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平成27年富士総合火力演習 装備展示と「ブラックホーク ダウン」

2015-09-04 | 自衛隊

平成27年度総火演が後段演習まで終了しました。

最後のフィナーレ、敵陣地に特攻、じゃなくて総攻撃を果たし、
見事我が国の領土に進入した敵勢力を壊滅に追い込んだというエンディングを迎え、
恒例に従ってフィールドに一般公開のために装備を並べる作業が始まりました。
車両部隊に先駆けてまずヘリ部隊がやってきます。

まずはAH-64D、アパッチロングボウ。

ヘリを撮るときにはシャッタースピードをできるだけ落として、
ローターが回転している様子を写すようにしています。



ヘリは必ず後輪から着地するものだとわかりました。

次にやってきたのはUH-60JA、原型はブラックホークのUH-60です。
 今回は偵察のオート隊が降りてくるシーンが見られなくて残念でした。

また、この日は曇天のせいで、空中にカメラを向けると画面が暗く、
それに合わせて明るさを調整すると地面に着いた時に明るすぎ、
といった風で、結構写真を撮るのには難儀な日でした。




ところでブラックホークといえば、ソマリア内戦を描いた映画、
「ブラックホークダウン」、みなさんご覧になったことありますか。


一言でにべもなく言ってしまえば、ソマリア内戦に介入したアメリカが、
作戦は一応成功したもののアメリカ兵士がたくさん死んだので撤退した、
という「モガディシュの戦い」を描いたもので、「Blackhawk down」とは、
このときにソマリア民兵のRPGに撃ち落とされたブラックホークの乗員が、

『We got a Blackhawk down, We got a Blackhawk down
(ブラックホークの墜落を確認、ブラックホークの墜落を確認)』

と墜落しながら交信した内容から取られています。


わたしはこれを観直したのが総火演直後だったので、
ヘリから新兵のオーランド・ブルームが落下したり、尾翼をやられて
ブラックホークが一機どころか二機までも同じような墜落をしていくシーンを、

あらためて食い入るように眺めてしまいました。

この映画では、戦闘に行かされる将兵たちが、軍人だから言葉には出さないまでも、
アメリカが他国の戦争に介入することと、自分たちがそのために死なななければならないことの
不条理に対する疑問を各々裡に秘めている様子が、淡々と描かれます。



CH-47も今日は全く出番なし。
最後の総攻撃の時だけ顔を見せましたが、地表に降りるのは初めてです。

本来、歩兵を乗せた車が出てきたり、ロープで降下したりするのですが。



アパッチの向こうに降りようとしているコブラ、AH-1S。



UH-1、ヒューイも今回初めての着陸です。
この角度からみると、ローターマスト前、操縦席のちょうど上と、
操縦席のちょうど下に、薔薇の棘状のツノが出ているのがおわかりですかね。

今回わたしは初めて知ったのですが、これ、ワイヤーカッターというそうです。
進路を妨げる電線やワイヤートラップなどを切断するためについているらしいんですが、
その前にローターが絡まってしまうのではないだろうかと(笑)


UH-60JAの向こうからやってきたヒューイ 。
ロクマルと呼ばれるUH-60にもワイヤーカッターはついているそうですが、
この角度からはわかりにくいですね。



OH-1は、降下前少しお辞儀をするように下を向いてくれましたが、
倒立とまではいきませんでした。



ここまで。気分が乗らなかったのでしょうか。 



ロクマルのパイロットがヘルメットを外して出てきました。
こ、このヘアスタイルは・・・・・・・!

大東亜戦争の頃、海軍飛行隊搭乗員はこんな風に頭のてっぺんだけ毛を残し、
人によってはそれを長~~~~く伸ばしていたそうですが、それとも違う。

そう、これこそ、「ブラックホーク・ダウン」で、ジョシュ・ハートネットが、
オーランド・ブルームが、ヨアン・グリフィズ(ファンタスティック4のゴム男)
が、その他大勢の皆さんがしていた、てっぺん残しヘアスタイル。


絶対に陸自のヘリ部隊の人もこの影響受けて真似していると思います。



上の人はわかるとして、下から顔を出しているのは
目視で運転しているってことでよろしいでしょうか。



戦車長は上?
で、たった今気づいてしまったことがあるのですが、
この隊員の左小指、見てください。
なんか指輪をはめているように見えますよね。

自衛官は結婚指輪をしている人が多い、という傾向について
以前お話ししたことがありますが、これは違うよね。
なぜピンキーリングを?



と思ったら、戦車用のゴーグルのようなのから、鉄兜に変えているこの隊員さん。
この人の左小指にも指輪のようなものが・・・。

全部の写真を確かめたところ、戦車隊の隊員で左手が写っている人は
この二人しかいなかったのでなんとも言えませんが、これはもしかしたら
業務上必要な何か?
それともたまたまこの二人だけがピンキーリング愛用者?

気になったので、どちらの写真も極限までアップしてみたら、
これがシルバーの分厚いリングでお揃いなのよ。

これも「ブラックホーク・ダウン」で、血液型を書いたテープをブーツに貼って

出撃する兵士がいたように、認識票以外の血液型リングだったり?



軽装甲機動車も到着。



99式自走155mm榴弾砲

自走榴弾砲の中では最も最新型であるこの装備、
ところでお値段はおいくらかご存知ですか?

9億6千万。

そう言われても他の装備と比べて高いのか安いのか、シロートには
まったくわかりませんが、この手の装備の中では高い方だそうです。 



それが、なんと2台も、貨物船沈没事故で海の藻屑となったことがあります。
2001年の船舶事故で調べると、えひめ丸の事故しか出てきませんし、
災害史辞典にも貨物船沈没、と書かれているにすぎないので、
どこの船がどういう状況で沈んだのかまったくわからなかったのですが、
それにしても9億6千万が2台・・・・。



準備をしている間に、視察官である防衛政務官が退場しました。
この人(創価大学卒官僚出身公明党の議員)が常に浮かべている、
貼り付いたようなスマイルの不自然さが、この角度から見るとよくわかりますね。



M110 203mm自走榴弾砲。

アメリカではもうこれも引退している装備ですが、
自衛隊の場合はそういう発表はまったくされていません。

先日コメント欄で「戦車が実際に戦うときには日本はもう終わり」
みたいな話がありましたが、そういう、いわば実現性の薄い想定のために
最新式を備えるよりも、優先することがいくらでもあるってことなんでしょうか。

例の「GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」においても、わざわざ
銀座の土中から敵が出て来たという設定にしたわけは、そうでもしないと
陸上自衛隊が地上戦を行うシチュエーションにならないからに違いありません。



これも隊員が顔を出して操縦していたのでアップ。



155mm榴弾砲、FH-70が到着。
ここまでは自走ではなく、牽引されてきたようです。



牽引から外して、最大仰角に砲身を向けて準備。



NCB偵察車

NCはヌクレア・ケミカルつまり核と化学、Bは「バイオ」つまり生物。
これらを用いた兵器、NCB兵器に対応する偵察車であり、
放射線保護もされている偵察車ですが、偵察ではなく化学防護戦を想定する
「化学科」に配備されています。

化学科部隊は、あの地下鉄サリン事件にも出動しました。

そろそろ戦車が入ってくる頃ですが、長くなったので次回に譲ります。




ところで「ブラックホーク・ダウン」で、ソマリアのアイディード将軍に近い人間が、
交渉しようとしたアメリカ軍のガリクソン将軍に、

「This is our war. Not yours.」

と言います。
確かにこの戦闘は平和維持を目的にしていましたが、客観的には
他国の内戦にたった一国、アメリカが介入しただけで、その結果ブラックホーク2機と、
貴重な精鋭部隊の19名の命を失うことになりました。

失われたといえば、この戦闘で死傷したソマリア民兵の命は、350名と推定されます。 

しかも、墜落したヘリの乗員と、彼らを救うために危険の中降下した二人の兵士の遺体が、
ソマリア市民によって市中を引きずり回される映像が世界中に公開され、

このことが、介入を決めたクリントン大統領に撤退を決意させることになります。

映画の最後に、戦いから生きて帰ってきた兵士が、また再び戦場に戻る前に、

「国を出る前に言われた。
”なぜ他国の戦争を戦いに行く?戦争ジャンキーなのか?”
奴らにはわからない。なぜ俺たちが戦うか。
俺たちは仲間のために戦うのさ。それだけだ」

と言います。
戦争に正義も悪もありませんが、アメリカの戦争の多くが少なくとも
「道義のない戦争」であったことは確かで、このソマリア介入なども
その一つと言えましょう。

安倍政権が決めた、日本が武力を行使するための三要件の1にあたる、

「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、
又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、
これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、
自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること」

という条件でいうと、全くアウトです。
戦争で兵士はそれに命を賭けることが使命ですが、この映画でも、
ベトナム戦争を描いた「We were the soldiers」でも、
彼らは「仲間を守るために戦った」と言うのです。


彼らが命を賭けるのが「自国への武力攻撃」「自国存立の危機」
や「自国民の生命自由(略)の危機」から国を守るためではないことを、
戦う当人たちがよく知っていたからです。

ましてやこのときの名目である「圧政の下貧困にあえぐ可哀想なソマリア人の解放」

のためになど、アメリカ国民である彼らのうち誰が、
好き好んで一つしかない命を捧げたいなどと思ったでしょうか。



日米安保だけで日本はこれからも守られるはず(だから日本は武装する必要なし)、
と本気で思っている人は、ぜひこの「ブラック・ホークダウン」で
意義のない戦争を戦わねばならない軍人たちの内心の苦悩を観ていただくとともに、
アメリカが日本のためにこの頃のように命を落とすことを今後良しとするか、

ぜひ彼らアメリカ人の気持ちになって考えていただくことをお勧めしたいと思います。


このときの戦闘を以って、アメリカは「地上軍の派遣」を実質やめ、

これ以降戦争はドローンミサイルや衛星通信を使ったハイテク化へと変貌していくのです。





続く。