ダンススクールでは、レッスン半ばで休憩を取って、
コーヒーを飲みながら15分ほどおしゃべりをする。
レッスン時間のうちなので、無駄なような気がするけれど、
年配者が殆どなので、体力を気遣いつつ、生徒さん同士の交流を計るということだ。
こういう時に話の中心になる人は、大体決まっている。
サービス精神の旺盛な人だ。
この日のサークルでは、70代前半の女性で、いつも穏やかで優しい人だ。
「私ね、1に夫、2にお花、3にダンスなの。
夫に尽くして尽くして今まで来たのよ。
だからダンスくらいは自由にさせてもらっているの」
「そうなの?」
「へ~~、スゴイ」
みなさん、反応はさまざまなのだけれど、私は、尽くすということが今一わからない。
どういうことが尽くすということになるのだろう?
ねえ、尽くすって、具体的に何をするの?ときいてみた。
彼女はちょっと考えて、
「一生懸命ご飯を作るとか・・・」
でも、それって普通なんじゃ。
「要するに~、逆らわないってことかな~」
彼女の場合、何を言われても、はいはいと言って、上げ膳据え膳してあげるということらしい。
なるほど、だけど、それじゃあ、ご主人ボケちゃうんじゃないかしら、と余計な心配をしてしまった。
その後、うちはこうよ、私はこうしてるとか、女性陣がそれぞれ自分の場合を言いだして、
話題は移って行った。
尽くすってどういうことか、やっぱりよくわからない私。
帰りの車の中で、
お父さん、尽くされたい?と聞いてみた。
いいや、考えたこともない、と夫。
よかった、私には無理だわ。
夫は、尽くされるという意味がわからない。
私は、尽くすという意味がわからない。
我が家の辞書に、尽くすという言葉はないようだ。