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パシフィックコースト航空博物館~ブラックバード乗員の憂鬱

2014-08-07 | 航空機

ワイナリーの集中するここサンタローザは、ワイン製造に適した気候で
ワイン好きにも評価の高いワイナリーを生み出しています。
どういう気候がそれでは適しているのかと言うと、地中海性気候、
年間の降雨量が多すぎず日照量が十分であること。

たしかにカリフォルニアは夏の間雨が降りませんし、日照量に関しては
外を歩くだけで火傷しそうな暑さからも十分だと思われます。

湿度は少ない方が良し。
なぜならワインに適した土壌はそこそこ痩せているものだからです。
この辺りは湿度が低く昼間の暑さとは打って変わって夜になると
温度ががっくりと落ち、外では火のそばにいたいくらいになります。

湿度を「不快指数」ともいうように、夏は特に湿度が低い方が
人間にとって体は楽に感じますし、わたしもここでは
その気候を楽しんではいますが、あるとき

「日本人の肌の美しさはその湿度の多い気候にある」

と聴いて、悪いことばかりではないのかなと思った次第です。
湿度だけではなく水質も要因なのでこれも一概には言えませんが。


さて、そんな気候のもと、ちゃんと帽子で日よけをして
わたしはミュージアムフィールドを回って行きました。

ちょうどお昼の時間で、機体のメンテをしていた人たちは
(5人くらい)日陰でサンドイッチなどを食べ出し、わたし一人です。




Grumman A-6 IINTRUDER

これは説明を見なくてもこの触角ですぐ分かってしまいますね。



イントルーダーのスポンサーは「クローバー」という乳業。
カリフォルニアではこの牛のイラストと共に有名な企業です。
特にこのメーカーを選んだつもりはなくても、冷蔵庫には
一つはこの牛さんのパッケージが入っている、という感じ。

因みに今部屋の冷蔵庫にはクローバーのカッテージチーズがあります。



さいしょこれをイントルーダーだと言い張っていたわたしですが、
雷蔵さんの信じられない眼力とその指摘により
これが

The EA-6B Prowler

であることが判明しました。
謹んでこれまでの間違いをお詫びいたしますと共に
雷蔵さんに心から感謝する次第です。

プラウラーというのは「うろうろする人」という意味で、
あまり強そうに聞こえないのが問題ですが、上の
EA−6の搭載量の大きさを利用するため、電子戦に使えるように
改良したのがこの機体だったのでした。



海兵隊所属です。
イントルーダーと同じように、海軍と海兵隊が運用しました。
海軍においてイントルーダーはベトナム戦争、湾岸戦争など、艦載機として
アメリカのかかわった戦争ほとんど全てに投入された、とされますが、
海兵隊の実戦投入については説明がないのでわかりません。



お腹の部分に突き出ていた透明のケースのなかの物体。

これはなんでしょうかね。
目標探知攻撃複合センサー、TRAMというものではないかと思ってみたのですが、
どこを探してもこのトラムの画像が見つかりません。

ところで、モデルメーカーのハセガワは1:72スケールのこのイントルーダーを
10000円(消費税別)で販売しています。
いまどきのプラモデルってこんなにするんですか!
それはともかく、その説明に

A-6Eは、A-6Aの電子機器の能力向上型で、
レーダーも強力なものに換装されています。
なかでもA-6E TRAMは、目標探知攻撃複合センサーを
機首下面に装備して、

攻撃精度の向上がなされています」

とあったりするのを見ても、おそらくこれがTRAMではないかと思われます。
が、ハセガワのモデルイラストを見たところ、この部分には
レドームのようなこぶができているだけなのです。

この透明の部分がTRAM本体なのかどうか、どなたかご存じないですか。



スコードロンマークはバイキングと剣、そして稲妻。



Mk82にたくさんサインがあります。
AM2(AW)とか書いている人が多いのですが、これで検索すると
どうやら階級で、

 Petty Officer Second Class AD2 (AW)

などと表記するようです。

AWとは

Aviation Warfare System Operators

のことのようなのですが、いまいち確信がありません。





飛行時に必ず取り外さなくてはいけない部分には、このような
赤いタグ(ストリーマーというらしい)をつけますが、
栓?を外さなければ作動しない爆弾なのでしょうか。

ストリーマーが新しく最近つけられたようなのでただの安全対策?



翼の下に抱え込まれているので先端が危険という感じはしませんが、
何しろここの特色として、航空機にはどんな近くで見ても、
翼や機体の下にもぐりこんでもOKという展示方法なので、
(そのため翼の下部ハッチなどを開けっ放しにしてある)
やはり万が一のことを考えて安全対策をとっているのでしょう。







足元は舗装していないしこういう危険物もありますが、
アメリカらしく全ての危険回避は自己責任でお願いしているようです。

くねくねした山中の道路も、自然公園の山の斜面のトレイルも、
ほとんどの池や湖、河に至るまで、自然環境を破壊してまで
安全のための無粋な柵など作らないのがアメリカ人。
航空機も「触って減るもんでなし、好きにやってくれ」という態度です。

しかしさすがにこの針のようなドローンのノーズは、
そのままにしておくと転倒などでとんでもない事故になりかねないので
先端にアクリルの板を設置してあります。
それでも触ろうと思えばその恐ろしいほど尖った先端に触れます。

どうしてこの先端がここまで偏執狂的に鋭くないといけないのか、
それに関しては全く説明がないのでわかりませんでした。



Dー21 DRONE SPECIFICATIONS

こちらの度ローンの先端にはゴムのカバーがつけられています。
ロッキード製のマッハ+3偵察無人機です。

この無人機、A−12の背面からの射出が想定されてCIAの要請で開発されました。
高解像度のカメラを1台搭載しており、あらかじめプログラミングされた
地点での撮影後、洋上にカメラモジュールごと投下するシステムです。



翼の下に牽引されているドローン2機。

実戦では、中国の核実験場の偵察を目的に1969年から2年の間、
4次に亘る偵察作戦、

「シニアボウル作戦」

に投入されましたが、4度とも違った理由で失敗しています。

いずれも行方不明になったり帰ってきても回収できなかったり。
後で分かったのですがそのうち1機はシベリアに落ちており、
4機のうち2機は旧ソ連が鹵獲してそれをもとに似たような物を
作ろうとしたが失敗したとか何とか。

そうこうしているうちに写真偵察衛星が開発され、またニクソンが
中国に歩み寄り政策を取るようになったため、計画は白紙撤回されました。

全部で38機のDー21を含むドローンが製造され、そのうち21機が使用されています。
作戦中止後、残りは全て博物館の展示用に譲渡されましたが、
ここにあるのもその一つというわけです。



この内部にもありますね。すっかり色褪せたストリーマーが。
これ、何の輪切りだと思います?



このまるでエイのようなぬめっとした感じは・・・。

 

 LOCKHEED SR−71 BLACKBIRD 

そこで即座にヒラー航空博物館の写真を出して来る。

沖縄の嘉手納基地に最初に配備され、ベトナムでの偵察を行いました。
沖縄の人々はこれをその形状から

「ハブ」

と呼んでいたそうです。
夜しか出撃しないし、さぞ気味悪がられたんだろうな(笑) 

こんな凶悪な?風体をしていますが、こう見えて偵察機。
ステルス性もマッハ3の高速も、ブレンデッドウイングボディも、
ミサイル攻撃を回避することに目的が置かれています。

与圧が十分でなかったため高高度飛行に備えて乗員は
まるで宇宙服のような与圧スーツを着用しましたが、これは
自分でシートベルトを締めることも出来ず、そもそも脱げないので
なんと、常に紙おむつを着用していたそうです。

黒光りする異様な威容を湛える最新式のステルス偵察機。
実は乗員全員ダイアパー着用、という現実が泣かせます。 


これ・・・・搭乗員の士気が落ちる原因にならなかったんでしょうか。




VOUGHT F−8U CRUSADER

このクルセイダーについては、

ラスト・チャンス、ラスト・ザ・ガンファイター」

というエントリでかなり入れこんで?お話ししましたが、
そのとき書きそびれたのは、この「ラストチャンス」、つまり
ダメダメ航空機カットラスの後に社運をかけて開発したこの飛行機のあだ名は
文字通りの「ラストチャンス」であったとともに、ヴォート社の創始者
Chance M.Vought の名前に引っ掛けてあったということです。

ヴォート社の当時の正式社名は「チャンス・ヴォート」だったんですね。

ここにあるクルセイダーは、20年もの間サンフランシスコ市内の
児童公園で遊具となっていたそうです。

まじか。
戦闘機を玩具に払い下げてしまうとはさすがアメリカ。




しかしながらそんなところにあるゆえに落書きだらけにされ、
近所の人々から目障りだと文句が出る始末。
写真はそのときのおいたわしい様子です。
これは酷い。

そこで当博物館が引き取り、レストアして展示することにしました。



19thストリートの公園からやってきた経緯が
写真で説明されています。
この塗装も内装も、当博物館の修復チームの渾身の仕事。

だから、シャークの眼の位置が少し変だとかいうツッコミはなしね。



実は、このときクルセイダー、修復中だったのです。
何をしているのかさっぱり分かりませんでしたが、
機体脇にはいろいろな装備が置かれ、しかもモーターは
ブイーンという音をさせたままでした。



わたしがちょうどこの近辺の写真を撮りつつ歩いていたとき、
修復作業をしていたらしい何人かのアメリカおじさんたち(60代かな)
がお昼休憩を取ることにしたのか、クルセイダーの作業をやめて
引き揚げて行くところでした。

その中の一人がわたしに

「熱心に写真撮ってるね!」

とニコニコしながら声をかけてきたのですが、何と返事していいか分からず
ジャパニーズスマイルを返しておきました。



S−2TRACKER

トラッカーの説明をするのは2度目だったような気が・・。



いや、入り口近くに置いてあったこれはトラッカーではなかったんですね。
でも似てるなあ。



スコードロンマーク・・と思いきや、このトラッカーは
カリフォルニアの森林管理局が運用していたようです。
こちらにくるとしょっちゅう森林火災のニュースが流れますが、
昼間のまるで着火しそうな暑さに加え、植物がまるで干し藁のようなので
火事が起こりやすいようです。

実は昨日、ミルピタスというところに行ったのですが、その帰り、
サンノゼに向かう高速の脇の草地が事故でもないのに燃えていました。
その直前に追突でほとんど車体がくの字に曲がってしまう事故があり、
ただでさえ酷い週末渋滞で5車線の道路が酷いことになっていたのに、
さらにこの火事で追い討ちをかけるように・・・。

関係ありませんでしたね。

とにかく、そんな感じで専門の部署を設けなければならないほど、
カリフォルニアに取って森林火災は深刻な問題なのです。

トラッカーがどんな運用をされていたのかわかりませんが、おそらくこれは
軍から引き渡され、偵察機として二次利用されていたのではないかと思われます。

 

さて、この日、そこここで見たストリーマー、
ギフトショップでミュージアム名をプリントしたものを見つけたので
記念に買って帰りました。

とりあえず、家の中の危険箇所に使ってみようっと。ってどこだよそれ。




続く。