この埋め合わせはさせて貰う。が、然るべきやり方で、です。私にはじっとしていることしか出来ないが、ド・シャルース伯爵とトリゴー夫人の間に出来た娘は孤立無援の身の上ではありませんか? それならば、私は彼女に手を差し伸べます。これは私がこれまでに為してきた愚行の一つに数えられるかもしれぬが、そんなこと気に掛けるものか。私は約束をしたのだ。そうとも!父親が人妻を気晴らしに誘惑するような男で、母親があばずれ女だからといって、それが可哀想な娘の罪ですか! 私ははっきりと彼女の味方をします!」
マダム・ダルジュレは立ち上がった。彼女の顔は喜びに輝いていた。
「ああそれなら、私達に救いはあるのですわね?」と彼女は叫んだ。「ああ、わたしは間違っていなかった。貴方を探しに行かせたとき、きっと貴方のお心に届くと思っていましたわ!」
彼女は男爵の手を取ると唇に近づけようとした。が、彼はそっと手を引っ込めると、驚いたような口調で尋ねた。
「それはどういう意味です?」
「私がひどく後悔しているということです。この舘でこないだの晩、ゲームの席で辱めを受けたあの気の毒なお方を助けたいという貴方の意向に賛成しなかったことで……」
「パスカル・フェライユール氏のことですか?」
「ええ……、あの方は無実なんです! ド・コラルト子爵が犯人なのです。フェライユールさんの手に予め仕組まれてあったカードが渡るようにしたのは彼なのです。そしてこのような破廉恥なことを彼にさせたのはド・ヴァロルセイ侯爵の差し金だったんです!」
マダム・ダルジュレをしげしげと見たときの男爵の顔には唖然とした表情が浮かんでいた。
「何ですと!」彼は叫んだ。「貴女は知っていて、むざむざと見殺しにしたのですか! あの気の毒な青年が吊し上げになろうとしているとき貴女に無実を証明してくれと懇願したのに、貴女は口をつぐんでいる勇気が持てたと言うのですか! あのような言語道断な犯罪が、貴女の家の中で貴女の目の前で行われるのを容認したのですか!」
「あのとき私は知らなかったんです。マルグリット嬢の存在も、あの若者が私の兄の娘の恋人だっていうことも、何も知らな……」
男爵は憤然とした口調で遮った。
「そんなことが何の言い訳になる! 貴女のしたことはあるまじき行為です!」1.7