ドアが開かれたままになっていたので、彼は歩いていって用心深くドアを閉めた。それから彼女のところに戻り、自分の依頼人に接するときのような態度で声を低めて言った。
「私の言いたいのはこういうことです。先ほどの二人が貴女に結婚の申し込みをした理由を、貴女は少し思い違いしておられる」
「本当にそう思いですの、判事様?」
「断言してもいいほどに……彼ら二人の態度は全く異なるものだったではないですか? 侯爵の方は考え抜き、計算した上での落ち着きと冷静さが見受けられました。ところがもう一方の将軍の方は慌てきった振る舞いで、これは性急な決断、思いついてすぐ行動に移したことを窺わせます……」
マルグリット嬢はじっと考え込んだ。
「確かにそうですわ」と彼女は呟いた。「仰るとおりです……今考えるとその違いが分かります」
「従って」と判事は続けた。「私は座ってこう考えておったのです。このド・ヴァロルセイ侯爵という御仁、見事に感情を演じてみせるこの役者は、マルグリット嬢の出生を証明するものを手元に持っているに違いない。もちろん書面による、決定的な証拠となるものを。婚外子の父親捜索は法律で禁じられている。が、父親から自発的に提出される出生証明であれば証拠となる。ド・ヴァロルセイ侯爵はこの認知証書を持っているのではありますまいか?……いや持っておるに違いない。ド・シャルース伯爵の突然の死を知って彼はこう思った。『もしマルグリットが自分の妻だったら、そして伯爵の実子であることを彼女に宣言させたなら、自分は何百万という金を手にすることになる』 と。そう考えて彼は便利屋のところへ相談に行き、これこれの役割を演じなさいと知恵を授けられた。それで彼はやって来たというわけです……。貴女は彼を撥ねつけたが、彼はまた新たな口実を設けてやって来るでしょう。それは確実だ。覚悟しなされ。おそらく何らかの取引を申し出ることでしょう。貴女の言葉を借りれば、こんな風に。『私たちが結婚しようがしまいがどちらでもよろしい……要は、山分けしましょう』 と」7.3