●細谷雄一氏の掲示板
・ネオコンが徘徊する空間 投稿者:ほそや 投稿日: 7月25日(火)
ワシントンDCについては、私はとても良い記憶が残っています。緑が多く、整然としていて、洗練されていて一部肩に力が入った人たちが歩いている街。2000年に、ちょうど9・11テロの一年前の同じ時期に、国務省招待プログラムで国務省、ペンタゴン、下院、CFR、ジョンズ・ホプキンス大学などを、一週間で回りました。
しかし一番衝撃的だったのは、Heritage Instituteでした。JFK君ならよくご存じだと思いますが、レーガン元大統領を神のようにあがめ、保守主義者にとっての重要な拠点であるシンクタンクです。まさにおとぎ話のように、聖書に関連する象徴が各所にちりばめられており、レーガンの肖像が、写真が溢れ、アメリカの偉大さを感じさせる特殊な空間でした。いわゆるネオコンの範疇に属する人たちは、われわれのイメージとは異なり、多くの場合礼儀正しく、親日的で、知的な人々ですよね。
そうそう、一冊忘れていました。中西寛先生が、朝日新聞で書評も書いておりましたが、レオ・シュトラウス『リベラリズム 古代と近代』は、とても重要な一冊でしょうね。これを、ジョン・グレイ『自由主義論』や、アイザイア・バーリン『自由論』と並べて読んでみるととてもよい思考のトレーニングになるかと思います。半澤孝麿『ヨーロッパ思想史の中の自由』も加えると、さらに立体的になります。これこそがまさに、「人類史におけるネオコンの意義」を相対的に位置づける作業への重要な準備となるかと思いますし、豊かな「自由主義」に対する理解へと結びつくのかもしれません。少なくとも、それはとても知的な作業であるはずです。それは、JFK君が日本での安易なアメリカ批判、ネオコン批判を「批判」することと同様な意味を持つであろうと思います。もちろん、ステレオタイプとなっているように、シュトラウスを「ネオコンの父」と断罪するつもりはありませんが、彼はとても知的な仕事をした知識人であることは間違いありませんし、彼を理解する上では、彼の人生や、おかれた境遇、環境、同時代的な意味合いを考える必要があるのだと思います。
是非とも、いろいろなところへもぐり、色々な贅沢なセミナーをのぞきこみ、また、色々な「巨人」達に接してください。一生の財産になるかと思います。
・留学に向けて 投稿者:JFK 投稿日: 7月25日(火)
細谷先生
ご丁寧な解説と参考文献紹介をありがとうございます。参考文献については英語文献を提示していただきましたので、留学に向けて、アメリカ外交およびネオコンについての知識だけでなく、英語の体力をつけるためにもいくつか読んでみたいと思います。
The Price of America's Empireは久しぶりにその名前を聞きました。ぼくがアメリカ外交の意義について考えるときの(ぼくだけでなく多くのアメリカ学者がそうだとは思いますが)、基本になっている文献の一つです。自分の考えを再確認するためにも改めて読んでみようと思います。
そして、先生もおっしゃるように、ネオコンについて理解においては近年の著書だけでなく、アメリカの古典、さらにはギリシャにさかのぼる古典にまで探求の手を伸ばしてみる、このことを改めて肝に銘じておきます。思想についての勉強がまったくなっていないぼくが「人類史におけるネオコンの意義」などと声高に言えないことを再確認しました。
『アメリカによる民主主義の推進』については、amazonのお知らせメールでその存在を知りました。amazonで注文すると1,2週間もかかるそうなので、大型の本屋で探してみます。タイトルもさることながら、ヘンリー・ナウが投稿しているというのは大変興味深いです。
ワシントンDCではジョージ・ワシントン大学のナウの授業にももぐってこようと思っています。そして、なにより本物のネオコンが徘徊している空間、ワシントンDC、といったら言いすぎでしょうか。あるアメリカ外交研究者によると、ブレジンスキーがリンゴをかじりながら歩いている街、だそうです。
先生も、東海岸にお寄りになる際にはご一報ください。
・アメリカによる民主主義の推進 投稿者:ほそや 投稿日: 7月24日(月)
下記の、アメリカ外交とネオコンとの連関性についての書き込みを書いた後に、この問題と関連した良書が最近翻訳されたことを思い出しました。猪口孝、マイケル・コックス、ジョン・アイケンベリー編『アメリカによる民主主義の推進』(ミネルヴァ書房: 国際政治・日本外交叢書①)です。
この中には、編者以外でも、マイケル・ドイル、トニー・スミス、ヘンリー・ナウをはじめとした、このテーマについての最良の学者たちが、アメリカ外交における理念的側面について優れた論文を寄せております。価格が7500円と学生の皆さんには大変厳しい価格ではありますが、関心をお持ちであれば、とても有益な一冊だと思います。なお論者は、リベラル系が多いのですが、ネオコンの多くが民主党の戦闘的リベラルから共和党に移った人たちであるように、実は民主主義の促進というテーマをめぐっては、リベラルとネオコンが、同じところから出発した大きく異なる学派であることが理解できるかもしれません。それは、旧約聖書から出発して、大きく異なる宗派となった、ユダヤ教とプロテスタントの違いにもにているのかもしれません。そして、最近のアメリカのプロテスタントの福音派の中の右派と、アメリカにおけるユダヤ教徒が、多くの問題で立場をほぼ共有しているのも、興味深い状況ですね。
なお、山内進『十字軍の思想』(筑摩新書)では、かつての十字軍の思想が、現在ではプロテスタント、とりわけアメリカにおけるプロテスタントに受け継がれているという興味深い指摘をしておりまして、この点も、ネオコンとプロテスタントのキリスト教右派との接点を探る上で、興味深い点です。山内進編『「正しい戦争」という思想』も同様に、きわめて高い水準の研究成果です。ご参照くださいませ。
・ネオコンとアメリカ外交 投稿者:ほそや 投稿日: 7月24日(月)
JFK君、アメリカ留学を目前に控えて、心境はいかがでしょうか。これから色々と落ち着かなくなっていくかもしれませんが、向こうでは本当に素晴らしい多くの経験をなさることでしょうね。
「ネオコン」については、JFK君のいうように、日本のみならず世界で、きわめて安易で敵対的なレッテルが貼られてきて、やや過剰に反感が芽生えているように思えます。研究者の端くれとして、このような現象をどのように考えるべきかという、真摯で学問的な態度が必要で、感情的な批判と弁護は確かに非生産的かと思います。
ウェーバー流に「責任倫理」として、確かにイラク戦争を結果から論じることも可能ですし、逆に結果として占領後に多くの問題を生じさせた故に批判が増えているというご指摘ももっともかと思います。その意味では、イラク戦争の最大の問題は、開戦である以上に、占領政策の準備不足とその後の不手際で不必要な市民の殺傷であったのだろうと考えています。
他方でレナードの著書のタイトルの『アンチ・ネオコンの論理』は、明らかに本来の本の意図からは大きく離れています。元のタイトルは、Why Europe will run the 21st centuryですので。
ネオコンについては、私は一定程度の必要性と、歴史的な必然性も感じています。その点については、Niall Ferguson, Colossus: The Price of America's Empireにも書かれているとおりですね。圧倒的な力を持ったアメリカが、自由や民主主義という価値を広げることは、アメリカが世界での一切の関与を止める場合のデメリットと比較した際安易な批判をするべきではないのかもしれません。
反対に、近年世界でなぜ「anti-Americanism」が広がったのかも、ある程度学問的に検討する必要があります。それを感情的に反発するのもまた非建設的です。
Andrew Ross and Kristin Ross (eds.) Anti-Americanismと、
Brendon O'Connor and Martin Griffiths (eds.) The Rise of Anti-Americanism
はそのような学問的な論文集です。もちろん、リベラル派の執筆者が多いという点も割り引いて考えるべきですが。
他方で、近年良質なアメリカ外交論の中で、ネオコンの問題が論じられることもあります。マイケル・マンやボブ・ウッドワードなどの翻訳書以外でも、下記のような研究があります。そこでは、ネオコンにやや擁護的な議論から、バランスのとれた議論、そしてかなり厳しい
リベラルからの批判と、多様な議論があります。
Stefan Halper & Jonatahn Clarke, America Alone: The Neo-Conservatives and the Global Order (CUP, 2004)
Colin S. Gray, The Sheriff: America's Defense ofthe New World Order (Kentucky UP, 2004)
Ivo H. Daalder and James M. Lindsay, America Umbound: The Bush Revolution in Foreign Policy (Brookings, 2003)
Stephen M. Walt, Taming American Power: The Global Response to US Primacy (Norton, 2005)
Robert D. Schulzinger (ed.) A Companion to American Foreign Relations (Blackwell, 2006)
Stanley Hoffman, Guliver Umbound: America's Imperial TEmptation and the War in Iraq (Rowan & Little Field, 2003)
それと、アメリカ外交の理念的源泉を理解するためには、
Michael H. Hunt, Ideology and US Foreign Policy (Yale UP, 1987)
が古いですが依然として最善だと考えています。
マルクスが「共産主義」について皮肉を込めて語ったように、「今世界には、ネオコンという妖怪が歩き回っている」と論じるのではなくて、あくまでも、アメリカ外交における理念的潮流の一つの流れ、そして特徴ある複合的で多面的な総体としてとらえることが、重要なのだろうと思います。それが、JFK君のいう、「人類史における彼らの思想の意義」を考えるヒントなのだろうと思います。もちろん、そこで「人類史」という以上は、ハーツ以外にも、トックヴィルやフェデラリスト達のアメリカ論も理解する必要があるのでしょうし、あるいは、ギリシャ古典以来の人類史の中で相対的に評価することも重要なのでしょうね。
上記のアメリカ外交の著書の一部はすでにご覧になっているかもしれませんが、是非ともワシントンで間近にアメリカ政治外交を視る良い機会ですので、それらの話題になっている著書をお読みになり、ご準備なさるのも良いかもしれませんね。
http://6107.teacup.com/hosoya/bbs?
●イラク戦争の「プランA」と「プランB」 ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 2006年 08月 16日
最近、ガーディアン紙記者だった、グレッグ・パラスト氏の新作「アームド・マッドハウス」を手に入れた。この本は、『金で買えるアメリカ大統領』と同様にブッシュやビッグオイルの政治工作を暴いています。
全文を読んでいないが、表紙をめくったところにイラスト付きで「イラク戦争」の本当の目的である「資源確保の問題」が解説されていた。これが非常に面白い。かつ説得力がある。
俗に言われているイラク戦争における「中道派とネオコンの対立」の問題に明確な回答を与えてくれるもの。
パラスト氏は書く。
「陰謀理論を信奉する人たちは、ブッシュ大統領が、就任したそのときからイラクの石油資源を支配しようとする秘密計画を持っていたと主張する。それは違う。彼らは間違っている。ブッシュには二つの計画があったのだ。一つ目は「ネオコン」が国防総省で作った計画であり、もう一つは、国務省とビッグ・オイルが練り上げたものだ。これは二つのパワー・エリート派閥による、冷戦といっていいものだ。これがチグリス川で繰り広げられた戦争の原動力になっているのだ」
このように彼は書いています。
プランA:ブッシュ政権発足の2001年2月に、国務省と国家安全保障会議が「イラクの政権転覆」を計画。これはクーデターに見せかけたもので、2,3日で終了すると言う計画だった。政府が石油資源を独占する点は変えない。
プランB;9月11日のテロのあと、ネオコン派はプランAに対抗する計画を提案。数年間のイラク占領を行い、イラクに自由市場の奇跡を起こす計画。この計画は、共和党の企業ロビーストのノーキストを喜ばせた。民営化によって政府資産(むろん石油も)外資に売り渡す計画だった。
民営化によってイラク石油を外資が買収すると同時に、プランBはプランAが頼りにしているサウジアラビアとOPECの撃滅も考えていたようだ。OPECを潰すことで、ネオコン派は原油価格の低下とサウジアラビアのアメリカへの屈服をもくろんでいたという。これはPNACらの戦略でもある。
<中略>
つまり、ネオコン派は、プランAの胴元のCFRとジェイムズ・ベイカーに手なずけられたということのようです。対ネオコン派では、ビッグ・オイルの勝利なのでしょう。しかし、この緊張関係は今も続いており、レバノン問題でもその一端が出たように思います。
ビッグオイル:独占主義(自分たちの言うことをきくなら政府国営石油会社支持)
ネオコン:原理的な自由経済主義
と言う分類が成り立つわけで、ここにネオコンとリアリストの対立の根元もあるようなのです。
少しだけアメリカの分裂の薄皮が剥がれたように思います。東部財閥系と地域資本の対立という現象からさらに分裂の形態が変わってきているようです。
http://amesei.exblog.jp/d2006-08-16
【私のコメント】
北方領土周辺海域で日本の漁船がロシア警備艇に銃撃され死者が出たとの報道で日露間の対立が一見激化しているが、この船の船長は過去にレポ船としてソ連に機密情報や物資を運ぶ代わりに密漁を容認されていた要注意人物であるようだ。この船長が組合長を務める根室湾中央漁協も、他の漁協を追放された悪質な密漁常習者が多いという怪情報もネット上に見られる。ソ連無き今はレポ船の需要も消失しているはずだが、過去の経緯からロシア側も密漁継続を認めざるを得なかったのかもしれない。このような不健全な状態はマフィアとの癒着等も生みやすいし、そもそも密漁は他の規則を遵守する漁民の犠牲のもとに成り立っている事を考えると、今回の事件は日本側・ロシア側共に非常に利益が大きい様にも思われる。死者が出たことも、根室の密漁者への警告が目的であろう。遺体は日本に送られていないので、本当に射殺されたかどうかも不明である。ロシアの国益を考えると、殺さずにロシア領内に留置して取り調べ、マフィア等との癒着の有無を含め事情を詳しく聞き出す方が有効なようにも思われる。この事件については現時点では分からないことが多すぎる。
さて、本題のネオコンに戻ろう。細谷雄一氏は1971年生まれと若いが慶応大学法学部助教授で英国外交史の研究者である。近著「外交による平和」では第一次大戦後からスエズ戦争までの期間、チャーチルの裏方として英国外交の中心人物の一人であったイーデン元首相を扱っているが、多くの著名な国際政治学者から非常に質の高いものであると評価されている。私も買って読んだが、その詳細な分析と冷静な記述には感心した覚えがある。彼は外務省の関与する「外交フォーラム」への記事執筆の他、外交関連の主要な会議にも多数参加しており、事実上日本の外交にアカデミズムの分野から関与していると思われる重要人物の一人である。そして、彼が英国の図書館で外交関連の資料を一心に読み耽っているのは、英国の支配階層であるユダヤ人がどの様に世界を支配してきたかという「真の英国外交史」を洗い出すためではないかと思われる。現時点ではその真の目的も、研究成果も公には出来ないだろうが、細谷氏が取り上げたスエズ戦争でのイーデン英国首相と米国のダレス国務長官のやりとりは単なる表向きのものであり、裏ではユダヤ金融資本から下された命令に従って、「英国の無惨な敗北と米国への世界覇権移動」を演出していたのではないか?
細谷雄一氏は北海道大学法学部講師であった数年前から掲示板を立ち上げており、私は当時から定期的にチェックしていたのだが、彼は最近「ブレジンスキーがリンゴをかじりながら歩いている街」に留学するJFK氏との掲示板上のやりとりの中で注目すべき事を述べている。
『「ネオコン」については、JFK君のいうように、日本のみならず世界で、きわめて安易で敵対的なレッテルが貼られてきて、やや過剰に反感が芽生えているように思えます。研究者の端くれとして、このような現象をどのように考えるべきかという、真摯で学問的な態度が必要で、感情的な批判と弁護は確かに非生産的かと思います。』
『一番衝撃的だったのは、Heritage Instituteでした。JFK君ならよくご存じだと思いますが、レーガン元大統領を神のようにあがめ、保守主義者にとっての重要な拠点であるシンクタンクです。まさにおとぎ話のように、聖書に関連する象徴が各所にちりばめられており、レーガンの肖像が、写真が溢れ、アメリカの偉大さを感じさせる特殊な空間でした。いわゆるネオコンの範疇に属する人たちは、われわれのイメージとは異なり、多くの場合礼儀正しく、親日的で、知的な人々ですよね。』
「民主主義を世界に広めることは正しい!」と主張する人々であるネオコンは、狂信的な民主主義原理主義者的扱いを受けてきたが、実際にはユダヤ金融資本を弱体化させイスラエルを滅亡させる事を目的に演技している陰謀家ではないかと私は考えてきた。共産主義が一見貧者の味方と評価されるが実際にはユダヤ金融資本の世界支配のための偽装された理論であったとされるのと同様の陰謀論である。「礼儀正しく知的な人々」が「狂信的な民主主義原理主義」を信奉するということを私はどうしても理解できない。また、米国の同盟国である君主制のアラブ産油国の多くは非民主的で、敵国であるイランやかつてのイラクは議会を有する点で相対的に民主的であった。反米感情の強い中東では、民主主義は反米主義に直結することは容易に理解されるものである。更に、米国の大統領が何度も暗殺や暗殺未遂にあってきたこと、二大政党制の元では両方の政党がユダヤ金融資本に支配され、FRBもユダヤ金融資本に支配されており、米国は事実上英国の支配階層=ユダヤ人の独裁体制になっていること、米国大統領選挙の不正疑惑などを考えれば、「民主主義=正義」という民主主義原理主義が如何に空虚なものであるかは自明である。進化論を否定し中絶を容認せずハルマゲドン到来を待ち望む米国中西部や南部のキリスト教原理主義者なら話は別だが、「知的・賢明」なネオコンが、原理主義の空虚さを理解できないとは思えない。細谷氏も、イーデンの「外交には軍事力が必須である」との主張を近著で取り上げていることからも、空想的平和主義者ではなくリアリストであると考えられ、ネオコンの民主主義原理主義に簡単に洗脳されるとは思えない。
恐らく、細谷氏は高名な研究者であり陰謀論を軽々しく口にすることはできないから「安易で敵対的なレッテルが貼られている」「ネオコンを真摯に学問的に分析すべき」としか言えないのだろう。彼の「礼儀正しく、知的な人々」との発言は、ネオコンは合理的・理性的な人々であることを示しており、「民主主義を世界に広めることは正しい!」という狂信的な主張は真の行動目的を隠すための偽装であることを言いたいのではないかと思われる。また、「ネオコンは親日的」との発言も、ユダヤ金融資本を打倒するという共通の目的のもとにネオコンと日本政府は同盟関係にあることを主張したいのではないかと想像する。
「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」の『イラク戦争の「プランA」と「プランB」』の記事では、「陰謀理論を信奉する人たちは、ブッシュ大統領が、就任したそのときからイラクの石油資源を支配しようとする秘密計画を持っていたと主張する。それは違う。彼らは間違っている。ブッシュには二つの計画があったのだ。一つ目は「ネオコン」が国防総省で作った計画であり、もう一つは、国務省とビッグ・オイルが練り上げたものだ。これは二つのパワー・エリート派閥による、冷戦といっていいものだ。これがチグリス川で繰り広げられた戦争の原動力になっているのだ」と明快に陰謀論を切って捨てている。しかし、ネオコンが知的・理性的な人々であるならば、「原理的な自由経済主義」を信奉することはあり得ないようにも思われる。原理主義と合理主義は本来対極に位置するものだからである。いつも質の高い記事を紹介してくれる点で注目している「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」とは矛盾してしまうのだが、私はやはり陰謀論を捨てきれない。
ただ、以上の私の考えは確固たる根拠があるわけでもなく、単なる陰謀マニアの愚かな妄想に過ぎないのかもしれない。ネオコンが一体何者で、何を目的に活動しているのかについては今後も慎重に観察していく必要があるだろう。
・ネオコンが徘徊する空間 投稿者:ほそや 投稿日: 7月25日(火)
ワシントンDCについては、私はとても良い記憶が残っています。緑が多く、整然としていて、洗練されていて一部肩に力が入った人たちが歩いている街。2000年に、ちょうど9・11テロの一年前の同じ時期に、国務省招待プログラムで国務省、ペンタゴン、下院、CFR、ジョンズ・ホプキンス大学などを、一週間で回りました。
しかし一番衝撃的だったのは、Heritage Instituteでした。JFK君ならよくご存じだと思いますが、レーガン元大統領を神のようにあがめ、保守主義者にとっての重要な拠点であるシンクタンクです。まさにおとぎ話のように、聖書に関連する象徴が各所にちりばめられており、レーガンの肖像が、写真が溢れ、アメリカの偉大さを感じさせる特殊な空間でした。いわゆるネオコンの範疇に属する人たちは、われわれのイメージとは異なり、多くの場合礼儀正しく、親日的で、知的な人々ですよね。
そうそう、一冊忘れていました。中西寛先生が、朝日新聞で書評も書いておりましたが、レオ・シュトラウス『リベラリズム 古代と近代』は、とても重要な一冊でしょうね。これを、ジョン・グレイ『自由主義論』や、アイザイア・バーリン『自由論』と並べて読んでみるととてもよい思考のトレーニングになるかと思います。半澤孝麿『ヨーロッパ思想史の中の自由』も加えると、さらに立体的になります。これこそがまさに、「人類史におけるネオコンの意義」を相対的に位置づける作業への重要な準備となるかと思いますし、豊かな「自由主義」に対する理解へと結びつくのかもしれません。少なくとも、それはとても知的な作業であるはずです。それは、JFK君が日本での安易なアメリカ批判、ネオコン批判を「批判」することと同様な意味を持つであろうと思います。もちろん、ステレオタイプとなっているように、シュトラウスを「ネオコンの父」と断罪するつもりはありませんが、彼はとても知的な仕事をした知識人であることは間違いありませんし、彼を理解する上では、彼の人生や、おかれた境遇、環境、同時代的な意味合いを考える必要があるのだと思います。
是非とも、いろいろなところへもぐり、色々な贅沢なセミナーをのぞきこみ、また、色々な「巨人」達に接してください。一生の財産になるかと思います。
・留学に向けて 投稿者:JFK 投稿日: 7月25日(火)
細谷先生
ご丁寧な解説と参考文献紹介をありがとうございます。参考文献については英語文献を提示していただきましたので、留学に向けて、アメリカ外交およびネオコンについての知識だけでなく、英語の体力をつけるためにもいくつか読んでみたいと思います。
The Price of America's Empireは久しぶりにその名前を聞きました。ぼくがアメリカ外交の意義について考えるときの(ぼくだけでなく多くのアメリカ学者がそうだとは思いますが)、基本になっている文献の一つです。自分の考えを再確認するためにも改めて読んでみようと思います。
そして、先生もおっしゃるように、ネオコンについて理解においては近年の著書だけでなく、アメリカの古典、さらにはギリシャにさかのぼる古典にまで探求の手を伸ばしてみる、このことを改めて肝に銘じておきます。思想についての勉強がまったくなっていないぼくが「人類史におけるネオコンの意義」などと声高に言えないことを再確認しました。
『アメリカによる民主主義の推進』については、amazonのお知らせメールでその存在を知りました。amazonで注文すると1,2週間もかかるそうなので、大型の本屋で探してみます。タイトルもさることながら、ヘンリー・ナウが投稿しているというのは大変興味深いです。
ワシントンDCではジョージ・ワシントン大学のナウの授業にももぐってこようと思っています。そして、なにより本物のネオコンが徘徊している空間、ワシントンDC、といったら言いすぎでしょうか。あるアメリカ外交研究者によると、ブレジンスキーがリンゴをかじりながら歩いている街、だそうです。
先生も、東海岸にお寄りになる際にはご一報ください。
・アメリカによる民主主義の推進 投稿者:ほそや 投稿日: 7月24日(月)
下記の、アメリカ外交とネオコンとの連関性についての書き込みを書いた後に、この問題と関連した良書が最近翻訳されたことを思い出しました。猪口孝、マイケル・コックス、ジョン・アイケンベリー編『アメリカによる民主主義の推進』(ミネルヴァ書房: 国際政治・日本外交叢書①)です。
この中には、編者以外でも、マイケル・ドイル、トニー・スミス、ヘンリー・ナウをはじめとした、このテーマについての最良の学者たちが、アメリカ外交における理念的側面について優れた論文を寄せております。価格が7500円と学生の皆さんには大変厳しい価格ではありますが、関心をお持ちであれば、とても有益な一冊だと思います。なお論者は、リベラル系が多いのですが、ネオコンの多くが民主党の戦闘的リベラルから共和党に移った人たちであるように、実は民主主義の促進というテーマをめぐっては、リベラルとネオコンが、同じところから出発した大きく異なる学派であることが理解できるかもしれません。それは、旧約聖書から出発して、大きく異なる宗派となった、ユダヤ教とプロテスタントの違いにもにているのかもしれません。そして、最近のアメリカのプロテスタントの福音派の中の右派と、アメリカにおけるユダヤ教徒が、多くの問題で立場をほぼ共有しているのも、興味深い状況ですね。
なお、山内進『十字軍の思想』(筑摩新書)では、かつての十字軍の思想が、現在ではプロテスタント、とりわけアメリカにおけるプロテスタントに受け継がれているという興味深い指摘をしておりまして、この点も、ネオコンとプロテスタントのキリスト教右派との接点を探る上で、興味深い点です。山内進編『「正しい戦争」という思想』も同様に、きわめて高い水準の研究成果です。ご参照くださいませ。
・ネオコンとアメリカ外交 投稿者:ほそや 投稿日: 7月24日(月)
JFK君、アメリカ留学を目前に控えて、心境はいかがでしょうか。これから色々と落ち着かなくなっていくかもしれませんが、向こうでは本当に素晴らしい多くの経験をなさることでしょうね。
「ネオコン」については、JFK君のいうように、日本のみならず世界で、きわめて安易で敵対的なレッテルが貼られてきて、やや過剰に反感が芽生えているように思えます。研究者の端くれとして、このような現象をどのように考えるべきかという、真摯で学問的な態度が必要で、感情的な批判と弁護は確かに非生産的かと思います。
ウェーバー流に「責任倫理」として、確かにイラク戦争を結果から論じることも可能ですし、逆に結果として占領後に多くの問題を生じさせた故に批判が増えているというご指摘ももっともかと思います。その意味では、イラク戦争の最大の問題は、開戦である以上に、占領政策の準備不足とその後の不手際で不必要な市民の殺傷であったのだろうと考えています。
他方でレナードの著書のタイトルの『アンチ・ネオコンの論理』は、明らかに本来の本の意図からは大きく離れています。元のタイトルは、Why Europe will run the 21st centuryですので。
ネオコンについては、私は一定程度の必要性と、歴史的な必然性も感じています。その点については、Niall Ferguson, Colossus: The Price of America's Empireにも書かれているとおりですね。圧倒的な力を持ったアメリカが、自由や民主主義という価値を広げることは、アメリカが世界での一切の関与を止める場合のデメリットと比較した際安易な批判をするべきではないのかもしれません。
反対に、近年世界でなぜ「anti-Americanism」が広がったのかも、ある程度学問的に検討する必要があります。それを感情的に反発するのもまた非建設的です。
Andrew Ross and Kristin Ross (eds.) Anti-Americanismと、
Brendon O'Connor and Martin Griffiths (eds.) The Rise of Anti-Americanism
はそのような学問的な論文集です。もちろん、リベラル派の執筆者が多いという点も割り引いて考えるべきですが。
他方で、近年良質なアメリカ外交論の中で、ネオコンの問題が論じられることもあります。マイケル・マンやボブ・ウッドワードなどの翻訳書以外でも、下記のような研究があります。そこでは、ネオコンにやや擁護的な議論から、バランスのとれた議論、そしてかなり厳しい
リベラルからの批判と、多様な議論があります。
Stefan Halper & Jonatahn Clarke, America Alone: The Neo-Conservatives and the Global Order (CUP, 2004)
Colin S. Gray, The Sheriff: America's Defense ofthe New World Order (Kentucky UP, 2004)
Ivo H. Daalder and James M. Lindsay, America Umbound: The Bush Revolution in Foreign Policy (Brookings, 2003)
Stephen M. Walt, Taming American Power: The Global Response to US Primacy (Norton, 2005)
Robert D. Schulzinger (ed.) A Companion to American Foreign Relations (Blackwell, 2006)
Stanley Hoffman, Guliver Umbound: America's Imperial TEmptation and the War in Iraq (Rowan & Little Field, 2003)
それと、アメリカ外交の理念的源泉を理解するためには、
Michael H. Hunt, Ideology and US Foreign Policy (Yale UP, 1987)
が古いですが依然として最善だと考えています。
マルクスが「共産主義」について皮肉を込めて語ったように、「今世界には、ネオコンという妖怪が歩き回っている」と論じるのではなくて、あくまでも、アメリカ外交における理念的潮流の一つの流れ、そして特徴ある複合的で多面的な総体としてとらえることが、重要なのだろうと思います。それが、JFK君のいう、「人類史における彼らの思想の意義」を考えるヒントなのだろうと思います。もちろん、そこで「人類史」という以上は、ハーツ以外にも、トックヴィルやフェデラリスト達のアメリカ論も理解する必要があるのでしょうし、あるいは、ギリシャ古典以来の人類史の中で相対的に評価することも重要なのでしょうね。
上記のアメリカ外交の著書の一部はすでにご覧になっているかもしれませんが、是非ともワシントンで間近にアメリカ政治外交を視る良い機会ですので、それらの話題になっている著書をお読みになり、ご準備なさるのも良いかもしれませんね。
http://6107.teacup.com/hosoya/bbs?
●イラク戦争の「プランA」と「プランB」 ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報 2006年 08月 16日
最近、ガーディアン紙記者だった、グレッグ・パラスト氏の新作「アームド・マッドハウス」を手に入れた。この本は、『金で買えるアメリカ大統領』と同様にブッシュやビッグオイルの政治工作を暴いています。
全文を読んでいないが、表紙をめくったところにイラスト付きで「イラク戦争」の本当の目的である「資源確保の問題」が解説されていた。これが非常に面白い。かつ説得力がある。
俗に言われているイラク戦争における「中道派とネオコンの対立」の問題に明確な回答を与えてくれるもの。
パラスト氏は書く。
「陰謀理論を信奉する人たちは、ブッシュ大統領が、就任したそのときからイラクの石油資源を支配しようとする秘密計画を持っていたと主張する。それは違う。彼らは間違っている。ブッシュには二つの計画があったのだ。一つ目は「ネオコン」が国防総省で作った計画であり、もう一つは、国務省とビッグ・オイルが練り上げたものだ。これは二つのパワー・エリート派閥による、冷戦といっていいものだ。これがチグリス川で繰り広げられた戦争の原動力になっているのだ」
このように彼は書いています。
プランA:ブッシュ政権発足の2001年2月に、国務省と国家安全保障会議が「イラクの政権転覆」を計画。これはクーデターに見せかけたもので、2,3日で終了すると言う計画だった。政府が石油資源を独占する点は変えない。
プランB;9月11日のテロのあと、ネオコン派はプランAに対抗する計画を提案。数年間のイラク占領を行い、イラクに自由市場の奇跡を起こす計画。この計画は、共和党の企業ロビーストのノーキストを喜ばせた。民営化によって政府資産(むろん石油も)外資に売り渡す計画だった。
民営化によってイラク石油を外資が買収すると同時に、プランBはプランAが頼りにしているサウジアラビアとOPECの撃滅も考えていたようだ。OPECを潰すことで、ネオコン派は原油価格の低下とサウジアラビアのアメリカへの屈服をもくろんでいたという。これはPNACらの戦略でもある。
<中略>
つまり、ネオコン派は、プランAの胴元のCFRとジェイムズ・ベイカーに手なずけられたということのようです。対ネオコン派では、ビッグ・オイルの勝利なのでしょう。しかし、この緊張関係は今も続いており、レバノン問題でもその一端が出たように思います。
ビッグオイル:独占主義(自分たちの言うことをきくなら政府国営石油会社支持)
ネオコン:原理的な自由経済主義
と言う分類が成り立つわけで、ここにネオコンとリアリストの対立の根元もあるようなのです。
少しだけアメリカの分裂の薄皮が剥がれたように思います。東部財閥系と地域資本の対立という現象からさらに分裂の形態が変わってきているようです。
http://amesei.exblog.jp/d2006-08-16
【私のコメント】
北方領土周辺海域で日本の漁船がロシア警備艇に銃撃され死者が出たとの報道で日露間の対立が一見激化しているが、この船の船長は過去にレポ船としてソ連に機密情報や物資を運ぶ代わりに密漁を容認されていた要注意人物であるようだ。この船長が組合長を務める根室湾中央漁協も、他の漁協を追放された悪質な密漁常習者が多いという怪情報もネット上に見られる。ソ連無き今はレポ船の需要も消失しているはずだが、過去の経緯からロシア側も密漁継続を認めざるを得なかったのかもしれない。このような不健全な状態はマフィアとの癒着等も生みやすいし、そもそも密漁は他の規則を遵守する漁民の犠牲のもとに成り立っている事を考えると、今回の事件は日本側・ロシア側共に非常に利益が大きい様にも思われる。死者が出たことも、根室の密漁者への警告が目的であろう。遺体は日本に送られていないので、本当に射殺されたかどうかも不明である。ロシアの国益を考えると、殺さずにロシア領内に留置して取り調べ、マフィア等との癒着の有無を含め事情を詳しく聞き出す方が有効なようにも思われる。この事件については現時点では分からないことが多すぎる。
さて、本題のネオコンに戻ろう。細谷雄一氏は1971年生まれと若いが慶応大学法学部助教授で英国外交史の研究者である。近著「外交による平和」では第一次大戦後からスエズ戦争までの期間、チャーチルの裏方として英国外交の中心人物の一人であったイーデン元首相を扱っているが、多くの著名な国際政治学者から非常に質の高いものであると評価されている。私も買って読んだが、その詳細な分析と冷静な記述には感心した覚えがある。彼は外務省の関与する「外交フォーラム」への記事執筆の他、外交関連の主要な会議にも多数参加しており、事実上日本の外交にアカデミズムの分野から関与していると思われる重要人物の一人である。そして、彼が英国の図書館で外交関連の資料を一心に読み耽っているのは、英国の支配階層であるユダヤ人がどの様に世界を支配してきたかという「真の英国外交史」を洗い出すためではないかと思われる。現時点ではその真の目的も、研究成果も公には出来ないだろうが、細谷氏が取り上げたスエズ戦争でのイーデン英国首相と米国のダレス国務長官のやりとりは単なる表向きのものであり、裏ではユダヤ金融資本から下された命令に従って、「英国の無惨な敗北と米国への世界覇権移動」を演出していたのではないか?
細谷雄一氏は北海道大学法学部講師であった数年前から掲示板を立ち上げており、私は当時から定期的にチェックしていたのだが、彼は最近「ブレジンスキーがリンゴをかじりながら歩いている街」に留学するJFK氏との掲示板上のやりとりの中で注目すべき事を述べている。
『「ネオコン」については、JFK君のいうように、日本のみならず世界で、きわめて安易で敵対的なレッテルが貼られてきて、やや過剰に反感が芽生えているように思えます。研究者の端くれとして、このような現象をどのように考えるべきかという、真摯で学問的な態度が必要で、感情的な批判と弁護は確かに非生産的かと思います。』
『一番衝撃的だったのは、Heritage Instituteでした。JFK君ならよくご存じだと思いますが、レーガン元大統領を神のようにあがめ、保守主義者にとっての重要な拠点であるシンクタンクです。まさにおとぎ話のように、聖書に関連する象徴が各所にちりばめられており、レーガンの肖像が、写真が溢れ、アメリカの偉大さを感じさせる特殊な空間でした。いわゆるネオコンの範疇に属する人たちは、われわれのイメージとは異なり、多くの場合礼儀正しく、親日的で、知的な人々ですよね。』
「民主主義を世界に広めることは正しい!」と主張する人々であるネオコンは、狂信的な民主主義原理主義者的扱いを受けてきたが、実際にはユダヤ金融資本を弱体化させイスラエルを滅亡させる事を目的に演技している陰謀家ではないかと私は考えてきた。共産主義が一見貧者の味方と評価されるが実際にはユダヤ金融資本の世界支配のための偽装された理論であったとされるのと同様の陰謀論である。「礼儀正しく知的な人々」が「狂信的な民主主義原理主義」を信奉するということを私はどうしても理解できない。また、米国の同盟国である君主制のアラブ産油国の多くは非民主的で、敵国であるイランやかつてのイラクは議会を有する点で相対的に民主的であった。反米感情の強い中東では、民主主義は反米主義に直結することは容易に理解されるものである。更に、米国の大統領が何度も暗殺や暗殺未遂にあってきたこと、二大政党制の元では両方の政党がユダヤ金融資本に支配され、FRBもユダヤ金融資本に支配されており、米国は事実上英国の支配階層=ユダヤ人の独裁体制になっていること、米国大統領選挙の不正疑惑などを考えれば、「民主主義=正義」という民主主義原理主義が如何に空虚なものであるかは自明である。進化論を否定し中絶を容認せずハルマゲドン到来を待ち望む米国中西部や南部のキリスト教原理主義者なら話は別だが、「知的・賢明」なネオコンが、原理主義の空虚さを理解できないとは思えない。細谷氏も、イーデンの「外交には軍事力が必須である」との主張を近著で取り上げていることからも、空想的平和主義者ではなくリアリストであると考えられ、ネオコンの民主主義原理主義に簡単に洗脳されるとは思えない。
恐らく、細谷氏は高名な研究者であり陰謀論を軽々しく口にすることはできないから「安易で敵対的なレッテルが貼られている」「ネオコンを真摯に学問的に分析すべき」としか言えないのだろう。彼の「礼儀正しく、知的な人々」との発言は、ネオコンは合理的・理性的な人々であることを示しており、「民主主義を世界に広めることは正しい!」という狂信的な主張は真の行動目的を隠すための偽装であることを言いたいのではないかと思われる。また、「ネオコンは親日的」との発言も、ユダヤ金融資本を打倒するという共通の目的のもとにネオコンと日本政府は同盟関係にあることを主張したいのではないかと想像する。
「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」の『イラク戦争の「プランA」と「プランB」』の記事では、「陰謀理論を信奉する人たちは、ブッシュ大統領が、就任したそのときからイラクの石油資源を支配しようとする秘密計画を持っていたと主張する。それは違う。彼らは間違っている。ブッシュには二つの計画があったのだ。一つ目は「ネオコン」が国防総省で作った計画であり、もう一つは、国務省とビッグ・オイルが練り上げたものだ。これは二つのパワー・エリート派閥による、冷戦といっていいものだ。これがチグリス川で繰り広げられた戦争の原動力になっているのだ」と明快に陰謀論を切って捨てている。しかし、ネオコンが知的・理性的な人々であるならば、「原理的な自由経済主義」を信奉することはあり得ないようにも思われる。原理主義と合理主義は本来対極に位置するものだからである。いつも質の高い記事を紹介してくれる点で注目している「ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報」とは矛盾してしまうのだが、私はやはり陰謀論を捨てきれない。
ただ、以上の私の考えは確固たる根拠があるわけでもなく、単なる陰謀マニアの愚かな妄想に過ぎないのかもしれない。ネオコンが一体何者で、何を目的に活動しているのかについては今後も慎重に観察していく必要があるだろう。
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