ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

ボストン美術館

2014-08-10 | 博物館・資料館・テーマパーク

毎年一度は訪れるボストン美術館ですが、未だに
初めて見る作品がたくさんあります。


勿論、何度見ても厭きることなく新しい感動を与えてくれる作品、
たとえば冒頭のジョン・シンガー・サージャント作

「エドワード・ダーレイ・ボイトの娘たち」

14歳のフィレンツェ、12歳のジェーン、8歳のメアリールイザ、そして
4歳のジュリア。
肖像画らしくない謎の人物配置と、少女たちの愛らしさが魅力的です。

前に見たときにはその素性について深く考えなかったのですが、
この絵に見える背の高い花瓶は、まぎれもない日本製。
先日訪れ、創業者の孫から直接説明を受けた有田の深川製磁製であることは
ほぼ間違いないでしょう。

ボストン美術館のHPによると

「19世紀後半に主に西洋への輸出のために有田で造られた花瓶」

とあります。
この頃まだ深川忠次の深川製磁はなく、その前身の香蘭社が
1876年、フィラデルフィアで行われた万博に壷を出品し、
その後78年にパリ万博で金賞を受賞しています。

この絵が描かれたのはその4年後の1882年。
ハーバード出の弁護士で、娘たちの父親であるネッド・ボイトの家庭は
裕福な地域に住み、当時は高価でステイタスであった有田の花瓶を
家に飾るほどの財力を持っていたということがわかります。

ここにある花瓶も勿論有田製で、模様が全く同じであることから
ボイト家の持ち物であろうと思うのですが、
不思議なことにそれについて述べられている資料はありません。



さて、今日は美術解説はこれくらいにして、この日観た
「気になる作品」を淡々とアップしていきます。

この日の美術館訪問は、TOと二人で行きました。



わたしたちはこのとき知らなかったのですが、
この日は「オープンハウス」で、無料開放日。
周辺が混雑するくらい車が駐車場に並んでいたので、
迷わずバレーを利用しました。
友の会の会員でなければ27ドルと高いですが、
入り口で車をピックアップしてくれ、帰りには持ってきてくれます。



取りあえずまず休憩を(笑)
おやつにカフェラテと果物、ムースを頼んでみました。
コーヒーはスターバックスからとメニューにはあったのに、
見た目からしてスターバックスのラテらしくありません。

この日は息子のキャンプが最終日でセレモニーのため、
お迎えはなんと9時半です。
しかし、驚くことに美術館の閉館はそれより遅い9時45分。

今日が特別なのではなく、毎週水木金はこの時間なのです。
これなら仕事が終わった後のデートにも使えますね。



休憩が終わって早速歩き出しました。

コンソールの脚が人形です。
家具や壁面に人間をあしらうの、好きですよね。西欧人。



マンドリンとオーボエ(ダモーレ)。
オーボエという楽器は今日とあまり変わりません。



日本語の音声ガイドを借りてみました。

「ほんの少ししか解説がありませんがいいですか」

それでもないよりはましです。
そのガイドの順番に従って歩くことにしました。

写真は古代アメリカのコーナー。



謎の動物と不思議な服を来た人。



ネズミの上にネズミ。
前のネズミの口から中身が注げるポット。



1800年代?のアメリカの民家。



マグナカルタというコーナーにあった帆船の模型。
マグナカルタ憲章のコピーが壁に大写しされたコーナーでは
多くのアメリカ人が立ち止まって文言を読んでいましたが、
わたしたちは通過(笑)

「マグナカルタ、ありましたねえそういえば」
「なんだっけ。大憲章とか」
「うーん、なんだっけ」

後からwikiをみたら、1215年に制定されたイギリス国王の権利の保障とか。
前文だけは現在でも残されて現行だそうです。



(イギリス系)アメリカ人にすれば、こういう船に乗って
大航海時代にアメリカ大陸にやってきた自分たちの先祖ですから、
興味があるのも当然かもしれません。

 

近代アメリカ美術のコーナーにあった石像。
天使が抱きかかえているのは労働者のようです。
石碑の足元には、

その命を故国に捧げた1288人のペンシルバニア鉄道の男たちへ

と書いてあります、
ペンシルバニア鉄道は1846年に設立された鉄道ですが、
工事の際にこれだけの殉職者を出したということなのでしょうか。



最初の解説はこの抽象画でした。
黒い部分は絵の具ではないとか、従来の絵画とは違う作者の視点が
画期的だとか、解説音声はいろいろと言っておりました。
しかし正直こういう抽象画の良し悪しはわたしには全く理解できません。

家に飾るのにはいいデザインだとは思うんですが。



空虚な光景に既視感を感じる作風が好きです。
エドワード・ホッパー



テキスタイルやファッション芸術の展示もところどころに。



現代美術のコーナーは外光を高い天井から取り入れています。

 

機能的デザインの展示もありました、
この細長いものは1943年にデザインされた脚用の添え木。
紙に包んであるのは開封前。



ジョージア・オキーフ
生涯を通じて花と動物の頭蓋骨を描き続けた女流画家です。



先生むっちゃ怒ってます。
額に寄せたシワが怖い。



いかなる状況かはわかりませんが、このお姉さんは
何かを聞きながら走っている模様。
そういえばあの話題になった西宮市議が記者会見で耳の前に手を当てて、

「それで聞こえるんかい!」

と突っ込まれていましたが、この人も変わった手の当て方ですね。
音を聞くためにわざわざこんなポーズをする人っているのかしら。

しかしそんなことはどうでもよろしい。

この後ろに面白い絵を見つけました。



あれー、これはボストン美術館の、この部屋の絵?
それでは、全く同じ角度から写真を撮ってみましょう。



こんな感じ。
ボストン美術館は所蔵が膨大なのでしょっちゅう展示が変わります。
したがって、後ろの展示作品も少し違っていますが。



何となく撮ってしまいました。
おまわりさんに尋問されているらしき人は知的障害者の模様。



あら素敵な軍人さんだこと。
これは、ウィリアム・ハントというマサチューセッツ出身の画家の作で、

ハンティントン・フロッシンガム・ウォルコット中尉

という絵です。
ウォルコット中尉は南北戦争のベテランであったようです。



わたしがここの所蔵で最も好きな絵の一つ。
ハッサン

夕暮れのボストン・コモン

ボストン・コモンは観光地の一つで、古い公園(画面の右手)
が今でも同じようにある地域ですが、
画面左手に見える路面電車の道に面した建物は、
今でもそっくりそのままに残っています。

この画面を西に向かって少し行くとニューベリーストリート。
わたしのお買い物スポットです。



いきなり趣の違う絵ですが、南米大陸の画家だったかと。
こんな絵でよければわたしが描いてあげてもいいと思わされますが、
座っている馬だかロバの脚に計算のなさがあって、
まあこの辺りがゲージツなのかなと思ってみたり。

ぜったいこの馬、中に人が入ってるだろっていう。



細いウェストにきりりと締めたエプロンの質感と、
バラ色の肌の透明感がとても魅力的な若い女中の像。
この絵も好きな作品の一つです。



まるで教会のようなステンドグラスをはめ込んだ窓の石室。
全ての展示品は最大限の効果をあげるような工夫が凝らされています。



いつの間にかヨーロッパ絵画のコーナーに来ました。
宗教画には決まったテーマがあります。
誰もが知っているシーンを切り取って画家は
自分なりの解釈をカンバスに展開するのです。

これはごぞんじサロメがヨハネの首をヘロデ王に所望し、
銀の盆にそれを受け取る瞬間。

この後サロメはヨハネに接吻し、それを見た王は
サロメを殺せと兵に命ずるというのが新約聖書を元にした
オスカーワイルドの戯曲の結末です。

しかし、この画家の解釈は面白いですね。
サロメには何の高揚も興奮も感じられず、
首を受け取っているというのに目をあらぬ方向にそらし、
まるで他人事のようなしれっとした顔をしています。

ヨハネに恋し受け入れられなかったがための
復讐をなしとげた女の顔にしては淡々としすぎているというか。

サロメが罪悪感に苛まれた一瞬を描いたのでしょうか。



最後の晩餐のセラミック作品。
全員朗らかに笑っていてどれがイエスかどれがユダかさっぱり分からず。

まあこれで表情の描き分けをするのは至難の業だとは思いますが。



アウグストゥス頭像
初代ローマ皇帝ですので、たくさん彫像が残されていますが、
驚くことに(ってほどでもないか)どの彫像も同じ顔をしています、
本当にこんな顔の人だったんだなあと納得します。

文献に寄るとアウグストゥスは身長は170センチ、均整の取れた
立派な体格で、まれに見る美男子であったということですが、
それで皆がこぞって皇帝の彫像を造ったのでしょうか。

アウグストゥスの最大の功績は「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)
を実現したことです。
しかしながらその平和の期間にローマの伝統であった対外拡張政策を止め、
防衛体制の整備に努めるにあたって、

「市民=戦士」

という伝統を復活させています。
備えによる平和を実現させたというところかもしれません。



美術館のドーム天井。
ボストン美術館は1870年、地元の有志によって設立され、
独立戦争100周年にあたる1876年にオープンしました。

本日ご紹介した北米芸術が展示されているウィングは
2010年に増設が完成した部分です。

わたしたちがボストンに住んでいたときには工事中で
観覧する場所に制限があった記憶があります。

所蔵は50万点を超え、一度に展示しきれないため、
いつ行っても少しずつ展示内容が変わっています。
たとえ一度の訪問で全部観たとしても、実は
観ていない所蔵作品はその何倍もあるということなのですね。


だからこそ毎年でも行く価値があるとわたしは思っています。