル以外の中東諸国の核武装を阻止することが絶対に必要であり、過去のイラク原子炉空爆や現在のイラン核開発問題はイスラエルの国家安全保障に直結する重大な問題である。日本の場合、周辺の超大国である米国・中国・ロシアは既に核武装しているので、イスラエル方式の安全保障は不可能である。

 自明のことだが、米国・ロシア・中国・インド・ブラジルの五カ国の中で日本にとって真に脅威であるのは中国である。中国の核兵器はかつての毛沢東時代の貧しく農村人口の多い中国では非常に強力であり、ロシアや米国すら対抗できなかったと思われるが、現在の中国は都市化が進み、核攻撃を受けた場合に予想されるダメージが大きくなっていると言える。更に重要なことは、中国は都市戸籍を持つ一級国民と農村戸籍の二級国民からなる明瞭な階層国家であり、現在の中国政府は都市戸籍の人々が支配している。中でも北京や上海・広州~香港などの少数の大都市が大きな影響力を行使している事であろう。そして、都市の人々は農村の人々を軽蔑し、同じ中国人とは考えない傾向がある。かつてのアパルトヘイト時代の南アフリカ、あるいは農奴制の時代のロシア帝国に近い状況とも言えるだろう。大都市の富裕な人々にとっては、核戦争で農村の人々が生き残って中国という国が生き延びても、都市に住む自分達が全滅することは決して容認できないだろう。

 このような観点から考えると、改革解放以後の中国の都市部の発展は中国を核攻撃に対してかなり脆弱にしてしまったと言える。そして、その中国の都市部の発展が日本からの投資や対外援助によって進んでいることを考えると、日本の対中政策は結果的に中国を軍事的に弱体化させており、成功したと言えるのではないだろうか?

 また、ロシアや米国についても、国土は非常に広いが都市人口比率は高く、核攻撃を受けた場合のダメージは決して小さくないと思われる。日本が数百個程度の潜水艦発射型核兵器を保有すれば、相互破壊保証による日本の安全保障はある程度は可能となるだろう。

 今後の日本の対中政策を考える時には、中国の都市と農村の格差が維持され、少数の大都市に国家機能が集中した現在の状況が維持されることを一つの目標にすべきだろう。また、中国国内の潜在的内部対立を煽って分裂させることも有用と思われるが、その際にも豊かな沿海地区の大都市だけが分離独立してシンガポールのような都市国家となり、貧しく人口の多い内陸地帯が巨大な核武装国家として残される事態は避けなければならない。
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2 コメント

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Unknown ()
2006-09-15 05:21:51
現在は核が最終兵器になってるが

時代が変われば核に対抗できる兵器が出来ると思う

その兵器が日本で作れればって所かな
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Unknown (Unknown)
2006-09-15 14:24:54
レーザービームとバリヤーですな。
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