国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

大英帝国=国際金融資本の世界覇権崩壊後の欧州世界

2007年09月02日 | 欧州
●英国:高リスクの住宅ローン延滞率、4-6月に上昇-S&P  8月29日 ブルームバーグ

  米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によると、「ノンコンフォーミング住宅ローン」と呼ばれる高リスクの英住宅ローンの延滞率を示す指数が4-6月(第2四半期)に5%近く上昇した。7-12月(下期)にはさらに上昇する見通しだ。

  英ノンコンフォーミングRMBS指数についてS&Pが29日までに、電子メールで送付したリポートによると、同指数は19.9%から20.9%に上昇し、 90日以上の延滞となった借り手は全体の9.92%に達した。ノンコンフォーミング・ローンは、借り手が信用履歴や借入額などで通常の貸し出し基準を満たさないことが多い。

  S&Pは、イングランド銀行が1年間で5回の利上げを実施しており、住宅価格の上昇ペースが鈍化するなかで、変動金利で資金を借りた人が受ける圧力は強まっていると指摘。金利上昇の影響がまだ完全には浸透していないとも分析している。

  S&Pは「延滞や差し押さえの水準は2007年下期に悪化する見通しだ」と指摘した上で、「住宅価格の下落によって借り手は、借り換えの選択肢や住宅ローン支払い実行に対するインセンティブで影響を受けるだろう」と説明した。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003009&sid=aONc3iIOsudQ




●英国政府、2隻の大型航空母艦の建造を正式決定   2007/8/8  テクノバーン

英国海軍は2隻の大型航空母艦を建造することを決定し、7日までに発注を行った。総建造費用は約39億ポンド(約9360億円)で、約1兆円近くにも達する大型プロジェクトとなる。ただし、従来型空母の運用には約2000名の乗員が必要なのに対して、新空母は600~800名の乗員で運用が可能となっており、年間の運用費用に関しては従来型空母に比べて大幅な削減を見込む。

  今回、建造が正式決定した新型空母はガス・タービン・エンジンによる通常動力を用い、艦載機には現在、ロッキード・マーチン社が開発中の「F-35 Lightning II 統合戦闘攻撃機」を予定している。全長は284メートルで、米国のニミッツ級航空母の333メートルと比べると小ぶりとなるが、艦満載排水量は約10万トンで、ニミッツ級航空母艦と同等で、米国以外が保有する空母としては世界最大級のものとなる見通しだ。

  英国海軍は現在、垂直離着陸機「Harrier」を搭載した3隻の小型空母を保有しているが、この新空母の完成を待って順次、新旧交代を行う見通しだ。新空母の完成は2014年~2016年の予定。完成後、2隻の空母はそれぞれ「Queen Elizabeth」と「Prince of Wales」と命名される予定だ。
http://www.technobahn.com/cgi-bin/news/read2?f=200708081231&page=2





●スコットランド:民族党、独立を問う住民投票を提唱   2007年8月15日  毎日新聞

英国からの独立を求めるスコットランド民族党のサモンド党首は14日、スコットランド独立の賛否を問う住民投票を実施する方針を表明した。スコットランド自治政府首相を務める同党首は同日、住民投票に関する白書(40ページ)を発表し、住民の議論を経たうえで「選択を委ねたい」と述べた。住民投票の実施時期は決めていない。スコットランド議会野党の労働党、保守党、自由民主党は実施に強く反対している。

 白書によると、住民投票の質問項目は「スコットランドが独立国家になるために、スコットランド自治政府が英国政府と解決策を協議することに賛成か反対か」との内容になる。白書はスコットランドの「現実的」選択肢として、(1)現在の地方分権制度の維持(2)特定分野でスコットランド議会の権限拡大による地方分権改正(3)完全独立--の三つを挙げた。

 サモンド党首は14日の記者会見で「(独立以外の)他の選択の意見も聞き、幅広い議論を重ねる」と言明した。同党は住民投票を次期地方議会選挙までに実施する考えだが、議会で過半数を占める野党勢力の反発は強く、曲折も予想される。

 スコットランド民族党は5月の地方議会選挙で、労働党を1議席上回る47議席を獲得し、初の第1党となり、独立賛成派の緑の党と議会少数内閣を発足させた。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/europe/news/20070815k0000e030052000c.html





●ベルギー、南北政党の対立が激化・新政権の連立交渉決裂  2007年8月26日 日本経済新聞

 欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)などの国際機関が本部を置くベルギーで、南北地域の対立が激しくなってきた。一段の自治権拡大を訴える北部オランダ語圏に、南部フランス語圏が強く反発。総選挙から2カ月半が過ぎたが、南北政党間の連立協議がまとまらず、組閣責任者が辞任する事態となった。新政権の発足のメドは立たず、「欧州の首都」で政治的な混乱が広がる恐れもある。

 総選挙で第1党となったキリスト教民主フランドル党(CD&V)の首相候補であるルテルム氏は23日夜、国王アルベール2世に組閣責任者を辞任すると伝えた。CD&Vは北部オランダ語圏の地域優遇を主張する右派政党。南部フランス語圏の各政党が連立を拒んだ。国王は仏語圏の政党から新たな組閣責任者を任命する方向だが、小政党分立のベルギーでは連立協議の難航は必至だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070826AT2M2402525082007.html





●英国の不動産バブル崩壊の衝撃は米国のそれを上回るか??
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/4d2bd33bae968c8467c766c76dc2a1a5


●サルコジ大統領の「地中海連合」構想で、米英両国のシーパワーによる地中海支配は終焉した?
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/ff78ddd3fe80aa286662cfa795bd8ddb


ロンドンオリンピック (2012年) - Wikipedia



●世界の中の日本― これからの長期戦略 (2) 江田島孔明


△シーパワーの勢力均衡(バランス・オブ・パワー)戦略

シーパワーは大陸が巨大なランドパワーに支配されることを徹底的に阻止しようとする。一旦、大陸が支配されると、交易の利得を上げられないし、次に狙われるのは自分だからだ。逆に、シーパワーは大陸のランドパワーを殲滅しようとは思わない。商売ができなくなるからだ。

要するに、シーパワーにとって、大陸のランドパワーが割れて、相互に牽制しあう状況で両方に武器を売ったり対立を唆したりすることで利益を得るのだ。中国古典の「漁夫の利」を地で行くこの戦略は、前号の「シーパワーにとって戦争はビジネス」を思い出してもらえばわかるだろう。

△大英帝国

英国は大陸欧州でランドパワーが巨大化した際、それをかならず、つぶす方向で努力した。ナポレオンやヒトラーが例だ。特に、第二次大戦において、イデオロギー的に相容れないソ連と組んだことは、英国の政策の本質がイデオロギーではなく、勢力均衡にあることを証明する。これは、アメリカも同じである。


△現在の国際情勢

現在のアメリカが以上のような伝統的勢力均衡戦略を捨て中東直接支配に移行していることが問題だ。そしてそれは間違いなくアメリカを衰退させる。

賢明な読者諸兄は以上のような英国の立場が本質的に日本と同じだということがおわかりいただけるだろう。ここに、平成の日英同盟(第三次日英同盟)の可能性が有る。これは環太平洋連合の呼び水となる。



△英国に見られるシーパワーとしての自己規定

英国はEUに深入りすることは今後も無いと思われる。むしろ統一憲法の扱いではEU脱退も考えられる。EU大統領の野心をもってるブレアの退陣が一つの試金石だろう。

なぜなら、EUに深入りしても場所が場所だけに欧州の物流・交易の中心には絶対なれない。(仏中心で)大陸ヨーロッパが1つになる事によって、欧州内で陸上ルートを使った物流・交易が極めてローリスクで行えるようになった、今回の拡大もその範囲の拡大と捉える事が出来る。域内のブロック化は、大西洋への出口として重要な位置にある海運の国の英にとっては、米国のその地域内での影響力低下も伴うからメリットよりデメリット大きいだろう。

だから英国は今後もEU諸国の統合強化を妨げるように動くであろうし、実際、数世紀前からの英国の大陸欧諸国に対しての基本的な戦略だ。

具体的には独仏分断のため、東欧の発言権を増しフランスに対抗させるといったやりかただ。英国がポーランドの欧州議席数交渉を支援したのはそのためだ。

はっきり言って、英国がEUに入っている理由はEUの情報を入手し、域内を分断するためなのだ。(トロイの木馬)これは独仏の利害と対立する。

そもそもランドパワーがシーパワーに対して優位性をもてるのは域内の統一がなって海上を利用しない物流・交易が容易になった時だ。

シーパワーとしてはランドパワーが分裂状態にある事が望ましいわけで海上を支配し分断されたランドパワーをつなぎ、その間で付加価値をつけマージンを得る事で富をなす。それが出来ないと辺境に甘んじるか引きこもるかするしかない。

△勢力均衡

このように、EUの分断、勢力均衡が必要なのは米国にとっても同じだから共通の利害関係にある以上、英にとっては米>欧で米英同盟は少なくともEU崩壊までは続くだろう。

日本には、欧米という表現で、大陸欧州も英国も米国も一緒くたにする見方がある。欧米を「同じ」キリスト教国や民主主義国、白人種といった見方もそうだ。

しかし、ランドパワーとシーパワーの視点からみると、大陸欧州と英米には「本質的かつ根本的な利害の対立」があることがわかる。つまり、英米は大陸欧州を分断して勢力均衡を図ろうとするし、大陸欧州は分断されてると、英米に利用されるから統合しようとするのだ。これがEU統合、ユーロ導入の意味であり、英米とEUが相容れない本質的理由だ。

ナポレオンの頃から、二度の世界大戦、更に冷戦期を通じて、この勢力均衡が英米の基本戦略であり、それはイデオロギー的に相容れないソ連と組んでドイツを潰したことでも分かる。

地政学的にみた場合、シーパワーたるアメリカは防衛線を島国たるイギリスに置き、独仏は防衛圏外(いざという時は見捨てる)とする、二度の世界大戦から、冷戦期を貫く戦略をとっていたのだ。

はっきり言えば、米国は二度の世界大戦以降、冷戦期を通じて欧州を防衛していたのではない。正しくは、大陸欧州を分断して勢力均衡を図っていたのだ。そのための前線基地として英国を利用していたのだ。現在の英米と大陸欧州の角逐の根底にはこの勢力均衡戦略がある。WW2末期、欧州の第二戦線をどこにつくるかについて、チャーチルはソ連を牽制するためにバルカンから東欧に米軍が上陸すべきと主張した。しかし米国はフランスに上陸支配しかつソ連へ東欧と東ドイツを譲ったのだ。この戦略の真の意図はソ連を利用して欧州を分断し勢力均衡を図ることだと私は見ている。つまり、独仏ソの封じ込めだ。

△欧米という枠組みの虚構

このような、大陸欧州と英米の「本質的利害不一致」が冷静終結後、表面化し、ユーロ導入からEU統合拡大という対米自立戦略をとらせるのだ。

もっとはっきり言えば、「欧米」という枠組みはもともと存在せず、英米と大陸欧州諸国はお互いを利用できる限り利用して来たに過ぎない。

このような観点から、19世紀のイギリスの首相パーマストンは「大英帝国には永遠の友も永遠の敵もない。存在するのは永遠の国益だけである」と述べた。

同盟関係は友人や親戚関係というより、ビジネス上の取引関係と捉えた方が良さそうだ。取引が成立するには利害の一致が不可欠である。特に警察も裁判所もない国際社会ではなおさらだ。

欧米は同じ白人だから、文化を共有してるから、キリスト教だからいずれ和解するという見方があるが、私はこのような見方に賛成できない。血がつながっているという理由で後継者やパートナーを選ぶといずれ失敗するのは、ビジネスをやったことがある人ならわかるだろう。国家間も同じだ。

このような歴史から、大陸欧州は英国に不信感と憎しみすら抱いている。日本人には分からないことだが、大陸欧州は英国そして現在は米国をその深層心理において蛇蠍のごとく嫌っており、蔑んでいる。なぜなら、勢力均衡が彼等の戦略だからだ。英米にとって、真の同盟国は大陸欧州に存在しないのだ。EUをつぶすため、ロシアと取引することも考えられる。WW2の時のように。

EU憲法を批准すると、英国は大陸欧州に政策決定権を握られ、過去数世紀の復讐をされる可能性すらある。

最も基本的なことは、EUの基本的理想がシャルル・マーニュのカロリング朝フランク王国の再興を理想にしていることだ。EUの最高機関であるブリュッセルにあるEU理事会ビルが"シャルル・マーニュビルディング"と呼ばれているのは象徴的だ。そして、この観点から、英国はフランク王国の一部ではないのだ。

私は英国のEU離脱を予想する。

また日本も中韓印なんかと共に共同体なんか間違って作ってしまうと、全く同じ理由で主導権は中韓になる。

その場合、金だけむしりとられ、いいように利用されるのは目に見えている。その上、今以上の犯罪者の大量流入も確実だ。

連携すべきは米(あくまでシーパワーの)であり台湾であり、オセアニア(英連邦)でありアセアン諸国家であり太平洋への出口と言う重要な地位を死守すると言う結局今と全然変わらない状態がベストだ。日本の国策としては中共の分裂を妄想しつつそれを狙った動きをとるのが良い。

△地政学的考察

地政学的な話をするなら、欧州大陸はユーラシアから見れば西端の半島だ。つまり地政学的には常にユーラシア中央部(ハートランド)から脅威を受けていた。

ヨーロッパには潜在的に異民族に対する極度の警戒心が存在する。もともとヨーロッパ人には自分が優秀だとか、偉い人種という意識よりは、あの寒い環境で食料生産性の低さ、絶えず繰り返される東からの異民族の侵入(100年に1度は大規模)など、決してヨーロッパは豊かとは云えなかった。生存競争の異常な激化こそが、あのランドパワーとしてのヨーロッパの持つ対外的な攻撃性の基本なんだろう。

カエサルの頃からあったゲルマン人の周期的なヨーロッパへの攻撃、その後のフン・ゲルマンの侵攻、100年後のアバール・スラブの侵攻、ブルガル、アラブ、マジャール、タタールの頻発的な侵攻。農業生産力が低く、つねに餓死に瀕する厳しい環境。中世には黒死病もあったし。

だからそれを避けるために大陸中央部へ進出を図る衝動に駆られる(マッキンダー)わけだが、大陸中央を制覇してしまうと、欧州の非大陸的な統治方法では、広大な大陸統治が出来ず欧州の本国まで瓦解するというジレンマを抱える。(ナポレオンやヒトラーあるいはアレクサンダーが嵌ったパターンだ)今のEUもこの轍をふみつつある。


△英国の強み

英国が世界帝国を築けたのは、この情報を支配したからだ。決して資源や領土、人口の多さではない。

現在でも、英国が大陸欧州に優位しているのは、英連邦諸国とのつながりがあり英語が共通語であることともあいまって、ロイターやBBC、ロイズといった世界的情報産業が英国に集中しているためだ。

英国には世界の情報が集まり、しかも英連邦諸国にはカナダやNZ、豪州といった農業国、鉱物資源国が存在し、技術立国の日本との補完性が高い。しかも、21世紀は環境の時代である。ユーラシア大陸はどこも環境悪化に苦しめられるだろう。しかし、豪州やNZは比較的ましな環境を維持することが確実だ。人口も少ないし。これら地域が非常に重要性を帯びてくる上に、戦略的脅威も存在しない。地政学リスクが無いのだ。(一部インドネシアとの間にはあるが)

フランス主導の欧州は、この情報の観点からは、旧植民地が多い、アフリカくらいしか優位を得られない。

EU域内を除いて、鉱物資源や農産物を抑えているわけでもない。豪州やカナダに相当する国がないのだ。

ここまで考えると、日本は英国と組んで、英連邦の発展形態である、環太平洋海洋国家連合を樹立していくしかないと思われる。アメリカがシーパワーとして参加すればそれはベストであるが、中東戦争で消耗していけば難しいだろう。だから日英主導でやるしかない。

日英同盟は先例もあるし、日露戦争当時、英国経由でもたらされた情報は世界的情報網をもたない日本にとって、死活的重要性を有した。今後も有すだろう。日露戦争に勝てたのはこの情報と金融資本の出資があったためだ。この先例を復活させる必要がある。

ビスマルクの言葉とされる、「愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ」べきなのだ。
http://www.teamrenzan.com/edajima/_2.html






【私のコメント】
先日、本ブログで英国の不動産バブル問題を取り上げたが、8月29日のブルームバーグの記事でも高リスクの英住宅ローンの延滞率上昇が報道されている。今後、英国で不動産バブル崩壊による深刻な景気後退が発生するだろう。それとともに、国際金融資本の本拠地であるロンドン金融街がデリバティブ問題から急速に衰退するだろう。農業・生命科学・情報技術などの分野で高い競争力を持つ米国と異なり、英国経済は枯渇寸前の北海油田と国際金融資本の二つしか原動力がない。近未来の英国はその二つの原動力を共に失って、米国を上回る深刻な恐慌に陥ると想像する。

スコットランドの分離独立問題、ベルギーの分裂問題も英国の分裂と無関係ではない。ベルギー南部はフランス語圏であり、ベルギーという国家の成立はドーバー海峡の大陸側がフランスに支配されないようにする点で英国に大きな利益があった。第二次大戦後の欧州は人口六千万人弱の西ドイツ・フランス・イギリス・イタリアの四大国が横並びであったが、冷戦終了後にドイツが東独吸収によりまず一歩抜け出した。ベルギー南部の行方は不明だが、仮にフランスに統合されればフランスも一歩抜け出すことになる。そして、スコットランドが分離独立すればスコットランド系の多い北アイルランドも連合王国から分離すると想像され、イングランドは単独か、あるいはウェールズとの連合国家に縮小することになる。ユーゴスラビアが冷戦後にモンテネグロとの連合国家に縮小し、最後にはモンテネグロすら分離独立してセルビアだけになった経過がブリテン諸島でも再現されるのではないだろうか。

江田島孔明氏の主張するとおり、欧州大陸は英国=国際金融資本によって分裂・対立させられてきた。EUの統合はこの対立に終止符を打つものであり、英国に対する宣戦布告とも言える。そして、冷戦終了後にEUは東欧まで大きく拡大した。近い将来にはロシアもEUに加盟することになると私は想像している。ロシアと欧州諸国は現在対立しているように見えるがそれは冷戦と同様に単なる茶番劇なのではないか。

英国の歴史家ノーマン・デイビスが書いた英国史の大著「アイルズ」では、大英帝国の繁栄の過去だけでなく、欧州の一地方に転落してゆく近未来も描写されている。米国政府が英国=国際金融資本による支配からの脱出のためにイラク戦争を開始し、独仏露といった欧州大陸の大国が英国に対抗して統合を目指している現状は英国にとって無惨な敗北に他ならない。そして、永年英国=国際金融資本が支配してきた地中海も、「地中海連合」構想を提唱するサルコジ大統領を擁するフランスに支配権を奪われつつある。国際金融資本の残党がロンドンを捨ててランドパワーの一角であるフランスに移住しつつある様にも思われる。

このような現状を考えると、江田島孔明氏の主張する「新日英同盟」は敗北し急速に衰退する英国と同盟すべきと言う愚かな政策である。日本は勝ち組である独仏露と組んで北ユーラシアを支配すればよい。そして、北ユーラシアがポルトガルから日本まで軍事的に統合されるならば、その統合された地域は大西洋と太平洋という二つの大洋に広く接する地域となり、米国と同様に大陸国家でありながら一大シーパワーでもあるという状態になる。シーパワーとしての英国の地理的強みは決定的に失われる。未来の英国は現在のインド亜大陸に於けるセイロン島程度の地位に転落するだろう。そして、たとえ英国がEUを脱退しても北ユーラシア連合の圧倒的シーパワーは揺るがないだろう。

英国政府は2隻の大型航空母艦の建造を正式決定し、2014-16年頃に完成する見込みだという。また、2012年にはロンドンでの夏季五輪も予定されている。しかし、深刻な恐慌に見舞われ国際的地位が低下する英国にそれを実行する力が残されているだろうか?私は、英国は近い将来に経済的困難故に空母建設を断念するのではないかと想像する。更に、ロンドンでの夏季五輪すら断念せざるを得なくなるかもしれない。五輪を代わりに引き受けるのは、世界恐慌の中で不動産バブルの小ささ故に急速に台頭するであろう日本・ドイツ、あるいはオーストリアやロシア、フランスなどではないかと想像する。
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15 コメント

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シナよりマシと国民が納得すればロシア選択もある. (ようちゃん)
2007-09-02 02:02:41
ロシアと手を結ぶのは日本人の中に抵抗が強い!「ロシアは信用なら無い国だ!=が定着してる」しかし,ロシアは 日本の新幹線鉄道技術で もう打診してきてる。来た朝鮮の資源のほうっ事か言う鉱石を掘り出し,精錬所まで輸送したりの用途も, 天然ガスや石油もパイプライン輸送ではあの シバリア凍土の広い範囲の護衛.警備の費用も 軍隊の常駐も簡単では無い.まして冬の寒さは,輸送パイプにも問題がある.トヨタがロシアに進出してる. このロシアも工業などは技術が遅れてる. 石油や天然ガスで資金を得たので,国内インフラから産業の遅れ方から見て,ドイツか日本と組む意向はあるようだ.ロシアとのしがらみを日本人が或る程度 我慢できれば,中国と分断させるためにも 日本とロシアは,黄華を防ぐ(越境する中国人阻止)では 利害が一致する.ロシアも日本も少子化が進んでるからではある.が・・・国民感情の緩和が図られないと抵抗が強いでしょう.中国よりはマシと思えるかに懸かってる.

返信する
Unknown (Unknown)
2007-09-02 03:06:02
プーチンは北方四島を返すつもりはないと
はっきり明言している。
上海協力機構に加盟しても、日本に譲歩する気など
さらさらない。
KGBの人命軽視の恐ろしさを日本人は軽視しすぎ。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-09-02 04:56:44
江田島孔明のユダヤ新撰組が日本本土を占領するのが早いか、連山のアラブ維新軍が日本を再包囲するのが早いか。
全ては時間との勝負だな。。。


仏ガスとスエズ合併へ 世界3位のエネルギー会社誕生
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070901/sng070901002.htm
返信する
Unknown (Unknown)
2007-09-02 05:01:57
【速報】ユーラシア包囲網の完成
http://www.teamrenzan.com/archives/writer/mineyama/seapower.html

第三次世界大戦の連合国と枢軸国のチーム別けが急速に進んでいる。
返信する
パキスタンに中国軍港 (紅三四郎)
2007-09-02 13:14:08
パキスタンは中国系の売春宿に反発する

イスラム保守派を弾圧したけど、



中国の軍港も誘致しちゃったみたい‥。



米も中パ協力は黙認だろうね。





http://alternativereport1.seesaa.net/pages/user/m/article?article_id=53470587&stq=session%3A%3Ablog%3A%3Adb44674f13c2ebe183fbc5514739f0b1



返信する
Unknown (gabrico)
2007-09-02 14:31:34
KGBの人命軽視とか言ってるプロパガンダに毒された御仁がいるようだが、だったら、50億人を殺そうとしているイルミナティーはどうなんだよ。イラン・イラク戦争以降、すでに300万人のアラブ人を殺している米国はどうなんだよ。
http://gabrico-ovalnext.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/50600_592e.html

今のところイルミナティーに正面から宣戦布告している(ように見えるのは)ロシアだけだ。
http://gabrico-ovalnext.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_7f77.html

http://gabrico-ovalnext.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_bc06.html
返信する
Unknown (Unknown)
2007-09-03 02:33:03
http://ytaka2011.blog105.fc2.com/blog-entry-38.html
低所得者向けの住宅ローンであるサブプライムローンの破綻後、破綻の影響の拡大を避けるためアメリカ政府は20日間で約790億ドルを市場に投入した。これは連邦銀行が通貨を増刷することで賄われた。その結果、膨大な額の過剰なドルが流通している。
中国政府は所有している大量の米国債を市場で売り出すことで米国債の価格を暴落させると警告した。これに対しブッシュ政権は、そのようなことが実際に行われた場合イランを即刻攻撃すると応じたため、中国による大規模な米国債売りは起こらなかった。
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Unknown (Unknown)
2007-09-03 03:10:36
日ソ中立条約を一方的に破って
満州国の日本人を大量殺害したのはロシア人。

イルミナティが憎いから、ロシアに加担しても
ロシアが、日本の味方だと、誰が保証できる。

保証できると請合うなら、自分でそう思えばいい

ここは日本国内だ。
他人に特定思想を押し付ける権利はない。

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Unknown (Unknown)
2007-09-03 04:06:08
ロシアがにくき敵だったのはスターリン時代の話。
ロックフェラーが味方だったのは冷戦まで。
一方的に搾取されずに、安全保障も含め利害の一致が見込める国は今のところロシア以外無いよ。
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Unknown (のりまき)
2007-09-03 21:21:23
ロシアとの関係を深めるのは悪くない。
ただし疑ってかかるのも必須だ。
ロシアと上手くやることが
全方位の外交に好影響があるだろう。

少なくとも中国よりもマシであるのは断言できそうだ。
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