◎来たらず去らぬ道
これは一休咄に出ている話。
蜷川新右衛門は、在家の修行者ながら一休に参禅し、悟りを得ていた。
ほとんど寿命に達して、自宅で臥せっていると、西の空から阿弥陀三尊と二十五菩薩が出現し、近所の人々を驚かせた。これを聞いて蜷川新右衛門は息子に強弓を持って来させて阿弥陀三尊の真ん中に矢を射たところ、阿弥陀三尊と二十五菩薩がぱっと消えて、これは近所の年経たムジナの仕業だったことがわかった。
蜷川新右衛門の今生最後の歌
独り来て独り帰るも我なるを
道教えんというぞおかしき
一休の返歌
独り来て独り帰るも迷いなり
来たらず去らぬ道を教えん
蜷川新右衛門は、個と世界全体の逆転はしていなかったので、絶望的な歌を出したが、
一休は死出の旅路に、来たらず去らぬ道である、仏があることを示した。