ダンス仲間に、とてもセンスの良い人がいる。
70才代前半くらいの小柄な女性で、いつも「ちょっと違うわ」という装いをしている。
服装だけでなく、アクセサリーにも気を使っていて、さりげなく個性的だ。
先日は、いつヌも増して彼女のセンスが光っていて、会った瞬間、
「まあ、素敵、舞台に立てそうね」
と、口に出てしまって、内心あっと思った。
舞台に立てそうは、聞きようによってはあまり良くないかも。
彼女の反応は、にっこり笑って、
「いえいえ、古いものを引っ張り出してきたの。恥ずかしいわ」
よかった、気は悪くしていないみたい。
口は禍の元を日ごろからひしひしと感じている私、
できる限り気を引き締めているのに、思わず口に出てしまった。
お茶の時間になって、他の女性達からも、○○さんの服装について
褒める言葉が次々出てきて、私も今度こそは何か気の利いたことを言いかった。
でも、何といえば良いのか、頭の中で色々言葉は浮かんでは来る。
「真似できないよね」
「私には無理」
何だか、聞きようによっては失礼になりかねない言葉ばかり。
もしかしたら、私の性格に問題があるのかしら・・・
すると、Nさんが言った。
「なかなか着こなせないよね~」
一人であれこれ悩んでいた私、一瞬で頭の霧が晴れた。
Nさん、偉いわ!
「そうよ、そう!そうなのよ!」
大いに賛同の声を上げた。
それから、ぐっと気が楽になって積極的に服装談義に参加。
やれやれ、たかが褒めるだけなのに、その言葉って意外に難しい。