先週、水彩画サークルの発表会があった。
水彩画を始めて8か月、堂々と展示できるような絵は描けていない。
額縁に申し訳ないくらいのものだわ。
「私はちょっと・・・」とやんわり拒否した人もいた。
でも、「皆さん、少なくとも1人1点は出してくださいよ~、何なら2点でも良いですよ~」
という、先生の有無を言わせぬ一声で、みんな1点はだすことになった。
前日に額縁負けした絵を持って会場に行ってみたら、すでに殆どの絵が飾られていた。
部長さんに私の絵を架けていただいた後で、見て回った。
すると、いつも私の隣の席に座っているKさんが、1枚の絵を熱心に見ている。
行ってみると、小樽運河と街並みが描かれている絵だ。
それがスゴイ!プロ級だ。
サークル歴8か月でも、絵を見れば描いた人はだいたいわかる。
うちのサークルにこんな上手い人がいるはずはない、先生の絵かしらと思った。
でも、先生の名前じゃない。
とは言え、先生以外の皆さんの名前を憶えていないから、
名前を見ても誰だかわからないけれど。
もしかして、作品数が少なくて、どこかからかお借りしたのかしら?
スゴイよね~、これなら、画廊に並べたら売れるよね~、誰の絵かしらね~?と
首を傾げながら、 Kさんとあれこれ言っていると、サークルの大先輩がやって来て
これね、○○さんのだよ、ほら、いつも×××に座っている人よ。
えええ~~!
これ、やっぱりうちのサークルの人の絵なの!
それも、あの方? 信じられない!
その方は60代半ば位の男性で、物静かで滅多に声も聞かないという方だ。
世間話をすることもなく、黙々とひたすら絵筆を運ぶ、
それなのに、なぜか、遅い・・・
約2時間半の中で、殆どの人は1枚の絵を、完成させる。
または、あと1歩か2歩というところまではこぎつける。
でも、彼の場合は、着色できた部分はほんの一部、
え、あんなに一生懸命なのに!と驚くほどの未完成さで、
それまで、私たちは完成した彼の絵を見たことがなかった。
その上、出品した作品はサークルで描いた絵ではなかったので、
尚更わからなかったのだ。
古くからのサークルメンバーは、彼の実力を知っていて、驚きもしない。
そうか、そうだったのか、いやもう御見それしました。
お家の一室で、黙々と絵筆を持つ孤高の姿が目に浮かぶ。
その筆の運びは遅い、でも、緻密で繊細、時間をかけてこそできる技か。
次のサークルの日、「素敵な絵を描かれるんですね~、びっくりしました」と、
聞きようによっては、失礼にもとれるんじゃないか、というようなことを言ってしまった。
あ、もっと違う言い方があったのに...と言った途端に後悔したけれど、
「いえいえ」と、にっこり笑って下さった。
ああ、よかった。
こういう褒められ方に慣れているのかも知れない。
能ある鷹は爪を隠す
いや、
能ある鷹は爪を出すのが遅い、か。