●トルコ軍、イラク北部へ進攻 国際ニュース : AFPBB News 2007年12月18日 23:02 発信地:アルビル/イラク
【12月18日 AFP】(一部更新)トルコ軍は18日朝、武装組織クルド労働者党(Kurdistan Workers' Party、PKK)掃討のためイラク北部に進攻した。イラクのクルド人民兵組織ペシュメルガ(Peshmerga)の報道官が明らかにした。
イラク北部のクルド人自治区政府の報道官によると国境を越えたのは約300人で、国境内3キロまで進攻したという。トルコ軍の地上進攻が伝えられたのは、クルド人問題をめぐってトルコ政府とイラク政府の緊張が高まった10月以来初めて。
ペシュメルガの報道官は「(トルコ軍が)進攻したのは無人地帯で、イラク軍やペシュメルガの部隊はいない」と話した。PKKの司令官も「午前4時にトルコ軍歩兵隊が空からの支援を受け、イラク国境を越えた」と述べた。
クルド自治政府のマスード・バルザニ(Massud Barzani)議長率いるクルド民主党(KDP)系のテレビ局は、トルコ軍がイラク国内のSeed Qanと呼ばれる地域から数キロ地点に進攻し、Khaya Rash、Bunwaq、Janarouq、Keliroshの村に到達してそこを基地にしたと報じた。
トルコの首都アンカラ(Ankara)の軍高官は取材に対し、軍が越境したとの確認は取れていないと話している。
アブドラ・ギュル(Abdullah Gul)トルコ大統領は中部コンヤ(Konya)で、軍の越境進攻について「テロリズムと闘うために必要なことを行っている」と述べた。CNNトルコが報じた。
これに先立ちトルコ軍は16日、イラク国境地帯を拠点とするPKK掃討のため、この地域の複数の村を空爆している。軍参謀総長のヤシャル・ビュユクアヌト(Yasar Buyukanit)将軍は同日、米政府が情報を提供し、イラク北部の領空を開放してくれたと述べ、米軍が攻撃を容認していたことを明らかにした。
米国務省は一連の攻撃について、これまでのイラク北部空爆の一環だとしたが、トルコ政府への支援の内容については否定も肯定もしていない。(c)AFP/Abdel Hamid Zebari
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2327428/2465661
●PKKに「大きな打撃」 トルコ軍が声明 - MSN産経ニュース 2007.12.19 11:42
トルコ軍は18日、同日実施したイラク北部への空爆や地上部隊による越境軍事作戦で、北部を拠点とする非合法武装組織クルド労働者党(PKK)に「大きな打撃を与えた」とする声明を発表した。
声明は、作戦は小規模なもので、部隊は国境からイラク領内に数キロ入ったとしている。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/071219/mds0712191142004-n1.htm
●イラク北部で空爆、女性1人死亡=「米が同意」と軍高官-トルコ 時事ドットコム 2007/12/17-07:21
【エルサレム17日時事】トルコ空軍は16日、イラク北部のクルド自治区でトルコの反政府組織、クルド労働者党(PKK)の拠点とみられる場所を空爆、同自治区からの報道によると、民間人の女性1人が死亡した。
同軍高官はトルコの地元メディアに対し、空爆を行ったことを認めた上で、「作戦は米国の同意を得た上で実行した」と説明した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007121700026
●トルコのイラク北部空爆容認=米 時事ドットコム 2007/12/18-10:40
【ワシントン17日時事】ケーシー米国務省副報道官は17日の記者会見で、トルコ軍が16日にイラク北部にあるトルコの反政府組織、クルド労働者党(PKK)の拠点に空爆を加えたことについて、事実上容認する立場を示した。
副報道官は「PKKはトルコやイラク、米国にとって脅威であり、懸念している」とした上で、「この脅威に対処するため、あらゆる措置を講じることが重要だ」と述べた。ただ、対応措置を取る上で、米、トルコ、イラク3国が緊密に協調していくべきだと語った。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007121800284
●中日新聞:クルド、米長官と会談拒否 トルコ攻勢容認に反発:国際(CHUNICHI Web)
2007年12月19日 09時37分
【カイロ19日共同】イラクからの報道によると、同国北部のクルド自治政府の最高指導者マスード・バルザニ議長は18日、イラクを訪れたライス米国務長官との会談を拒否した。
トルコは非合法武装組織クルド労働者党(PKK)掃討のため自治区内で攻勢を掛け、米国は事実上容認。フランス公共ラジオによると、自治政府のネチルバン・バルザニ首相は、議長が「トルコの攻撃に対する米国の立場への抗議の印として」会談が予定された首都バグダッドに行かなかったとの見方を示した。
米国にとってイラク北部の安定には独自の民兵組織を持つ自治政府の協力が不可欠。米国はトルコとの良好な関係維持に腐心しているが、過度の肩入れを警戒する自治政府が会談拒否で米国に揺さぶりを掛けた形だ。
自治政府は領内でのトルコの軍事行動に不快感を再三表明。バルザニ議長はトルコの越境攻撃に対し民兵による反撃をほのめかしたことがあるほか、自治政府が同胞意識からPKKを支援しているとの指摘もある。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007121901000183.html
●イラク:トルコ軍の越境攻撃に非難強める - 毎日新聞 2007年12月19日 20時02分
【カイロ高橋宗男】イラク北部に潜伏するクルド系武装組織「クルド労働党(PKK)」を狙ったトルコ軍の越境攻撃に、イラクの連邦議会やクルド地域政府が非難を強めている。怒りの矛先は攻撃を黙認する米国にも向けられ、ロイター通信によるとバルザニ地域政府議長は18日、イラク訪問中のライス米国務長官との会談を拒否した。
また、AP通信によるとイラク連邦議会は18日、トルコ軍による同日の越境攻撃を「甚だしい主権侵害だ」と強く非難した。イラク側はトルコの「対テロ戦」に理解を示しつつ、越境攻撃にはイラク、トルコ、米国の連携が必要との立場。トルコ非難は、イラクを無視した形で越境攻撃が繰り返されることへの不満の表れだ。
クルド地域政府は、トルコ軍機による越境空爆の際に「米国がイラク領空の通過を認めた」とのトルコからの情報を重視。バルザニ議長はライス長官との会談をボイコットすることで、米国への抗議の意思を表明したとみられる。
トルコ政府はイラク政府にPKKへの圧力強化を再三要請し、イラク側も協力を表明している。だが、イラク北部のクルド地域に中央政府の影響力は及んでおらず、実際のPKK対策はクルド地域政府の「さじ加減」次第というのが実態だ。
地域政府はPKK支援政党事務所の閉鎖や山岳地帯への物資搬送の制限などでトルコへの協力をアピールしている。しかし、トルコ側は地域政府のPKK対策は「手ぬるく、PKK支援の側面さえある」とみて不満を強めている。
http://mainichi.jp/select/world/news/20071220k0000m030086000c.html
【私のコメント】
トルコ陸軍がとうとう国境を越えてイラク領内に侵攻し始めた。以前から空爆は継続されており、国境を越えた陸軍の行動も未確認ではあったが報道されていた。しかし、今回はイラク領内への陸軍の侵攻が公式に認められた。更にクルド自治政府系テレビの報道によると、トルコ軍はイラク側の村幾つかを基地にしているとのことで、それが真実であるとすればトルコ軍がイラク領土内に駐留する体制、即ち占領体制が開始されたと想像される。人数・作戦行動範囲ともに小規模ではあるが、トルコ軍はとうとうルビコン川を渡って後戻りのできないイラク北部占領作戦に突入した様に思われる。
このトルコ軍の作戦を米国が容認していることも注目される。米国が中東の国境線を民族分布にあわせたものに変更するという目的のためにイラク占領でわざと負けようとしているのと同様に、トルコもまたクルド人及びクルド人居住地域という不良資産を一挙に切り捨てるために泥沼のイラク北部占領作戦を実行して敗北しようとしているのではないかというのが私の想像である。
現在のトルコの行動は第二次大戦での日本の作戦にも似通っていると思われる。第二次大戦で日本は米国・英蘭連合・中国の三カ国を敵に回したが、現在のトルコはイラク・北キプロスの二正面作戦であり、近未来にはコソボを巡ってセルビア・ロシア連合をも敵に回す可能性がある。また、日本の対中戦争が宣戦布告なしにどんどん拡大し泥沼化したのと同様に、トルコの対イラク軍事活動は宣戦布告なしに空爆→陸軍の侵入・占領と拡大しつつある。日本の対中戦争で重慶の蒋介石政府が停戦交渉の対象から外されて停戦できなくなったのと同様に、トルコ政府はバグダッド政府のみを交渉相手としてクルド自治政府をPKK関連交渉の相手として認めておらず、軍事行動を終結させるための交渉相手がいなくなっている。私の想像が正しいならば、トルコ軍は今後イラク北部での占領地域を徐々に拡大し、クルド自治政府を「PKKを支援している」との理由で激しく非難して軍事攻撃して泥沼のゲリラ戦に突入することだろう。そして、北キプロスやコソボの紛争にも介入して二正面・三正面作戦に突入し、敗北して国土を切り刻まれることだろう。トルコ政府はその敗北によって不良資産を切り捨てる事に成功し、第二次大戦後の日本のように急速に先進国化することを狙っているのではないだろうか。JJ予知夢のいう「2035年のトルコ大国化」はその様なシナリオが国際社会で既に合意されていることを示している様に思われる。
【2008年2月24日追記】
●イラク北部に侵攻=PKK掃討目的、1万人越境か-トルコ軍 時事通信 2008/02/22-19:22
【エルサレム22日時事】 トルコ軍は22日、声明を出し、イラク北部に対する地上攻撃を21日夜に開始したと発表した。同地を拠点とするトルコの反政府組織、クルド労働者党(PKK)掃討が目的。トルコのNTVテレビは、既に1万人の部隊が越境したと報じた。
トルコ軍はこれまで、イラク北部でPKK拠点への空爆や限定的な地上作戦を展開していた。本格的な地上部隊投入に踏み切ったとすれば、イラク北部のクルド自治政府との交戦に発展し、地域情勢の流動化につながる恐れがある。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008022200860
●イラク越境攻撃で49人死亡 トルコ軍、米など自制要求 - MSN産経ニュース2008.2.23
トルコ軍は22日、非合法武装組織クルド労働者党(PKK)掃討のためのイラク北部への越境作戦で、トルコ軍とPKKが衝突し、軍兵士5人とPKK戦闘員24人が死亡したと発表した。また、砲撃やヘリコプターからの銃撃で少なくとも20人のPKKの戦闘員が死亡したことを明らかにした。
米国とイラクは作戦の事前通報を受けたが、イラク北部の不安定化を懸念。トルコに対し、米国は標的をPKKに絞った限定的な作戦にとどめるよう求め、イラクは武力行使を回避するよう訴えた。トルコが加盟を目指す欧州連合(EU)もトルコに自制を要請した。
トルコ軍は作戦期間を明らかにしていないが、トルコの地元テレビによると、作戦は2週間続く可能性がある。23日以降、イラク領内でのPKK掃討を強化するとの見方も浮上。トルコ軍がクルド人自治区の民兵組織と衝突する恐れもあり、国境一帯は緊張が高まっている。
トルコのギュル大統領は声明で「作戦はイラクの安定と平和に寄与すると信じている」と述べた。イラク赤新月社によると、今回の作戦で4つの橋が破壊され、11家族が居住地からの移動を余儀なくされた。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/080223/mds0802231138004-n1.htm
●トルコ越境攻撃3日目、クルド人戦闘員の死者79人に CNN 2008.02.24
クルド労働者党(PKK)を標的としたトルコ軍によるイラク北部への越境軍事作戦で、16日に少なくとも35人のPKK戦闘員が死亡した。AP通信が同軍の発表として伝えたところによると、3日間の軍事作戦で死亡したPKK戦闘員は79人に増えた。また、トルコ軍側では16日に兵士2人が死亡し、合計死者数は7人となった。
トルコ軍のこうした軍事行動は、イラク当局の批判を招いている。イラク政府報道官は、同国大統領と首相が作戦見直しをトルコ側に要請したことを明らかにした。報道官は「われわれはトルコが直面している脅威を理解しているが、軍事作戦によってPKK問題は解決しないだろう」とコメントした。
トルコ国内メディアは、越境攻撃のトルコ軍が約1万人規模だと伝えている。英軍事評論家によると、2003年にイラクの旧フセイン政権が崩壊して以来では初の大規模軍事作戦で、雪上の足跡でPKK戦闘員が追跡できるうちに奇襲作戦を展開するのが狙いという。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200802240003.html
【12月18日 AFP】(一部更新)トルコ軍は18日朝、武装組織クルド労働者党(Kurdistan Workers' Party、PKK)掃討のためイラク北部に進攻した。イラクのクルド人民兵組織ペシュメルガ(Peshmerga)の報道官が明らかにした。
イラク北部のクルド人自治区政府の報道官によると国境を越えたのは約300人で、国境内3キロまで進攻したという。トルコ軍の地上進攻が伝えられたのは、クルド人問題をめぐってトルコ政府とイラク政府の緊張が高まった10月以来初めて。
ペシュメルガの報道官は「(トルコ軍が)進攻したのは無人地帯で、イラク軍やペシュメルガの部隊はいない」と話した。PKKの司令官も「午前4時にトルコ軍歩兵隊が空からの支援を受け、イラク国境を越えた」と述べた。
クルド自治政府のマスード・バルザニ(Massud Barzani)議長率いるクルド民主党(KDP)系のテレビ局は、トルコ軍がイラク国内のSeed Qanと呼ばれる地域から数キロ地点に進攻し、Khaya Rash、Bunwaq、Janarouq、Keliroshの村に到達してそこを基地にしたと報じた。
トルコの首都アンカラ(Ankara)の軍高官は取材に対し、軍が越境したとの確認は取れていないと話している。
アブドラ・ギュル(Abdullah Gul)トルコ大統領は中部コンヤ(Konya)で、軍の越境進攻について「テロリズムと闘うために必要なことを行っている」と述べた。CNNトルコが報じた。
これに先立ちトルコ軍は16日、イラク国境地帯を拠点とするPKK掃討のため、この地域の複数の村を空爆している。軍参謀総長のヤシャル・ビュユクアヌト(Yasar Buyukanit)将軍は同日、米政府が情報を提供し、イラク北部の領空を開放してくれたと述べ、米軍が攻撃を容認していたことを明らかにした。
米国務省は一連の攻撃について、これまでのイラク北部空爆の一環だとしたが、トルコ政府への支援の内容については否定も肯定もしていない。(c)AFP/Abdel Hamid Zebari
http://www.afpbb.com/article/war-unrest/2327428/2465661
●PKKに「大きな打撃」 トルコ軍が声明 - MSN産経ニュース 2007.12.19 11:42
トルコ軍は18日、同日実施したイラク北部への空爆や地上部隊による越境軍事作戦で、北部を拠点とする非合法武装組織クルド労働者党(PKK)に「大きな打撃を与えた」とする声明を発表した。
声明は、作戦は小規模なもので、部隊は国境からイラク領内に数キロ入ったとしている。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/071219/mds0712191142004-n1.htm
●イラク北部で空爆、女性1人死亡=「米が同意」と軍高官-トルコ 時事ドットコム 2007/12/17-07:21
【エルサレム17日時事】トルコ空軍は16日、イラク北部のクルド自治区でトルコの反政府組織、クルド労働者党(PKK)の拠点とみられる場所を空爆、同自治区からの報道によると、民間人の女性1人が死亡した。
同軍高官はトルコの地元メディアに対し、空爆を行ったことを認めた上で、「作戦は米国の同意を得た上で実行した」と説明した。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007121700026
●トルコのイラク北部空爆容認=米 時事ドットコム 2007/12/18-10:40
【ワシントン17日時事】ケーシー米国務省副報道官は17日の記者会見で、トルコ軍が16日にイラク北部にあるトルコの反政府組織、クルド労働者党(PKK)の拠点に空爆を加えたことについて、事実上容認する立場を示した。
副報道官は「PKKはトルコやイラク、米国にとって脅威であり、懸念している」とした上で、「この脅威に対処するため、あらゆる措置を講じることが重要だ」と述べた。ただ、対応措置を取る上で、米、トルコ、イラク3国が緊密に協調していくべきだと語った。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2007121800284
●中日新聞:クルド、米長官と会談拒否 トルコ攻勢容認に反発:国際(CHUNICHI Web)
2007年12月19日 09時37分
【カイロ19日共同】イラクからの報道によると、同国北部のクルド自治政府の最高指導者マスード・バルザニ議長は18日、イラクを訪れたライス米国務長官との会談を拒否した。
トルコは非合法武装組織クルド労働者党(PKK)掃討のため自治区内で攻勢を掛け、米国は事実上容認。フランス公共ラジオによると、自治政府のネチルバン・バルザニ首相は、議長が「トルコの攻撃に対する米国の立場への抗議の印として」会談が予定された首都バグダッドに行かなかったとの見方を示した。
米国にとってイラク北部の安定には独自の民兵組織を持つ自治政府の協力が不可欠。米国はトルコとの良好な関係維持に腐心しているが、過度の肩入れを警戒する自治政府が会談拒否で米国に揺さぶりを掛けた形だ。
自治政府は領内でのトルコの軍事行動に不快感を再三表明。バルザニ議長はトルコの越境攻撃に対し民兵による反撃をほのめかしたことがあるほか、自治政府が同胞意識からPKKを支援しているとの指摘もある。
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2007121901000183.html
●イラク:トルコ軍の越境攻撃に非難強める - 毎日新聞 2007年12月19日 20時02分
【カイロ高橋宗男】イラク北部に潜伏するクルド系武装組織「クルド労働党(PKK)」を狙ったトルコ軍の越境攻撃に、イラクの連邦議会やクルド地域政府が非難を強めている。怒りの矛先は攻撃を黙認する米国にも向けられ、ロイター通信によるとバルザニ地域政府議長は18日、イラク訪問中のライス米国務長官との会談を拒否した。
また、AP通信によるとイラク連邦議会は18日、トルコ軍による同日の越境攻撃を「甚だしい主権侵害だ」と強く非難した。イラク側はトルコの「対テロ戦」に理解を示しつつ、越境攻撃にはイラク、トルコ、米国の連携が必要との立場。トルコ非難は、イラクを無視した形で越境攻撃が繰り返されることへの不満の表れだ。
クルド地域政府は、トルコ軍機による越境空爆の際に「米国がイラク領空の通過を認めた」とのトルコからの情報を重視。バルザニ議長はライス長官との会談をボイコットすることで、米国への抗議の意思を表明したとみられる。
トルコ政府はイラク政府にPKKへの圧力強化を再三要請し、イラク側も協力を表明している。だが、イラク北部のクルド地域に中央政府の影響力は及んでおらず、実際のPKK対策はクルド地域政府の「さじ加減」次第というのが実態だ。
地域政府はPKK支援政党事務所の閉鎖や山岳地帯への物資搬送の制限などでトルコへの協力をアピールしている。しかし、トルコ側は地域政府のPKK対策は「手ぬるく、PKK支援の側面さえある」とみて不満を強めている。
http://mainichi.jp/select/world/news/20071220k0000m030086000c.html
【私のコメント】
トルコ陸軍がとうとう国境を越えてイラク領内に侵攻し始めた。以前から空爆は継続されており、国境を越えた陸軍の行動も未確認ではあったが報道されていた。しかし、今回はイラク領内への陸軍の侵攻が公式に認められた。更にクルド自治政府系テレビの報道によると、トルコ軍はイラク側の村幾つかを基地にしているとのことで、それが真実であるとすればトルコ軍がイラク領土内に駐留する体制、即ち占領体制が開始されたと想像される。人数・作戦行動範囲ともに小規模ではあるが、トルコ軍はとうとうルビコン川を渡って後戻りのできないイラク北部占領作戦に突入した様に思われる。
このトルコ軍の作戦を米国が容認していることも注目される。米国が中東の国境線を民族分布にあわせたものに変更するという目的のためにイラク占領でわざと負けようとしているのと同様に、トルコもまたクルド人及びクルド人居住地域という不良資産を一挙に切り捨てるために泥沼のイラク北部占領作戦を実行して敗北しようとしているのではないかというのが私の想像である。
現在のトルコの行動は第二次大戦での日本の作戦にも似通っていると思われる。第二次大戦で日本は米国・英蘭連合・中国の三カ国を敵に回したが、現在のトルコはイラク・北キプロスの二正面作戦であり、近未来にはコソボを巡ってセルビア・ロシア連合をも敵に回す可能性がある。また、日本の対中戦争が宣戦布告なしにどんどん拡大し泥沼化したのと同様に、トルコの対イラク軍事活動は宣戦布告なしに空爆→陸軍の侵入・占領と拡大しつつある。日本の対中戦争で重慶の蒋介石政府が停戦交渉の対象から外されて停戦できなくなったのと同様に、トルコ政府はバグダッド政府のみを交渉相手としてクルド自治政府をPKK関連交渉の相手として認めておらず、軍事行動を終結させるための交渉相手がいなくなっている。私の想像が正しいならば、トルコ軍は今後イラク北部での占領地域を徐々に拡大し、クルド自治政府を「PKKを支援している」との理由で激しく非難して軍事攻撃して泥沼のゲリラ戦に突入することだろう。そして、北キプロスやコソボの紛争にも介入して二正面・三正面作戦に突入し、敗北して国土を切り刻まれることだろう。トルコ政府はその敗北によって不良資産を切り捨てる事に成功し、第二次大戦後の日本のように急速に先進国化することを狙っているのではないだろうか。JJ予知夢のいう「2035年のトルコ大国化」はその様なシナリオが国際社会で既に合意されていることを示している様に思われる。
【2008年2月24日追記】
●イラク北部に侵攻=PKK掃討目的、1万人越境か-トルコ軍 時事通信 2008/02/22-19:22
【エルサレム22日時事】 トルコ軍は22日、声明を出し、イラク北部に対する地上攻撃を21日夜に開始したと発表した。同地を拠点とするトルコの反政府組織、クルド労働者党(PKK)掃討が目的。トルコのNTVテレビは、既に1万人の部隊が越境したと報じた。
トルコ軍はこれまで、イラク北部でPKK拠点への空爆や限定的な地上作戦を展開していた。本格的な地上部隊投入に踏み切ったとすれば、イラク北部のクルド自治政府との交戦に発展し、地域情勢の流動化につながる恐れがある。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008022200860
●イラク越境攻撃で49人死亡 トルコ軍、米など自制要求 - MSN産経ニュース2008.2.23
トルコ軍は22日、非合法武装組織クルド労働者党(PKK)掃討のためのイラク北部への越境作戦で、トルコ軍とPKKが衝突し、軍兵士5人とPKK戦闘員24人が死亡したと発表した。また、砲撃やヘリコプターからの銃撃で少なくとも20人のPKKの戦闘員が死亡したことを明らかにした。
米国とイラクは作戦の事前通報を受けたが、イラク北部の不安定化を懸念。トルコに対し、米国は標的をPKKに絞った限定的な作戦にとどめるよう求め、イラクは武力行使を回避するよう訴えた。トルコが加盟を目指す欧州連合(EU)もトルコに自制を要請した。
トルコ軍は作戦期間を明らかにしていないが、トルコの地元テレビによると、作戦は2週間続く可能性がある。23日以降、イラク領内でのPKK掃討を強化するとの見方も浮上。トルコ軍がクルド人自治区の民兵組織と衝突する恐れもあり、国境一帯は緊張が高まっている。
トルコのギュル大統領は声明で「作戦はイラクの安定と平和に寄与すると信じている」と述べた。イラク赤新月社によると、今回の作戦で4つの橋が破壊され、11家族が居住地からの移動を余儀なくされた。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/mideast/080223/mds0802231138004-n1.htm
●トルコ越境攻撃3日目、クルド人戦闘員の死者79人に CNN 2008.02.24
クルド労働者党(PKK)を標的としたトルコ軍によるイラク北部への越境軍事作戦で、16日に少なくとも35人のPKK戦闘員が死亡した。AP通信が同軍の発表として伝えたところによると、3日間の軍事作戦で死亡したPKK戦闘員は79人に増えた。また、トルコ軍側では16日に兵士2人が死亡し、合計死者数は7人となった。
トルコ軍のこうした軍事行動は、イラク当局の批判を招いている。イラク政府報道官は、同国大統領と首相が作戦見直しをトルコ側に要請したことを明らかにした。報道官は「われわれはトルコが直面している脅威を理解しているが、軍事作戦によってPKK問題は解決しないだろう」とコメントした。
トルコ国内メディアは、越境攻撃のトルコ軍が約1万人規模だと伝えている。英軍事評論家によると、2003年にイラクの旧フセイン政権が崩壊して以来では初の大規模軍事作戦で、雪上の足跡でPKK戦闘員が追跡できるうちに奇襲作戦を展開するのが狙いという。
http://www.cnn.co.jp/world/CNN200802240003.html
せりビアとロシアを敵に回さないといけないのか?
まさか、アルメニア人がイスラム教徒だからか?
でも、トルコとアルメニア人って仲が悪いだろう?
石油を産出しないトルコは長く戦闘をつずけることは出来ない。やがて来るであろう大戦争への布石である。そのとき今のイラク政府は存在しないかもしれない。私はたぶん地政学的な地点の確保が目的だトオモウ。(それはどこか判らない)従がって戦闘は拡大しない。彼等は我々の様に単純ではない。
アルメニア人はキリスト教徒ですよ。
>トルコ政府はその敗北によって不良資産を切り捨てる事に成功し、第二次大戦後の日本のように急速に先進国化することを狙っているのではないだろうか
確かに東部は切り捨てるだろう。しかし、欧州にとって関心があるのは東トラキアと海峡地帯だけである。
そして、彼らはイスラム教徒が退去した上でのコンスタンティノープルの返還を求めるはずである。
イスラムの台頭は、トルコ人からアタチュルクが築きあげた近代的な思考を消し去りつつある。
トルコ人の精神は、徐々に中世の時代の思考に回帰しつつあるということだ。
まあそういう役割かもしれんが。
高橋和夫の国際政治ブログ
2014-03-13 09:13:22 ウクライナ情勢とトルコ
トルコのアフメット・ダーヴトオール外相は、早々と新政権の誕生後のキエフを訪問した。NATO諸国との連帯を強調する行為であった。と言うよりは、NATOの一員として、この軍事同盟を新政権支持へと引っ張る動きでもあった。
この国は、オスマン帝国の時代以来、ロシアと数限りない戦争を繰り返し戦ってきた。しかも、その大半に敗れて広大な領土を奪われてきた。トルコ海峡は、ロシアの南下政策の常に目標であった。条件反射的なロシアへの警戒感はトルコのDNAである。トルコが親日なのも、宿敵ロシアを日本が日露戦争で打ち破ったからである。
第二次世界大戦後にはスターリンは、トルコに領土の割譲を要求した。トルコは、アメリカの後ろ盾を得て、これを拒絶した。またNATOへの加盟を目指した。NATOの一員であるということは、加盟国を守るためにアメリカが戦ってくれるということである。しかし、西欧諸国は、トルコを迎え入れようとはしなかった。そこでトルコが支払った加盟料が朝鮮戦争への派兵であった。トルコは3万の将兵を派兵した。トルコ軍は勇敢に戦い、その多くが朝鮮半島の土となり帰国しなかった。
トルコ軍の戦い振りは、世界へのメッセージであった。スターリンに対しては、トルコを甘く見てはならない。ソ連の侵略を受ければ、トルコ軍民が必死の抵抗を行うだろうとの。NATO諸国に対しては、トルコは血の代価を支払う用意のある信頼に足る同盟国になるとの。トルコはNATOへの加盟を認められた。
2008年にロシアは、トルコの隣国のグルジアに軍事侵攻した。そして今回はクリミア半島を制圧した。トルコはロシアの力の復活を歓迎していない。外相のキエフ訪問のメッセージであった。
だが同時にトルコは、ロシアとむやみに事を構えるわけにもゆかない。クリミア半島にはイスラム教徒のタタール人のマイノリティーが生活している。クリミア半島は、かつてはオスマン帝国の一部でもあった。トルコは、同じトルコ系のタタール人の置かれた状況に無関心ではいられない。タタール人の権利を擁護するためには、実質上クリミア半島を支配しているロシアとの対話が欠かせない。ウクライナの新政権支持とロシアとの対話のチャンネルの維持という二つの課題の間で、トルコのバランス外交が展開されている。
(3月9日、記)
畑中美樹氏の主宰するオンライン・ニュースレター『中東・エネルギー・フォーラム』に2014年3月10日(月)に掲載された文章です。
2014年03月28日14:07 トルコがシリアを偽旗攻撃し戦争を勃発させようとしていました。
トルコの重要な安全保障会議で、とんでもないことが計画されていたことが分かりました。シリアで戦争を勃発させるために、トルコがシリアを偽旗攻撃しようとしていたのです。ロシア軍がウクライナで手一杯になっているため、シリアに対しては手薄状態となった中で、もしトルコがシリアを攻撃すれば、シリアはロシア軍の支援が十分に得られず、戦争に負けてしまう恐れがあります。それを狙ってNATOがトルコにシリア攻撃を指示したのかもしれませんね。
しかし、このように重要な秘密会議の中身でさえ、次々とリークされてしまいます。政治家も支配者側も、もう、やってられないんじゃないですかね。なんだか彼らが滑稽に見えてきました。檻の中のサル状態です。見ているのは世界のネット利用者たちです。世界の支配者達が陰でやろうとしている策略が全て暴露されてしまっています。
世の中には。。。支配者側の下僕の振りをして、実は情報を漏らしている内部の人間が沢山いるということかもしれません。
政府内部でも誰が敵で誰が味方なのかさっぱりわからなくなってきたようです。スパイが増えすぎているのかもしれまえんが、外野席で観ている私たちにとっては面白い展開です。まるでサル回しを見ているようです。
http://beforeitsnews.com/politics/2014/03/media-buries-bombshell-turkeys-tayyip-erdogan-falseflag-attack-on-syria-2608856.html
(概要)3月27日付け:(こちらがトルコ政府の安全保障会議の内容をリークしたビデオです。)
トルコのエルドアン首相は、今週末に行われる選挙に備えてリークされた内容を隠すために自身のツイッターやYoutubeを封鎖しました。
幸い、我々はリークされた内容を伝えるビデオを探し出すことができました。その中身は、首相が隠し通そうとするのが当然と言える内容です。
これは、トルコ軍とトルコの政治指導者らとの会話(シリアに戦争を勃発させるためにシリアに偽旗攻撃を仕掛けるというもの)を記録したものです。
最も重大な会話の内容を抜粋しました:
Ahmet Davutolu氏: 首相は、このような状況の中で、シリアのスレイマンシャートゥーム(トルコ領と言われる地域)を攻撃することはトルコに好機をもたらすだろう、と言ったのだ。
Hakan Fidan氏: 必要ならシリアから4人の男を送ろう。私がトルコにミサイル攻撃を命令すれば、戦争を勃発させることができる。さらに必要に応じてスレイマンシャートゥームの攻撃も仕掛けることができる。
Feridun Sinirliolu氏: 我々の国の国家警備隊はどこにでもある安っぽい国内組織と化してしまったな。
Yaar Güler氏: これが戦争が勃発する直接的な原因となるのです。我々がやるべきことはそれです。
Feridun Sinirolu氏: 世界的にも地域的にも地政学的に重大な変化が起きている。世界中にこのような変化が広がるだろう。今日、君たちはそう断言した。他の者たちも同意している。我々は異なるゲームを行うことになった。 すぐにそれがどのようなものか分かるだろう。ISILもくだらない連中も様々な団体もみな、非常に操作されやすい連中だ。これと同類の団体が地域を形成しているということは、我々の安全が脅かされるということだ。我々が最初に北部イラクに行ったときには、PKKがその場所を爆撃する危険性があった。我々がどのような危険性があるかを十分に考慮し・・・・を具体化するれば。。。。大将が言ったように。。。
Yaar Güler氏: サー、あなたが中におられた、ちょっと前まで、我々も丁度そのことについて話し合っていたのです。いかなる場合でもあなたにとって軍隊はなくてはならないツールなのです。
Ahmet Davutolu氏: もちろん。私は常に君が不在の時に首相に専門用語で同じことを言っているのだ。このような地域では軍隊なしには現状維持は不可能だ。ハードパワーがないところにはソフトパワーもない。
上記の会話の記録が真実であるということをエルドアン首相が認めました。
リークされた会話の内容によると、NATOのメンバーであるトルコはシリアに対して偽旗攻撃を仕掛けようとしていました。そして首相は、このような会話の記録がリークされたことは背徳行為であり極悪非道であるため、リークした内容が投稿されたYoutubeビデオをブロックしたと言っています。
3月30日の地方選挙に向けて集まった支持者らの前で、エルドアン首相は「彼らは国家安全保障会議での会話の内容をリークしてしまった。これは極悪非道なことであり、不誠実である。そのような重要な会議の内容がビデオでリークするなんて。。。一体誰に仕えているのだ。」と言いました。
首相のスキャンダルが問題になっている中で、この問題は首相が選挙でどれだけの支持を得られるか。。。重要な試金石となっています。
高橋和夫の国際政治ブログ
2014-07-17 09:15:08 イラク情勢とトルコの大統領選挙(上)―カギを握るクルド人
トルコのアブドゥラー・ギュル現大統領の任期が、この8月28日で満了する。それに先立つ8月10日に、国民の投票で新たな大統領が選出される。
この投票で過半数の票を獲得する候補者がいない場合には、8月24日に2回目の投票が行われる。1回目の投票で得票数上位二人の候補者の間で決選投票となる。なおトルコで大統領が国民の投票によって選ばれるのは初めてである。
候補者として与党の公正発展党は、現首相レジェプ・タイイプ・エルドアンを立てている。ライバルは、野党の共和人民党と民族主義者行動党の共同候補エクメレッディン・イフサンオールと人民の民主主義党の共同代表セラハッティン・デミルタシュの二人である。
エルドアンは、公正発展党の党首として2002年から一貫してトルコを指導してきた。
この間にインフレを抑え込みトルコ経済を成長軌道に乗せた。エルドアン候補は、圧倒的な優位に立っている。問題は8月10日の1回目の投票で過半数を獲得できるかどうかである。
今年3月に行われた地方選挙ではエルドアンの公正発展党が、勝利を収めた。しかし得票率は約45.5パーセントであった。50パーセントには、わずかに届かなかった。4.5パーセント足りなかった。
大統領選挙でのエルドアンの勝利は動かないと予想されている。しかし1回目の投票で過半数を取って、すっきりとした勝利を収めるには、あと4.5パーセントの票の上乗せが必要である。いかにすればエルドアンは、残り5パーセントほどの票を積み増せるのか。そんな手はあるのか。
エルドアンは、実は2枚の切り札を握っている。いずれもクルド人がらみである。
まず1枚目の切り札から説明しよう。エルドアンは、クルド人の票を狙っている。クルド人は、トルコ、イラク、イラン、シリアなどの国境地帯に生活する民族で、その総人口は3500万人ほどと推定されている。つまりイラクの総人口くらいの規模である。そしてトルコの人口の4分の1はクルド人である。トルコの総人口が7600万であるから、その4分の1ならば、クルド人口は1900万となる。
第一次世界大戦後に中東の地図が英仏の都合によって引かれた。クルド人は自らの国を求めたが、英仏の「都合」にはクルド人の希望は入っていなかった。どこにもクルド人の国のためのスペースはなかった。クルド人が各国に分かれて生活している背景である。
さてオスマン帝国の廃墟にトルコ共和国が建国されて以来、トルコではトルコ人しかいないという虚構が国家の公式なイデオロギーとされてきた。クルド人は存在を否定され、その民族性の表現を禁じられてきた。クルド語の使用さえ、長年にわたり非合法であった。
これに対してクルド人の独立を求めて立ち上がったのが、PKK(クルディスターン労働者党)である。1970年代末からPKKはトルコ政府軍との間でゲリラ戦を展開してきた。
エルドアンは、クルド人との和解へと動き始めた。まずメディアでのクルド語の使用を許可するなどクルド人の文化の表現を認めた。またPKKと停戦交渉に入った。文化や政治の面ばかりでなく、経済の面でもエルドアンはクルド人地域の発展のために力を尽くしてきた。
クルド人の生活するトルコ東部は伝統的に貧しい地域として知られてきた。しかし、この地域に繁栄の光が届き始めた。
(以下略)
高橋和夫の国際政治ブログ
2014-07-19 09:41:03 イラク情勢とトルコの大統領選挙(下)―クルド独立という賭け
イラクの他の地域が混乱するなかで、クルド人地域は治安の安定を維持した。その結果、イラク全体から資本と人材が流入した。また中東各地から企業が進出した。クルド地域は続々とビルが立ち上がる建設ラッシュを経験している。議会、官庁、ショッピング・モール、ホテル、空港などが建設されている。
この建設ブームで一番潤っているのがトルコ企業である。労働者への需要が増大し、貧しかったトルコ東部が、その恩恵を受けている。両者間の経済的な交流が深まれば深まるほど、たとえばトルコとイラクのクルド自治区を結ぶトラックの運転手などが、必要になっている。これがトルコ東部のクルド人の地域に雇用をもたらした。
クルド人の独立は、他の国々のクルド人の独立運動に火をつける。そのため、トルコはイラクのクルド人の高度な自治や独立に反対である、というのが一般的な認識であった。少なくとも、これまでは。
イラクのクルド地域の自治に、どうトルコは対応すべきなのか。
という議論が広がり深まる前に、トルコ企業とトルコ東部の人々は、イラクのクルド地域の繁栄から大きな利益を得てしまった。
そしてイラク北部の独立傾向と繁栄はトルコにとっても悪くないという事実が証明されてしまった。
イラクのクルド地域の独立傾向は、トルコにとって経済的な利益をもたらしているばかりではない。そこでは民主主義が実施されており、治安も安定している。クルド人は比較的に世俗的な人々であるので、過激なイスラム勢力がトルコに浸透するのを防ぐ緩衝地帯にもなっている。
しかも現在のクルド地域の安定と繁栄がトルコの好意と協力に依存しているのを、クルドの指導部はよく理解している。したがってトルコのクルド人を扇動したりはしない。そればかりか、エルドアン政権とPKK(クルディスターン労働者党)の交渉でも貴重な仲介役さえ務めている。
このイラク北部のクルド人地域が、さらに独立への動きを強める契機となったのが、この6月のISIS(イラクとシリアのイスラム国)の攻勢だった。
(以下略)