国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

カーター元米大統領がパレスチナ問題でイスラエルを激しく批判、米国のイスラエル切り捨てはもはや目前か?

2006年12月07日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
Palestine Peace Not Apartheid (ハードカバー)  Jimmy Carter (著)  


ハードカバー: 264ページ
出版社: Simon & Schuster (2006/11/14)
言語 英語
ASIN: 0743285026




カーター氏の反イスラエル本が話題に 「愚かしき本」との評価も ベリタ通信 2006年12月07日00時08分

 ジミー・カーター米元大統領(82)=民主党=が最近、イスラエルと米現政権のパレスチナ和平への取り組みを真っ向から批判した著作「パレスチナ:アパルトヘイト(人種隔離)なき平和」(288ページ)を11月に出版、テレビや新聞のインタービューを通じて自ら新作のプロモーションを行なっている。今回で21冊目の著作となり、歴代大統領の中でもこれだけ出版した大統領はいない。今回、目立つのは激しいイスラエル批判で、このため出版前からブログ上では激しいカーター批判が巻き上がっている。(ベリタ通信=江口惇)

 米紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、カーター氏は、著作の中で、パレスチナ和平を実現させるためには、イスラエル政府が米国の仲介する新和平案(ロードマップ)を守り、国際法に応じるだと述べ、これを逸脱する行為を重ねているイスラエルを批判した。

 カーター氏によると、新和平案は現状では「失敗」の状態にある。これはイスラエルが様々な前提条件を持ち出してきて引き伸ばし戦術を駆使しているためだという。

 同氏は、特にイスラエルが第三次中東戦争(1967年)で占領したヨルダン川西岸地区で、多くのパレスチナ人を取り囲むようにしながら建設を進めている分離壁に触れ、これは、パレスチナ人にとって“監獄の壁”であると述べた。

 カーター氏は、パレスチナ和平が進展していないのは、イスラエルが、67年以来占領した領土を返還しようとしないためで、また米国政府が、こうしたイスラエルの姿勢を一方的に支持しているためだと述べた。このほか、米国の政治家はイスラエルを批判せず、マスコミの取材もおろそかだと決め付けた。

 ブッシュ政権は、既にパレスチナ新和平案が任期中までに実現するとの見方を否定するなど、パレスチナ和平の展望は明るくない。カーター氏は、この停滞した和平案に活を入れるための問題提起型の本と位置づけているようだ。

 カーター氏は、1980年の大統領選挙の再選で、共和党候補のロナルド・レーガン氏に敗北。以後世界的な和平促進を求めてカーターセンターを設立、世界各国の紛争地域に足を伸ばし、紛争解決に影響力を行使している。カーター氏は、主なものだけでも、北朝鮮、キューバ、ユーゴスラビア、ハイティ、それに地域としては、アフリカ、中南米諸国などに足繁く通っている。

 一方、パレスチナ和平を妨害しているのは、すべてイスラエル――といったカーター氏の新作には、ユダヤ系米国人や識者からも非難の声が上がっている。

 米保守系誌「ニューリパブリック」の編集長マーチン・ペレーツ氏は、「偏った、不正確な、愚かしい本だ」とこき下ろした。またカーター氏の反イスラエルの姿勢は、宗教的背景によるものと示唆した。このほか、カーター氏を尊敬するという学者のアラン・ダーショウィッツ氏も「あの上品な人物が、かくも下品な本を書いた。本の価値を傷つけているのは、多くの誤りと省略だ」と疑問を呈した。

 米C-SPANの番組「ブックTV」に出演していたカーター氏に読者が電話で質問した。「あなたは世界中の独裁者やごろつきに取り入ってきた。しかし、それよりも問題なのは、あなたが反ユダヤ主義者であることだ」と批判した。カーター氏は、反ユダヤ主義では断じてないと答えた。同氏の新作については民主党内からも異論が出ている。







イスラエルのパレスチナ支配は極悪非道(カーター元米大統領)


http://www.rawstory.com/news/2006/Carter_Israeli_domination_over_Palestinian_atrocious_1127.html

Carter: Israeli 'domination' over Palestinians is 'atrocious'
Ron Brynaert
Published: Monday November 27, 2006

Former Democratic President Jimmy Carter called Israeli "domination" over Palestinians "atrocious" during an interview Monday on ABC's Good Morning America, RAW STORY has learned.

Appearing on the morning talk show to promote his new book, Palestine Peace Not Apartheid, Carter dismissed criticism by some Democrats that his book comes down too harshly on America's key ally in the Middle East.

Robin Roberts told Carter that "many people find surprising that you come down a little hard on Israel, and that there have been some key Democrats who have distanced themselves a little bit from your view on Israel."

"In fact, House Speaker Nancy Pelosi said 'it is wrong to suggest that the Jewish people would support a government in Israel or anywhere else that institutionalizes ethnically based suppression, and Democrats reject that allegation vigorously,'" Roberts said. "What is your response to that?"

"Well, Robin, I have spent the last 30 years trying to find peace for Israel and Israel's neighbors, and the purpose of this book is to do that," Carter responded. "But you can't find peace unless you address the existing issues honestly and frankly."

Carter said that there was "no doubt now that a minority of Israelis are perpetuating apartheid on the people in Palestine, the Palestinian people."

Many Democrats are uncomfortable with Carter's use of the term "apartheid" to describe Israeli policies. Even Congressman John Conyers, the incoming House Judiciary Committee chairman known for his more liberal ideology, has criticized the term's usage.

"Conyers stated recently that the use of the term 'apartheid' in the book's title 'does not serve the cause of peace, and the use of it against the Jewish people in particular, who have been victims of the worst kind of discrimination, discrimination resulting in death, is offensive and wrong,'" wrote Michael F. Brown for The Nation.

However, Brown, a fellow at the Palestine Center, noted that "Nobel Peace Prize recipient Bishop Desmond Tutu has made the same connection as Carter."

"I've been very deeply distressed in my visit to the Holy Land; it reminded me so much of what happened to us black people in South Africa," Tutu wrote over four years ago.

On Good Morning America, Carter called Israel's occupation the "prime cause" of continuing violence in the Middle East.

"And contrary to the United Nations resolutions, contrary to the official policy of the United States government, contrary to the Quartet so-called road map, all of those things -- and contrary to the majority of Israeli people's opinion -- this occupation and confiscation and colonization of land in the West Bank is the prime cause of a continuation of violence in the Middle East," said Carter.

"And what is being done to the Palestinians under Israeli domination is really atrocious," Carter continued. "It's a terrible affliction on these people."

In his book, Carter argues that "peace will come to Israel and the Middle East only when the Israeli government is willing to comply with international law, with the Roadmap for Peace, with official American policy, with the wishes of a majority of its own citizens and honor its own previous commitments by accepting its legal borders."

An excerpt from Carter's book can be read at this link.
http://abcnews.go.com/GMA/Books/story?id=2680021&page=1




【私のコメント】
 1976-1980年に大統領を務めた民主党出身のジミー・カーター氏が11月14日に出版した著書「パレスチナ:アパルトヘイト(人種隔離)なき平和」でイスラエルと米現政権のパレスチナ和平への取り組みを真っ向から批判している。著書の表紙(この記事の冒頭の写真)では、イスラエル政府がユダヤ人入植地とパレスチナ人地域を分断するために建設した壁とそれを憂うカーター元大統領の顔写真が大写しになっている。東ドイツが西側文明の脅威から自己防衛するのにベルリンの壁を必要としたのと同様に、壁を建設せねば自己防衛できないほどイスラエルは追いつめられた状態にあるのだ。

 カーター政権時代に国家安全保障補佐官を勤め、事実上カーター政権の外交政策を立案していたズビグニュー・ブレジンスキー氏も米国外交雑誌のフォーリンポリシーの7/8月号でイスラエルロビー批判を行っており、カーター元大統領の発言は不思議ではない。ただ、元大統領という肩書きの人物がこれほどまでに激しくイスラエルのアパルトヘイト政策を批判することの社会的衝撃は非常に大きいと思われる。共和党系のキッシンジャー元国務長官ネオコンのクラウトハマーもイスラエルを事実上切り捨てる発言を行っており、民主党と共和党の二大政党がイスラエル切り捨てという政策で一致している。これは、民主党と共和党の両方を通じて米国を支配するCFR(外交評議会)の方針であることを示しているのだと思われる。今年3月のミアシャイマーとウォルトのイスラエルロビー批判論文から表面化し始めたイスラエル切り捨ての動きがとうとう現実の政策に反映される時期が近づいているということだろう。

 国際金融資本が地中海の東岸でアジアとアフリカの境界、地中海とインド洋の境界という地政学的要地を制圧するためにナチスのアシュケナジー弾圧とイスラエル独立戦争によるスファラディ弾圧によって作りだした人工国家イスラエルは米国からの膨大な援助と米国の軍事的プレゼンスなしには生き延びられない。イスラエルという橋頭堡を維持し続けるという国際金融資本に強いられてきた足かせから米国は抜け出しつつあるのだ。

 韓国でも鄭東泳(チョン・ドンヨン)ウリ党前議長、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領、韓明淑(ハン・ミョンスク)総理、イ・ジョンソク統一部長官ら現政府関係者は機会ある度に南北首脳会談を北朝鮮に依頼している。これは、米国がイスラエルと同様に国際金融資本に強いられて確保させられ続けてきた韓国という橋頭堡を手放すという意志をおそらく繰り返し表明しており、日本・中国という超大国との領土問題や経済的競合問題を抱えて追い込まれた弱者である韓国は北朝鮮の保護国として生き延びる他はない状況に置かれているからだ。

 日本が大東亜戦争にわざと負けて朝鮮半島の橋頭堡を維持するという足枷から解放されたように、米国はイラク攻撃とアフガン占領でわざと敗北することによって、イスラエルと韓国という二つの橋頭堡の足枷から解放されつつあるのだろう。そして、米国のベトナム戦争やソ連のアフガン侵攻も、わざと敗北して国際金融資本の命令による米ソ軍事対決の二極体制から離脱することが目的だったのかもしれない。日本の経済政策は先進国入りを願う途上国のお手本になってきたことはよく知られているが、日本の軍事戦略もまた、二極対立からの脱出を目指す第二次大戦後の米ソ両超大国にとって一種のお手本になってきたのかもしれない、というのは陰謀マニアの妄想だろうか?
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