国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

英仏両国の衰退

2010年11月11日 | 欧州

●英仏、軍事協力協定に調印 - 中国国際放送局 2010-11-03

イギリス、フランスの両国政府は2日ロンドンで、合同部隊の創設や、核実験施設の共同開発、空母の共同利用など広範な協力を盛り込んだ協定に調印しました。

 それによりますと、両国は5000人からなる合同遠征軍の緊急展開部隊を設立するほか、2015年までに核実験施設の共有を実現し、2020年までに空母を共同利用するということです。

 イギリスのキャメロン首相は「イギリスとフランスの軍事協力で、両国民のさらなる安全を確保すると共に、軍事支出を節約することができる」と述べました。(Katsu/大野)
http://japanese.cri.cn/881/2010/11/03/181s166013.htm





●学費値上げ反対 学生ら暴徒化 NHKニュース 11月11日

イギリスで、戦後最大規模の政府の歳出削減策によって大学の学費が引き上げられることに反対するデモが暴徒化して、学生らが与党・保守党本部の建物に乱入するなどし、学生や警察官少なくとも8人がけがをする事態となっています。

ロンドンで10日行われたデモは、政府の歳出削減策に伴って高等教育向けの補助金が削られ、大学の学費が大幅に引き上げられる見通しとなっていることに抗議するもので、主催者側の発表で学生や教員ら5万人が参加しました。デモ行進は、与党・保守党の本部にさしかかったところで、一部の若者らが発煙筒を投げたりプラカードを燃やしたりする過激な行動を始め、窓ガラスを次々にたたき割って建物に乱入するなど、暴徒化しました。若者らと警官隊とのもみ合いは数時間にわたって続き、警察によりますと、学生や警察官少なくとも8人がけがをしたほか、30人以上の逮捕者も出ているということです。学生の1人は「政府の方針に誰も我慢できない」と話していました。イギリスの連立政権や保守党は、今のところ公式のコメントを出していませんが、歳出削減策が今後、具体的に実行されていくなかで、抗議の声がさらに高まることも予想されます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20101111/t10015163721000.html





●フランス年金改革でデモ激化 2010 年 10 月 24 日 antennefrance

フランスの年金改革のデモは激しさを増し、警察による封鎖解除命令を出すまでに至っている。特に燃料関係の封鎖は危機的なレベルに達し、3分の1以上のガソリンスタンドでガソリンが底をつき、パリの空港は封鎖されたり、その他公共交通機関も運行に支障をきたしている。

給油のために1キロも並でいたり、何時間もガソリンスタンドを探す人なども出ているが、フランス人の65%がこの法案に反対し、67%がデモに理解を示している。2%の人は法案には賛成か反対ではないにもかかわらずデモには理解を示していることにある。

燃料備蓄基地への封鎖が続いていたが、サルコジ大統領は警察により排除命令を出した。デモ隊の方は、「今度の選挙で覚えていろ!」とか「トタル(フランス最大の石油会社)の社長にに対して操業再開するつもりはない」と言っているのが可笑しい。

電力会社でもデモが行われているために、フランスは原発大国でイタリアなど原発の運営をあきらめた国などに対して電力を売っているが、原子炉6基分もの電力を買うことになった。

マルセイユではゴミ回収が行われなくなったので、軍が出動し町中に散らばった7000トンものゴミを収集している。軍と言っても軍隊の格好をしているわけではなく白い服にマスクをかぶった感じで威圧感は無い。しかし、軍が出動したことを労働組合は講義している。

あまりにもデモのニュースが多くなったので、テレビなどでは、この改革がどのように変わるのか改めて詳しく説明する所も出ている。この解説を見る限り、少なくとも日本よりは良いように見えるが改悪なのだろう。

デスクワークと違い、重労働の肉体労働であると、歳をとって働くのは困難になる。もちろんフランスでは、このような労働者のために保護するルールがあるが、腰が痛いから働けないと言うのでは通らず、肉体の劣化度によって決まるとのことだ。

では、ヨーロッパの経済はどうなっているのか?というと、イギリスは過去最大規模の歳出削減を行い、十兆円もの削減を行う。もちろん社会保障費は出来るだけ維持し、近年大幅に膨れあがった公共工事などに費やす費用を大幅に抑える。

言われていることは日本と同じで、いつまでも収入がないのに、借金で生活をしないで、収支のバランスを整えて、子供たちに借金を残さないということだ。

逆にドイツでは、経済は回復したと宣言され、不景気は過去のものというニュースが流れ始めている。最も財政規律に厳しいドイツは明るい兆しだ。
http://www.antennefrance.com/humains/societe/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%B9%B4%E9%87%91%E6%94%B9%E9%9D%A9%E3%81%A7%E3%83%87%E3%83%A2%E6%BF%80%E5%8C%96/





【私のコメント】
英仏両国は年金改革や予算削減などの生活水準低下政策に本格的に取り組みはじめた。これに伴って両国では激しいデモが起きているようである。フランスでは国民の67%がデモに賛成しているという。両国の国民の考えは甘過ぎる。

英国の雑誌「エコノミスト」の巻末には各国の経済データが載っている。ドイツは大幅な貿易黒字なのにフランスは貿易赤字。長期国債の金利も、同じユーロ圏なのにドイツよりフランスがかなり高くなっている。国力の格差が国債の金利に既に現れているのだ。格付機関の格付けよりも、この長期金利の格差の方がずっと信頼できるデータである。ただ、フランスは高速鉄道や原子力発電や軍用機などの工業力が残っているだけまだマシである。イギリスに至っては、国家を支えてきた金融業がリーマンショック以後大打撃を受けており復活の目処が立っていない。更に悪いことには、北海油田・ガス田の枯渇が近づいている。

現在、欧州ではユーロ圏のアイルランドやギリシャの経済危機が大問題となっている。ドイツ国民にアイルランドやギリシャを支援する意志がない以上、これらの諸国の経済破綻は避けられないだろう。そして、経済破綻はイギリス・イタリアといった大国まで及ぶだろうと私は想像している。フランスは破綻はしないだろうが、衰退は避けられないだろう。そして、ユーロは消滅してマルクやフランが復活するだろう。

貿易収支や国債金利に現れているように、英仏両国とドイツの国力には雲泥の差がある。しかし、生活水準の差はほとんどない。そして、英仏は核戦力や空母といったドイツにない金のかかる軍事力を保有している。このような現状は決して持続不可能である。11月2日に英仏両国は核実験施設と空母の共同利用計画に合意したが、これは軍事費を削減するための苦肉の策である。しかし、この程度では焼け石に水だろう。空母や核戦力を保有する経済力がある国は欧州ではドイツ以外に存在しないのだ。どうしても英仏が核戦力や空母を保有し続けたいのならば、大幅な生活水準切り下げ以外の選択枝はあり得ないが、贅沢な生活に慣れきった両国の国民にそれは不可能だろう。最終的には英仏両国の国民は大砲よりバターを選択し、核戦力と空母はドイツに売却されることになると私は予想する。






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9 コメント

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Unknown (竜吉)
2010-11-11 16:40:13
英仏で大砲よりバターの方向にすんなり行くかといえば、やはりバターよりも大砲が重要だ、生活低下も受入れざるを得ない、と英仏国民に印象づけさせるような「事変」が近々起こされると思われます。
日中で尖閣の事件が発生したのと相似形になるでしょう。
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Unknown (Unknown)
2010-11-12 03:29:42
ドイツの主要輸出先はEU周辺国なので、ドイツの好調も見かけ倒しのような気がします。ドイツの望み通り財政規律を強化すると周辺国はドイツ製品を買わなくなり、全員共倒れになろうかと思います。
金融機関の不良債権も時価評価せず、簿価で評価しているので粉飾が著しく、英・スイスなどの銀行は規模が大きすぎて国家援助でも支えられないなど、救いようがないと思います。

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Unknown (Unknown)
2010-11-12 13:16:17
米国及びEUは一党独裁国家である中国を喰い物にして生き延びようとするに一票。
日本はその為の噛ませ犬にされる危険大。
日和見といわれようが、柳腰と哂われようが、米国が自国の金融恐慌に我慢できなくなって、直接自分で行動するまでしのげば被害は最小限で済むだろう。
それでも下手するとかなり被害はある。
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Unknown (ウタリ)
2010-11-12 14:05:38
日本は食い物にはされないでしょう。
そのための朝鮮半島ですから。
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竜吉さんへ (princeofwales1941)
2010-11-12 21:12:34
>英仏で大砲よりバターの方向にすんなり行くかといえば、やはりバターよりも大砲が重要だ、生活低下も受入れざるを得ない、と英仏国民に印象づけさせるような「事変」が近々起こされると思われます。


フォークランド戦争の再発が一番気になるところです。今もアルゼンチンはフォークランド諸島への領有権主張を諦めていません。空母が英仏合同運営になったときに紛争が再発した場合、フランス軍が血を流すことをフランス国民が容認するかどうかは微妙です。最終的には、英仏両国は世界に散らばる植民地や領土を独立させるか近隣国に売却する形で処分していく他にない様に思います。
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Unknown (Unknown)
2010-11-13 05:53:40
食い物にされるのなら、今のうちに汁を吸っておかないとな。それ以前に、どこかを犠牲にすることでしか解決できないほど人類は未熟なのか?
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Unknown (Unknown)
2010-11-13 08:47:30
英仏両国の衰退を高みの見物するのではなく
それが日本にどのような影響を齎すかも考察した方がいいかも知れませんね
英仏だけではなくギリシャなどPIIGS諸国が、融資などで外貨準備金が豊富な中国に依存するようになると
傍若無人な中国にお灸をすえる中国包囲網を形成する上で
EUはあてにならない、という事になります

中国主席、大型商談に契約調印へ 4日に仏訪問
h ttp://www.47news.jp/CN/201011/CN2010110401000560.html

英首相訪中、商談優先 「人権の欧州」地盤沈下
h ttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101109-00000612-san-int
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Unknown (ななし)
2010-12-07 14:56:25
ユーロ安がドイツの製造業に追い風となったようです。
米国や新興国への輸出で相当稼いでるでしょう。
EU各地にあるドイツ企業の工場でも同じでしょう。
中間財や製造機のEU内の取引も活発化してるでしょうね。
国家債務なんて関係ないでしょう。
これは小泉改革の成果と宣伝されたいざなぎ超え景気の時と同じです。
実は円安で儲かっただけなんですよね。
改革の成果と言うのならその後も景気回復していなければおかしいですから。
結局為替ですよ。
戦後日本の成長曲線と為替相場のグラフを見れば一目瞭然だと思います。
それを無視して無理やり財政の問題に持っていく所が日本のマスメディアのあざとい所ですね。
今危機が起こってる国はマスメディアが散々日本も見習えと言って来た国なんですよね。
アイスランドしかり、アイルランドしかり。
リーマンショックが起きる直前まで日本は改革やって金融立国を目指せ~でしたからw
一方のドイツはそんな事はしませんでした。
安倍内閣の時メルケルが来日した際には、一緒に金融規制をやろうと誘ってくれましたが、米の傀儡政権ですから当然断りましたよね。
金融危機後も国連で一緒に金融規制をやろうと誘って貰いましたが案の定乗り気じゃ無かったです。
アメリカの傀儡国家と独立国の違いが鮮明になったと思いますね。
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うむむ (h ada)
2011-06-10 08:27:36
そこで起きたのが、北アフリカ動乱、ということでしょうか。

英国は、確かに衰退していますが、エリートがそこそこ健全に機能しているすごさがあります。
産業的には製薬も健在。
いろいろな大手企業を海外に売ってしまっているけど、よく見ると、そこそこ信頼できる国(フランス、ドイツ、インド、UAE)が中心だったりする。

中国には、自国企業を売らない矜持が、結構リアルにありますよ。(United Buscuitsも差し止めましたし)

英国・フランスをあまり甘く見ないほうがよい、そんな気が強くするきょうこのごろですねん。
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