母の施設を退去した。
本人が入院や何かで住んでいなくても、3か月間は権利がある。
でも、当然利用料は支払わなければならない。
母は現在、病院で個室に入っているので、その分の支払いもある。
医療費、パジャマなどのリネン利用料、それに個室利用料で、7月の1週間で約5万円の支払いをした。
単純計算すると1か月で20万になる。
入院当初は検査などあって特に高額だろうから、これからはそこまでは行かないと思うけれど、
3か月とはいえ、帰らないことがわかっている施設への支払いはやはり痛い。
父は自営業だったから、母の年金は国民年金とわずかな厚生年金で月8万ほど。
足りない分は母の預金から支払うことになる。
あと数か月という診断が下されているといっても、生命力は不思議だ。
最近の母は、点滴効果かも知れないけれど、それなりに安定している。
一度失敗した胸からの点滴も昨日行ったら、できていた。
何となくだけれど、思ったより生きられるんじゃないかという気がする。
そうなれば、個室を維持する費用のことも考えておかなければならない。
大部屋へ移るという手もあるけれど、母は嫌だと言った。
わかって言っているかどうかはわからないけれど、
おむつ交換など考えると、母はほんとうに嫌だろうと思う。
実際は他の患者さんたちもみんな同じような状態なのだけれど、
それならいいわ、というわけにはいかないだろう。
やはり個室は維持してあげたい。
そのために、少しでも無駄な出費は抑えたい。
施設へは電話で申し出をして、数日後荷物を引き取りに行った。
引き取りと言っても、実際は処分だった。
我が家には、引っ越しする度に預かった母の荷物がたくさんある。
自ら断捨離しなければならない私たちに、これ以上母の荷物を保管できない。
仏壇とテレビと小さなタンスは弟が引き取り、新しいタオル類などは私が持ちかえった。
けれど、山ほどの衣類は殆ど処分するしかなかった。
LかLLサイズで、痩せてしまった母にはもう大きすぎる。
施設で一番仲良しだったお友達に声をかけると、かなりの衣類や靴をもらってくださった。
まだ生きているのに、形見分けのようなことをしていいのだろうかと、胸が痛んだが、
処分するよりは母も喜ぶだろうと、勝手に思う。
奇跡が起きて母が回復したら、新しいのを買ってあげよう。
「母さん、今までの服はみんな大きすぎるよ。これからはMサイズだね」
って言って買ってあげる。
そう思って自分を納得させた。
夫と弟が一緒で良かった、男だからだろうか、せっせとことを運ぶので、
私も感傷に浸る暇がなかった。
私だけなら、いちいち手が止まっただろう。
でも、空になった部屋を振り返った時、これで母はすべて身の回り品を無くしたと思った。
まるで、母が生きてきた時間まで消えてしまったような気がする。
やはり、早すぎたのではないかと、後悔が押し寄せる。
せめて、一度すべて我が家へ運ぶべきではなかったかしら。
でも、たとえいくらか元気になったとしても、退院はあり得ない。
これからは必要ないものなのだ。
ここで処分しておかなければ、いつまでもできないだろう。
きっと、これで良かったのだ。
そう、良かったのだ。
お気持ちをお察しします。
珊瑚さんの文章が一つ一つ心に響いてきます。
いつか私も通る道なのね・・・と思います。
Mサイズの洋服を一緒に買いに行く日が来ることを
心より祈っていおります。
弟が13歳も年下なものですから、どうしても私が決定することが多くなってしまいます。
それでも、弟には随分助けられました。
結局どんな決定をしても、後悔は付きまとうのでしょうね。
親を、生きて見送ることが一番の親孝行だと思うしかありません。